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あんステMLにまだ囚われている話

先日『劇団ドラマティカ』のACT1、悠久奇譚 西遊記を配信で観劇した。
率直に言えばドラマティカの舞台は本当に本当に素敵で、キャストの演技力や表現はさることながら、前半はコミカルに仲間たちを描き後半は怒涛の展開と衝撃の事実が光る巧みな脚本にも魅せられ、非常に大満足で観劇を終えた。
また、私はドラマティカの劇中歌CDが出ることをTwitterを通して知った。まだ発売はしていないし情報は公開していないし、買うにしても(逆先夏目担当の私にとってCucumber Holic(仮)は聖歌である)ちょっと先になるかもな………そういえば、マベも最後にあんステMLの曲を配信してたな…………
よし!MLの曲でも聞いて(話こそ違うけれど)ステの余韻に浸ろう!
私は、そう思い立って約1ヶ月ぶりにあんステMLオリジナル配信曲を再生した。


───────今思えば、それが全ての過ちである。


再生されたのは「High Five for You!!!!!」、通称「涙腺刺激信号歌」(個人の意見)だった。
イントロを聞いた瞬間、ぶわっ!とメテオライツが頭を駆け巡る。思わず涙が溢れて、私は頭を抱えるのだった─────。


前置きが長くなってしまって申し訳ない。これは、あんさんぶるスターズ!Extra stage 〜Meteor Lights〜の上演から約半年、MLの記憶に狂い続けてしまったオタクの手記である。


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突然だが私はズ!!の、それも2021年明けてすぐにあんさんぶるスターズを始めた新米Pである。元よりあんさんぶるスターズの名前は知っていたが、フォロワーに勧められたミリしら画像で瀬名泉と大神晃牙の見分けがつかないレベルから始まった。
初めて約1ヶ月半、ズ!のメインストを読んですっかりあんスタにハマりこんでしまった私は、次々に追憶を読み進めていた。
その中でも、特に記憶に残ったのは「追憶*流星の篝火」だ。エレメントやチェックメイトがあまり明るくないのに比べて、篝火にはきらきらした未来と希望のイメージがあった。何度「映画化してくれ…」と言ったかはわからず(多分一週間に一回ぐらい言っている)、声と動きをつけた篝火が見たくてたまらなかった。篝火時代の奏汰に心底性癖を抉られていたし、守沢千秋をうっかり推してしまいそうなくらい大好きなストーリーだ。

そんなある時、篝火を読んでしまったことによるロスに嘆きながら見たTwitterには、私の知らない世界の広告が映っていた。
いわゆる2.5次元、私を半年狂わせたMeteor Lightsの広告である。ちょうどその時はサイレントキャス変で炎上していた頃であったと思う。当初の私は先代奏汰を存じ上げていなかったため、「篝火、舞台化するんだ〜!」ぐらいの軽い気持ちでいた。

何事もなく4月を迎え、ついに演目が開幕する。住んでいる土地や世の中のこともあり、配信で見ることを決定した。初日リアルタイムは個人的な引越しの日程がモロ被りしてしまったため、アーカイブで観劇する。

この初日が、全てを変えてしまった。

なんだこれは?何度かミュージカルや劇は見に行ったことがあるが、その全てと違った舞台を私は見ていた。キャストの演技、ビジュアル、歌声、ダンス、どれもに最高級の熱量が宿っている。

まず、守沢千秋役の佐伯亮さん。
下調べをしたおかげで佐伯さんが長年千秋を演じて下さっていることは存じており、観劇前の安心感は1番あったと言っても過言ではない。しかし、実際の舞台は期待を遥かに超えてきた。
ずっと舞台に出っぱなしでスイッチング版だと流れる汗まで見える。それでも、佐伯さん演じる千秋の慟哭や迷い、そして決意とヒーローらしさは確かに私の胸を打った。特別声が似ているわけではないし、2次元の守沢千秋そのものの顔をしているわけでもない(千秋は童顔であるという描写がされているため、もう少し幼い顔立ちだと思っている)。それでも、佐伯さんには当たり前のように守沢千秋の魂が宿っていた。セリフも言動も歌も、完全に守沢千秋のそれでしかない。さらに、篝火は2年前にまで遡るため「1,2年生の守沢千秋」、つまりメガネ君が多く登場するにもかかわらず、3年生の姿とは全く違った雰囲気ながら彼は絶対に守沢千秋であるという謎の自信があった。それだけ、彼ほど守沢千秋を体現できる人間はいない。

