鋭利なチクワの…
ボクの名前はツヨシ。名前は強そうなのに、弱虫って言われる。
大きい虫も、犬も、夜暗いのも、怖いものは怖い。
ボクの好きなものはちくわ。
怖くて泣いても、嫌なことがあっても、チクワを食べると元気になる。
そんなある日、ママが作ってくれたお弁当箱を開けると、そこには恐ろしい鬼の顔。
ケチャップご飯の真っ赤な顔に、ノリで作られた大きな目。
カッと開いた口には、チーズの牙が生えている。
ひーっ!
思わず涙ぐみそうになった時、ふと鬼のもしゃもしゃした昆布の髪の毛の上のツノに気がついた。
それは、鋭利に切られたチクワだった。
チクワだ❣️
ボクはその鋭利なチクワを、パクッと口に入れた。
もう一個の鋭利なチクワのツノも、パクッ。
ツノがなくなった鬼の顔は、くるくるパーマで、お酒を飲んで赤くなって、ガハガハ笑っている大阪の礼子おばちゃんに似ていた。
チーズの牙もパクッと食べると、ますます礼子おばちゃんだ。
お弁当はとっても美味しかった。
もう鬼は怖くないぞ!
半分ここまで 410文字
久しぶりの毎週ショートショートnoteの参加でした。
お題は【鋭利なチクワ】
昔子供に作った鬼の顔の弁当を思い出しながら書きました。
そして礼子おばちゃんは、あの人を思い出して書きました。
あの人…わかりますか?