ツノがある東館
龍のツノを見た人は、必ず幸せになれる。
そんな噂のホテルがあった。
このホテルの東館の各部屋の入り口には、ヤギ、牛、鹿などの動物のツノがついて、
それらの部屋は、その動物の名前で呼ばれていた。
最上階は、龍の部屋だった。
その日その部屋に、小さな子供を連れた夫婦が宿泊した。
しかし部屋の入り口には、何のツノもついていなかった。
ホテルマンは、
もし龍のツノを見たら、直ぐにお知らせください、
と言って、去っていった。
ところが、目を離した隙に、子供が部屋から出
て、持っていたクレヨンで、ドアに龍の角を描いてしまった。
両親は、翌朝フロントに謝罪の電話を入れるために、ドアを確認した。
するとドアには、昨夜の子供の落書きとそっくりな角がついていた。
それを聞いたホテルマンは、
おめでとうございます。
記念撮影をしましょう!
と言って、ツノの前で写真を撮ってくれた。
角は30分ほどで消えてしまった。
写真に写った龍のツノも消えてしまったけど、3人は幸せになった。
本文ここまで 414文字
これは、たらはかにさんの企画
♯毎週ショートショートnote
に参加したものです。
お題は
【ツノがある東館】のお題で、【一行目で惹きつける】ショートショート
とな。
1行目で惹きつけられたからわかりませんが、書いてみました。
本当は410文字前後では、全く書き足りなかった。
龍のツノは、その人がイメージした形で現れるとか、
見れなかった人も、帰りに金の龍の置物をプレゼントされるとか…
そんなことも考えていたんですけどね。
ただ、この3人、たとえ龍を見ていなくても、幸せになれた気がします。
子供が龍のツノを描いた時に、子供をガミガミ怒った親なら、きっとダメだったでしょうけどね。