【創作大賞2024】ボクんちの笑うお面 第1話
あらすじ
ボクの家には、不気味なお面のような飾り物があった。ボクは、そのお面がとっても怖かった。
しかしある時からそのお面が、ボクにだけ聞こえる声で、ケッケッケッケッと笑うようになった。
そして、そのお面をつけると、ボクは不思議な世界に迷い込む。
不思議な世界で、違う名前を持つボク。一体その世界は何なのか?
ボクを元気づけたり、成長させてくれるその
お面の正体は?
このほか、カエルの青年が王様になるための三つの課題を、勇気と友情で乗り越えていく「水の王冠」のお話の2作です。
1 笑うお面
ボクの家には、気持ち悪いお面のような飾り物がある。
それは陶器でできていて、
痩せたおじいさんのような顔で、顔の色は緑色。目はギョロリと丸く、鼻と口の間には、陶器ではなく、本物のような、ふさふさした毛が付いている。
黒い板に張り付いていて、板に紐を通し、キッチンから玄関横のトイレに行く途中のちょっとした廊下にかけてある。
ボクが生まれた頃からずっとあったらしいのだけれど、
ボクはそのお面が怖くてたまらない。
お面はいつも、ボクを見ているように感じる。
夜などは怖くて、トイレに行く時は、二段ベットの上で寝ているお姉ちゃんを起こして、一緒に行ってもらったり、
お姉ちゃんが起きない時は、通り道の電気をすべてつけて、お面を見ないようにして、走るようにトイレに駆け込んでいた。
小学校1年生になってすぐ、ボクはオネショをしてしまった。
寝る前にちゃんとトイレに行っておかないからよ!
お母さんに怒られて、しょぼんとしてあると
ケッケッケッケッ
変な笑い声がする。
声の方を見ると、そこにはお面があった。
「お母さん、お面が笑った!」
と言ったけれど、
「そんなことあるわけないじゃないの。」
お母さんは笑って信じてくれない。
その後、ボクが、お母さんが戸棚に隠してあったお菓子を見つけて、勝手に食べていた時も
お面は
ケッケッケッケッ
と笑った。
悪さをして怒られた時も、
嫌いなおかずをこっそりゴミ箱に捨てた時も、
おたふく風邪になったボクの顔を見た時まで
お面は
ケッケッケッケッ
と気味の悪い声で笑う。
しかもその声はボクにだけ聞こえるらしい。
ボクは、お母さんに
「あのお面は気持ちが悪いから外して欲しいよ。」
と、毎日毎日頼んだ。
次の日曜日。気づいたらお面が外されていた。
ボクはホッとした。
夜寝る前に、壁に白く四角く残った跡を見て、ホッとしたような、少し寂しいような気持ちになった。
でももう、これでトイレに行くのは怖くない。
その夜ボクは、夢を見た。
お面が、その大きな目からポロポロ大粒の涙を流し、
オーイオーイ
と大声で泣いている。
そこまで泣く?
引くくらいの大泣きだ。
変な夢を見たな、思って気にしないでいたら、
次の日も
又次の日も同じ夢を見た。
さすがにお面がかわいそうになったボクは、お母さんに頼んで、もう一度お面を出してもらうことにした。
出してもらったお面は、相変わらず怖い顔だったけれど、
ボクは、大泣きしていたお面の顔を思い出して、思わずニッと笑った。
その時、髭で隠れたお面な口元も、ほんの少し
ニッ、と笑った気がした。
第2話
第3話
第4話
第5話
第6話(ボクんちの笑うお面 終)
水の王冠 第1話
水の王冠 第2話
水の王冠 第3話(最終話)