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サブカル大蔵経445渡邉晃/太田記念美術館『江戸の悪』(青幻舎)
文庫サイズの絵画集が好きです。何かお得感があるんですよね。
本書は〈悪〉のピンナップ。
殺しが喝采・爽快につながる。
〈悪人〉は誰を斬るのか?
鑑賞者は、自分を誰に重ね合わせるのか?
親鸞の「悪人正機」の「悪人」とは何か?
日本絵画のおおらかさと細かさとリアルさの塩梅にハマりそう。よく見てるとモブキャラの存在が愛おしくなります。
著者の渡邉晃、串田和美、五味太郎との巻末鼎談が相当面白くて、さらにお得です。
【歌川芳幾】「英名二十八衆句 国澤周治(国定忠治)」
髑髏のどてらがたまらない。
【月岡芳年】「平清盛炎焼病之図」p.122
清盛、閻魔様を前に、反り返ってます。
【揚州周延】「東錦昼夜競 吉田御殿」千姫の歪んだ恋心。荒淫の限り。p.178
千姫という時代が産んだ鬼。すさまじき伝承の錦絵。やはり風太郎の見立て通り。
【月岡芳年】「和漢百物語 清姫」p.200
清姫は僧侶に惚れる。その恋心が姫を蛇にした。僧侶が化け物を生んだ。
【三代歌川豊国(国貞)】「東都贔屓競 二 清玄桜姫」破壊僧・清玄の霊が亡霊となって桜姫の前に現れる。ストーカー。好評盛んに上演。p.202
こちらは僧侶が愛欲で化け物になる。
【歌川国芳】「恋模様振袖妹背」八百屋お七の鈴ヶ森刑場に群がる群衆。首に数珠。無の表情。p.210
ものすごい人だかり。最強の見世物。
【月岡芳年】「英名二十八衆句 福岡貢」妖刀狂い咲き。1796年、伊勢古市遊郭の油屋で医者の孫福斎宮が酒に酔い、数名を殺傷。この一件をすぐに歌舞伎に移した。/善人である登場人物が執拗な侮辱を受け我慢の限界を超えて逆上し、殺人鬼と化す筋書きはしばしば歌舞伎に見られる。p.216
善人が悪人になる。
【歌川芳幾】「英名二十八衆句 佐野治郎左エ門」顔にあばたのある純朴な男、佐野次郎左衛門。p.224
純朴な男が遊郭で斬り殺しまくる。この男も妖刀に取り憑かれた。「つけびの村」を思い出す。妖刀は今もある。
〈串田和美〉人間は意味なく殺す。バイキングと言って値段一律と言うと、めちゃくちゃな食い方をして平気で残すじゃない。どれも千円、というときの人間の食べ方ってひどいよ。p.279
食い放題が嫌な理由がわかりました。
〈五味太郎〉黒塚での市川猿翁の踊り。人食いの婆さんのところに宿屋を求めてやってきたお坊様の一行が泊まって夜中に人食いの婆さんがお坊様に、辛い身の上を相談する。その時に、あなただってまだ仏様に縋れば大丈夫だって諭す。それで鬼婆が、これは嬉しやと踊る。月の光を浴びて踊るところがある。1人が開かずの間を見ちゃう。そしたら髑髏がいっぱいあるんで、一行は逃げ出す。それで婆さんはお坊様に裏切られたって怒り狂って立ち回りの末に殺される。それが全部踊りなんだ。鬼婆は自分のやってきたこと、その因果から解脱したいと思った。偉いお坊さんから大丈夫だって言われてやれ嬉しやと踊ったのに裏切られる。二重に怖い。p.279
解放されたかった鬼婆を裏切る僧侶。
〈串田和美〉正義って言うものを持ち出したときに悪が始まるんだよな。だって正義の反対って悪じゃないんだから。別の正義なんだから。正義ってものを持ち出した人同士が戦っていた。勝手に向こうのことを悪だと言っている。〈五味太郎〉だから平和運動っていうのはダメなんだよ。p.281
痛烈かつ真理。
〈五味太郎〉法界坊は悪いよー、ケタケタ笑いながら斬っていくからね。それなのに坊主だから(笑)この間百人一首の本を作って知ったんだけど、出家する人たちって貴族なんだよな。だからお寺や法衣なんかのあのきらびやかさは貴族のそれなんだよ。わびさびもそう。庶民はわびさびなんてないからね。だから貴族の1つの生き方として出家して坊主になる。p.295
僧侶は貴族
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