ブーメラン発言道
あるところに、人が発した言葉の道筋が見える男がいた。
男は、
恋人同士の言葉が、ピンク色の光の筋になって相手の中に溶け込んで行ったり、
人気のアーティストの言葉が、金色の花火のように高く上がって広がって、人々に降り注いだり、
言葉と言葉が、火花を散らしてぶつかったり、
偉そうな社長の言葉が、誰にも当たらずに隙間を通り抜けていくのを、面白そうに眺めていた。
ある時男は、発した言葉の道が、ブーメランのように辺りをグルリと回って戻ってきて、そのまま発した人間の腹にベチャッとヘドロのように張り付くのをみた。
ところが、ヘドロが張り付いた人間は、そのことに気付いていない。
男は言った。
ブーメラン発言は、発した人間は意外と気付いていないものなのだなあ。
自分のことを、偉いとか、何でもわかっていると思っているバカなやつだ。
その時男は、自分が発した言葉の黒い道筋が、大きく弧を描いて自分の元に戻ってきて、自分の腹にベチャリと張り付いたのを見た。
本文410文字
これは、たらはかにさんの
♯毎週ショートショートnote
の企画に参加したものです。
お題はそのまま
「ブーメラン発言道」
「人のブーメラン発言みて、我が言動直せ」
感謝や喜び、感動のブーメランだけが戻ってくるように、自分も言動に気をつけようと思います。