次に────大穴だったのだが───深海奏汰役、井澤巧麻さん。深海奏汰は推しの1人ということもあり、自分の中でかなりハードルが高かったように思う。ビジュアル撮影のPV(と月スタ)を見た時は声低いな……とだけ思っていた井澤さんは、語るのも烏滸がましいくらい深海奏汰そのひとであった。
特筆すべきはまず、その声帯だろう。地声からはまるで想像できない完全なるCV.〇山宏太朗。ずっとその声でお芝居されていたものだから、カテコで聞いた低めのお声にひっくり返ってしまった。どうやって喉を震わせればあの声が出せるのか、きっと研究に研究を重ねてくれたんだろうなと思うと既に涙が止まらない。
またもうひとつ言及したいのは、ダンス時の重心の取り方である。個人的に、奏汰は重心を斜めに取る癖があると感じている。ポーズを決めた足が片方だけ曲がっていたりムーンライトディスコのように重心を右だけに傾けるエリア、左にだけ傾けるエリアがあったり(きっとMVを見て頂ければ分かると思う。「何度だってアンコール」の場面で他メンバーが真ん中を通って傾くのに対し、奏汰だけは真ん中に重さを置かず左右に重心を取っている)MVやスタライからそれとなく見えるものだ。それを、まさかの井澤さんは完全再現していた。顕著なのはスーパーノヴァの「教えてくれ!」だ。奏汰はあそこまで体を曲げて斜めに重心を取るだろうという、なかば変態的な視点から見ても彼の演じる深海奏汰は完璧だった。
元々感情表現に乏しく常ににこにこと微笑んでいるキャラクターのため、その心の機微を表現するのは非常に難しいと思う。しかし井澤さんは、そこをセリフのイントネーションに混ぜ込んだり視線や肩の落とし具合で表現したりと、まるでドラマの撮影かと思うぐらい繊細な感情を見せてくれた。篝火の亡霊として、本当に本当に感謝している。深海奏汰を演じて下さって本当にありがとう。またいつかあなたの深海奏汰が見たいと、切実に感じた。

次に南雲鉄虎役の中西智也くん。初役付きというのもあり、とても爽やかで初々しくフレッシュな印象であった。鉄虎の元気だが空回りしがちなところ、だけれど仲間思いなところ、誰かを巻き込んでにかっと笑ってくれるところ。鉄虎の魅力を非常に上手く引き出してくれたなと思う。きっとこれから回数を重ねるにつれて鉄虎の芯の強さだとか頑固なところだとか、ゲームの鉄虎が持つ「良さ」をどんどん表現できるようになるのだなと思うと楽しみでならない。まさに守沢千秋にとってのヒーローのような、そんな鉄虎を演じてくださった。

仙石忍役、深澤大河さん。佐伯さんと同じく流星隊初期メンツであり、バクステの練習風景からして安定感と信頼感がずば抜けていたように思う。日替わりの焼きおにぎりなどは深澤さんの演技の実力が光った場面であるし、奏汰が昔のことについて話そうとした場面で空を見上げながら座る忍の姿がずっと目に焼き付いて離れない。篝火の不思議さと神秘、友情の熱さの中に混じる穏やかな幸福感と癒しは、確実に深澤さんが与えて下さったように感じた。このままあんさんぶるスターズの終わりまで忍と駆け抜けて頂きたいと、強く願っている。

流星隊最後は、松井勇歩さん。高峯翠役である。
初見の感想は「顔が綺麗」。翠役は代々綺麗な顔立ちの方が選ばれていたが、松井さんはまさに翠に相応しいお顔を持っている。どんなアングルでも崩れない圧倒的な美貌は、きっと彼のひとつの武器なのだと思う。
注目したいのは大掃除から帰る時の「すみません………理解力が低くて……」である。ここでは翠の持つ生来の生真面目さや優しさ、礼儀正しさが最高に発揮された場面だと思う。申し訳なさそうにぺこと頭を下げるだけなのに、そのセリフに籠った思いやりや尊敬の念がビシビシと伝わってきて 、思わず涙が溢れてしまった。

