100歳まで生きてしまうかも?
寿命100年時代の生き方は? 老後のお金はいくら必要?
日本人の平均寿命が年々伸び続けており、大げさでなく「人生100年時代」が迫ってきています。
厚生労働省の最新発表では、男性の平均寿命は80.98歳、女性の平均寿命は87.14歳となっています。
現在70歳の男性であれば、「自分はあと10年程度しか生きられないのか」と考えがちですが、それは誤解です。70歳男性の本当の平均余命は15.7年で、平均85.7歳まで生きられるのです。
均寿命とは、今年生まれたばかりの赤ちゃんがあと何年生きられるかを示したものですので、現在長生きしている人だけで平均を取ると、それよりも高くなるのです。
確率上は、現在70歳の男性のうち2人に1人が85歳まで、3人に1人は90歳まで生存します。女性はさらに長生きで、現在70歳の女性は2人に1人が90歳まで、4人に1人が95歳まで生存できます。さらに、これは現在の数値ですから、今後はさらに伸びることが予想されます。
人生100年時代を乗り切る「ライフ・シフト」とは?
一冊の本が老後マネーの世界を揺さぶっています。
その本とは『ライフ・シフト』、英ロンドン・ビジネススクールのリンダ・グラットン教授(写真)らが書いた、人生100年時代を乗り切るための本です。
昨年秋に出版されると瞬く間にベストセラーになりました。
『ライフ・シフト』の内容を一言で表すと、「豊かな長寿人生を求めるなら、今までの3ステージ制の人生から、マルチステージ制の人生へ変化すべきだ」ということです。
現在の3ステージ制の人生とは、教育、仕事、引退(老後)の3ステージを生きる人生です。だいたい22歳くらいまでが教育で、その後60歳~65歳くらいまでが仕事、そしてそれ以降が老後ということになります。
ですが、この3ステージ制の人生は今後なくなり、「マルチステージ」型の人生へと移行すると述べています。
のように人生が変化する大きな要因は、「寿命の伸び」です。
いま10歳の2007年生まれの子供は、現在の平均寿命より長生きして、50%の確率で107才まで生きるそうです。
ちなみに1987年生まれで現在30才の人は50%の確率で99才(2086年)まで生きるそうです。
このように長寿命化が急激に進み、いよいよ100年生きることを前提とした人生では、「旧来の3ステージの人生をマルチステージに変えよう」という提案です。
マルチステージの人生で追加される3つのステージ」
①エクスプローラー・・・人生の意味や自分と世界を知る旅に出たり、インターンシップをするような期間
②インディペンデント・プロデューサー・・・大企業の創業ではなく、自由な個人事業主的な働き方をする期間
③ポートフォリオ・ワーカー・・・企業で働きながら他の能力を磨く時期
そして従来の「教育ステージ」と「仕事ステージ」を合わせた5つのステージをいったりきたりする人生になります。
重要になる3つの「無形の資産」とは
このようなマルチステージの人生を生きるには、お金という資産以外に「無形の資産」を作ることが大切です。
無形の資産とは次の3種類です。
①生産性資産・・・仕事に役立つスキルや知識、仕事につながる人間関係や評判
②活力資産・・・健康、友人、愛など肉体的・精神的な幸福感と充実感を持たせ、前向きな気持ちにさせる資産
③変身資産・・・人生の途中で新ステージへの移行を成功させる意思と能力、そして手助けしてくれる人脈
老後のお金はいくら必要?
