風車と春風
風車が、カラカラと
音を立てて回った。
それを見て、小さな赤ちゃんがケラケラと嬉しそうに笑った。
その風車は、赤ちゃんが寝ている乳母車にくくりつけてあった。
竹でできていて、羽のところに四角く切った赤い千代紙が貼り付けてある。
笑ったわ
笑ったわ
春風が嬉しそうに囁く。
可愛いわね
可愛いわね
春風は赤ちゃんを笑わせようと、優しい風で何度も風車を回した。
赤ちゃんが手を伸ばして風車に触れた。
ダメダメ、風車が止まってしまうわ
でも赤ちゃんは、風車を触って止めたり、
手を離したりしてケラケラ笑っている。
可愛いわね
可愛いわね
翌年の春、春風がやってくると、あの女の子は自分でふーっと風車を回していた。
あらあら、もう自分で回せるのね
でもでも…
春風が風車を回すと、女の子は嬉しそうに手を伸ばして風車を空高く上げた。
春風は優しく、女の子を包み込んだ。
数年後、風車を持って元気に走り回る女の子がいた。
おかあさーん! いっぱい回っているよ!
春風になったお母さんは、嬉しそうに女の子の頬をなでた。
終
♯シロクマ文芸部
風車をる「ふうしゃ」と読むか、「かざぐるま」と読むか、迷いましたけど、かざぐるまにしました。
昔、修学旅行に行った時に京都で買った、竹のかざぐるまを、大人になってもずっと大事にしていました。
でも、どこに行ってしまったんだろう…
今はもうありません。
大好きだったのに…
自分では捨てていないはずなのに。
ふと思い出して、寂しい気持ちになりました。
なぜだろう…
また、ベビーカーとしないで、あえて乳母車にしましたが、若い人にはピンとこないかしら…