ユニットは変わるが、三毛縞斑役の横井翔二郎さん。PVの時点で「この人はヤバい」感がひしひしと伝わってきたお方だ。「似ている」だとか「完成度が高い」とかそんな安い言葉では表せない圧倒的「三毛縞斑がそこにいる」。ビジュアルはもちろんのこと、声も演技も全てが本人すぎる。三毛縞に関してMLの感想を述べるならば、「クオリティ高かった!」ではなく「三毛縞斑と会ってしまった……」だろう。特に海辺でドローン越しの誘いを口にする場面。あんなものを見せられては、三毛縞斑にクソデカ感情を抱くなという方が難しい話である。

紅月、蓮巳敬人役宮澤佑さん。PVの感想は「胸板!!!」。映像通り、見事な胸板だった。個人的にとても声が綺麗で、セリフのイントネーションや抑揚が聞き取りやすくてスっと芝居に入り込める。蓮巳は厳格で真面目なタイプなので、コロコロ表情が変わるタイプでなく逆に難しいのではと思うが、確実に蓮巳が抱いている思いを直接ぶつけられて嬉しかった。宮澤さん演じる喧嘩祭の蓮巳やチェックメイトの少しヤンチャな蓮巳などもいつか見てみたいと強く思う。

鬼龍紅郎役武子直輝さん。千秋に迫るシーンでは場がびりびり震えるような錯覚を受けたぐらいに、オーラが鬼龍そのもの。3年生の鉄虎に優しく接する鬼龍と1、2年生のまだ暴力に染まっている頃の演じ分けが素晴らしい。カテコやバクステではユーモア溢れる人柄も見ることが出来て、全体的にギャップの塊だった。原作でスバルがレッスン室で物申すシーンを鬼龍に変えてくれたことで、原作の泣き出したくなるような絶望の雰囲気を少し和らげてくれたように思う。

神崎颯馬役、神永圭佑さん。言うまでもなくご本人である。声も担当されているので当然セリフはフルボイスなのだが、それに加えて演技の熱量がすごい。今回の舞台では徹底して「深海奏汰の信者」という立場だったが、どこか得体の知れない八百比丘尼たちとは違ってしっかりとした「自分の足で立つ人間」感が強くて、神永さんの熱い演技があったからこそ篝火を生命力に溢れた素敵な舞台に仕立てられたのだろう。

次は脚本の話をしようと思う。流星の篝火は元より50話超えの長編ストーリーであり、正直3時間にまとめることに不安もあった。だが、メテオライツではストーリーの重要なところはしっかり抑えられており、なおかつ現在軸との行き来やコミカルな要素も忘れない。舞台として、あんさんぶるスターズのステージ化としてかなり上質な脚本なのではないかと思う。見ていて心に演技が入り込みやすかったのは、巧みな脚本ありきだと感じた。

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本当はバクステの話、曲の話、ライブの話、衣装の話など話したいことは山ほどあるのだが、文字数の関係もあってここらで一旦終わりにさせて頂きたいと思う。長々とした感想、本当に申し訳ありませんでした。きっと、きっと世の中にまだいるだろうMLに囚われた幸福な人たちの感想もまだまだずっと聞いていきたいし、どんどん発信して欲しい。

最後に一つだけ言わせてもらうならば、これから円盤を買おうとしている人、悩んでいる人は、ぜひ視聴でも構わないので「かなたへのうた」を聞いて欲しい。アイドルへの敬意を歌ったこの歌は、あなたを海神戦の舞台へと飛び込ませることだろう。
この魅力的な経験を永遠に忘れないでいきたい。1年後も、さらにその後もまだMLに狂っているなら私はれっきとした亡霊である。だが、亡霊になってしまったままずっとMLに狂い続けることは、あんさんぶるスターズ!のことを永遠に忘れないための予防策ともなり得るのだ。

流星隊に、MaMに、紅月に明るい未来が待っていることを祈っている。


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