膝上10センチの彼女【妄想物語】
彼女はいつも膝上10センチのスカートを履いている。
スカートも、タイトスカートではなくフレアースカートだ。
たまに短パンだったこともあるが、やっぱり膝上10センチ。
そしてハイソックス。
どんなに寒い日でも、タイツは履かない。
長ズボンも、ロングスカートも履かない。
どんなに暑い日でも、ハイソックス。
彼女の膝小僧は一年365日、外気にさらされている。
彼女は長い髪を、緩めの一つの三つ編みにしている。
いつも同じ髪型で、髪を下ろすことも、結び方を変えることもない。
若いが社会人のようだ。
とはいえ、その格好が本当に似合っている。
とっても可愛いのだ。
顔はちゃんと見たことはないけれど、派手な印象はない。
彼女は、どうしてこのスタイルを守り通しているのだろう。
そこで又、私の妄想が始まった。
彼女は、知る人ぞ知る、「膝上10センチの神」だった。
どうして彼女が、膝上10センチの神とまで言われるようになったのか?
それは彼女が高校2年の時の話
それまでは、ミニスカートなんて履いたことがなかった彼女が、文化祭の出し物で、みんなお揃いの膝上10センチのミニのフレアースカートにハイソックスを履くことになった。
それまで目立つ存在ではなかった彼女が、
その時に、周りの女子も男子も、可愛い、似合う、を連発したのです。
そして、密かに思いを寄せていたK君までもが、似合うね、いつもこれくらいのスカート履けばいいのに…などと言ったのだ。
彼女の髪の毛は、ウェーブが強く、量が多い。
これも、それまでは一つに結んでいるだけで、箒のように広がっていたが、友達が一つの三つ編みをしてくれたら、またみんなにその方が絶対いいよ、と言われた。
彼女は週末、街に出て、膝上10センチのフレアースカートをたくさん買った。
少し長くても短くてもダメだった。
それにタイツやストッキングは、印象が変わってしまう。
やはり自分はこの丈にハイソックスが似合っている。
自分でもそう思った。
その日から彼女は、髪は毎日一つの三つ編みにして、それまでの私服を全て捨てて、膝上10センチの服を買い集めた。
この格好でいられる時だけ、自分に自信を持っていられる。
しかしそれだけでは終わらなかった。
彼女は制服のスカート丈の自由化を求めて活動を始めた。
膝上10センチのスカートは、今までの彼女とは別人のように、彼女を活動的で積極的にした。
「スカートの丈と、生徒の成績や素行に関連性はない!
むしろ、自分らしく生き生きと生活できて、充実した日々を過ごせる」
その運動は、全校に広がり、とうとう学校側が折れて、スカート丈は、自由になったのだ。
彼女は全校の女子から(男子も?)感謝と憧れの目を集めることとなった。
もちろん彼女の制服のスカートは、膝上10センチだった。
ところが、卒業して彼女が就職した先には、制服があった。しかも
膝下丈の黒いタイトスカート。
襟の大きいブラウスに、ベスト。
何十年前からこの制服なんだよ‼️
働いているのはおじさんおばさんばかり。
彼女は、仕事自体は嫌いではなかったけれど、このダサい制服だけが耐えられなかった。
しかし、先輩女子職員の目もあり、何も言えない。
だから、せめて通勤時だけは、自分が最高に可愛く見える格好をしていたかった。
しかし、こんな制服では、気持ちが上がらない。
それでも彼女は、必死で頑張った。
仕事ができない人間が何を言っても、聞き入れてもらえるわけがない。
こうして誰よりも仕事を頑張って、上司に一目置かれるようになった彼女は、職場でもとうとう、制服のスカート丈の自由化を会社に求めた。
怖かった先輩女子も、思ったよりあっさり、彼女の訴えに賛同し、会社は、
作り替えるなら自費で
ということで、スカートの丈の自由化が了承されたのだった。
彼女は今日も膝上10センチで、颯爽と歩いていく。
一体何歳までそのスタイルを貫くのだろう。
私は70歳すぎても白髪を一つの三つ編みにして、膝上10センチにハイソックスで歩いている彼女を思い浮かべた。
終わり