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金色のカカシ

金色に染まった一面の田んぼを前に、農夫は満足げにつぶやいた。

今年はいいコメが出来た。

今年は稲穂が実る時期に台風が来ず、大風も吹かなかったため、稲は重そうに垂れ下がった稲穂を、しっかり支えて立っていた。

この時期の田んぼは、一年のうちで1番美しい。
農夫は満足げに微笑んだ後、
さあ、始めよう!
と稲刈りを始めた。

稲刈機によって、稲はどんどん刈り取られて行く。
米を刈り取られた藁もまた、いつになく美しい。

今年は藁もいい値で売れそうだ。
これだけ美しければ、しめ縄用としても売れるかもしれない。

昨年は藁の出来が悪く、家畜の飼料や、敷き藁くらいにしかならなかった。
値段も二束三文。
当然米の質も悪く、この一年はとても苦しい生活となった。

それでも農夫は、肥料をケチることなく、いつも以上に田んぼの管理を丁寧にして、この実りの秋を迎えたのだ。

今年農夫の作った米も、藁も去年の倍以上の値段で売ることができた。
農夫は残った藁で、カカシを作った。

美しい藁で作ったので、金色の大層美しいカカシができた。

農夫は、自分の使い古した帽子を、カカシの頭に乗せると、カカシの顔に
へのへのもへじ
の顔を書き、満足げに微笑んだ。
うん、カカシも美しい。

農夫の子供が尋ねた。

どうしてカカシの口はへの字なの?
にっこりした顔書けばいいのに…

すると農夫は言った。
カカシは田んぼや畑の番人だ。
にっこりしてたら、田畑を荒らす鳥や動物を追い払えないじゃないか!

こうして畑に立ったカカシは、金色の自分の姿が誇らしかった。本当はにっこりと笑いたい気分だったけど、口はへの字のままだった。

子供たちが、目の前で、赤トンボやバッタを追いかけて、楽しそうに笑ったり、転んで泣いたり、喧嘩して怒ったりしている。

楽しそうだなあ…

カカシはいつしか、あんなふうに笑ったり、泣いたり、怒ったりしてみたいと思うようになった。

そんな時、そこにやってきた雀が
「西の果てにどんな夢でも叶う場所がある。
一緒に行こう。」
と誘われました。

他のカカシは、
カカシに表情があって何になる?
カカシの仕事を放棄して行くのかい?
などと言ったけれど、金のカカシは、夢を叶えるために、旅に出たのです。

なんて話が、前にあったかどうかはわかりませんが、
福島太郎さんの「笑えない藁の案山子カカシ
藁の案山子が、夢を叶えるために旅に出るお話です。


夢を叶えるためには、思っているだけではダメだ。まず行動しなければ、何も変わらない。
その夢が、どういう形で叶えられるか、もしかしたら、思っていたのと違う形で叶うかもしれないけど、行動することに意味があると思う。

勇気を出して一歩踏み出す。
口では簡単に言えるけど、年と共になかなか出来なくなる。
本来怠け者で、つい楽な道を選んでしまう。
変化が怖い臆病者の私。
だけど、本当は変わりたい…

カカシのような勇気が欲しいなあ。

これは、シロクマ文芸部さんの
「金色に」から始まるお話の企画に参加したものです。

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