老後は年金で暮らし、受け取る年金以上のお金を使ってしまうのが普通です。
収入より支出が多くなるわけで、その差額を貯蓄から取り崩していきます。したがって生きている間に取り崩す分を準備する必要があります。
年金額から支出額を引くと、いくら貯蓄を取り崩さなければならないかが出てきます。
その金額に残り年数(この場合は25年か30年)をかけると、死亡するまでに生活費として必要になる取り崩し額が出てきます。
さらに、住宅のリフォーム代や医療・介護費用、海外旅行など、必要になりそうな金額を見積もります。
これに取り崩し額を足せば、老後に準備しなければならない金額になります。
生活スタイルを変えて支出にブレーキ
ただ、月々の支出は個々の家庭で金額が変わります。生保の意識調査によると、「老後の最低日常生活費」は夫婦で月22万円ですが、
「ゆとりある老後生活費」となると月34.9万円に跳ね上がります。
このように、必要額は家庭ごとで異なります。
とはいえ、生活レベルに応じた「目安」は必要でしょう。そこで、老後に対するさまざまな考え方と、そこから導き出される準備金額を見ていきましょう。
経済ジャーナリストの荻原博子さん(写真)は、「細かい計算よりも、65歳以降は生活スタイルをガラッと変えればお金はかからない」といいます。
「夫婦で20万円程度の年金がもらえるのなら、生活費はその範囲内で賄えばいい。年金に合わせた生活です。会社に行く必要がないから背広は必要ないし、夫婦2人だと食費もそんなにかかりません。これから年金が減るといいますが、歳を取れば消費する金額も少なくなっていきます」(荻原さん)
最低限の備えは夫婦で1500万円?2000万円?
生活費を年金で賄えるとすると、準備しておくべきお金は、「介護」と「医療」を考えればいいといいます。
同調査によると、一人の介護に実際にかかった費用は約550万円。医療費は『高額療養費制度(※)』があるため、70歳を過ぎた一般所得者の世帯ではどんなに医療費がかかっても負担は月額「5万7600円」で済みます。
「すると、介護は2人で550万円×2=1100万円。医療費はざっくり200万~300万円をみておけばいいでしょう。これに100万円余裕を持たせたとして、1500万円あれば最低限の準備はできます」(荻原さん)
次に、実際のデータをもとに試算する方法も紹介しましょう。総務省の「家計調査年報」
(2016年、左図)を見れば、高齢世帯の収入や支出の全国平均がわかります。
このデータによると、高齢夫婦無職世帯の月々の実収入は「21万2835円」で、うち年金は「19万3051円」です。
ここから税金と社会保険料が引かれ、可処分所得は「18万2980円」となります。
支出を見ると、消費の支出が「23万7691円」です。
この消費支出と可処分所得との差額、「5万4711円」が月々の貯蓄取り崩し額となり、年間の取り崩し額は「5万4711円×12=65万6532円」になります。90歳のゴールまでだと「約1640万円」、100歳までだと「約2300万円」の貯蓄が必要になる計算です。つまり、寿命が延びれば「2千万円以上」の備えが必要となります。
※医療(入院)保険に加入していなくても安心できる「高額療養費制度」とは
この制度は、病院の窓口で支払う医療費が一定限度を超えた場合、お金が戻ってくる制度のひとつです。
一定の条件をみたせばさらに負担を軽くしてもらえる仕組みもあります。
テレビで医療保険のCMを見かけますが、医療保険がなくても医療費はこの制度でかなりカバーできます。
さらに69才以下の人であれば、事前に「限度額適用認定証」を病院の窓口で提示すると、窓口での支払いを最初から自己負担限度額で済ませることができます。事前に認定証を受け取っておくと何かと助かります。
自己負担額がどのくらいかは年齢や年収等によって違いますので、この記事を参考にして調べてみましょう。
老後は生活レベルの調整が重要に!収入ダウンの崖は2回くる
最低限の1500万円を貯めるには、退職金や今ある貯蓄額を引いて「ためるべき金額」を出し、それを60歳までの年数で割って年間の目標額を出します。
実行不可能であれば、できるように支出を見直していきます。生活費や通信費、生命保険など聖域を設けずに見直しを行います。
現在35歳として、仮に500万円不足するとしたら、それを60歳までの残りの年数25で割ります。500万円÷25=20万円ですから、年間の積立額が20万円になるような生活を考えればいいのです。
また、老後の生活レベルの調整に失敗しないようにすべきです。
60歳以降に一気に収入が減る、『収入ダウンの崖』が2~3回あるからです。
1回目は60歳の定年時です。再雇用されて同じ会社で働き続けるとしても、収入は半分以下に減ります。2回目は65歳の年金生活スタート時です。公的年金が収入の柱になり、さらに低くなります。
崖に直面した時に、漫然とその前と同じ生活をしているとお金が早くなくなってしまいます。収入の減少に合わせて生活レベルを調整し、支出を減らすことが必須なのです。