トンビ殺人事件
これは、私が小学校高学年か中学の頃に、6歳離れた妹に、夜寝る前にしたお話です。
当時、忙しい母に代わって、時々、寝る前に妹に本を読んであげていたのですが、たまに、こうした創作のお話をしていたのでした。
いくつもしていたと思うのですが、覚えているのはこれだけ。
でもね、殺人事件ですよ?
小さい子供に寝る前にする話じゃないですよね?
でも、
そのお話を聞いて、妹は
じゃ、おやすみって寝たんですよ
しかも、面白かったって。笑
ただ、細かい内容は覚えていません。
それなのに、なぜか画像として私の頭の中に残っているのです。
ということで、その画像をもとに、どんなお話だったか思い出しながら書いてみようと思います。
ただ、昔の私が作ったお話なので、矛盾点があったり、粗削りなところもありますが、物語と思わずに、突っ込みどころ満載のところをお楽しみいただけると嬉しいです。
あえて、現在の私ならこう書く・・・というのはナシで書きました。
なお、死に関する部分や残酷な描写もあります。
苦手な方は、読まないでください。
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トンビ殺人事件
そのホテルは、小さな村の少し高台に建っていた。
ホテルは小さなお城のような洋館で、
村の向こうに海が見える、古いけれど美しいホテルでした。
そのホテルをやっているのは、ある中年の夫婦でした。
夫婦は、潰れかけていたホテルを購入し、夢だったホテルを始めたのでした。
経営は楽ではなかったけれど奥さんの作る美味しい食事と、綺麗な景色を売りに、それなりにお客さんも入っていました。
ホテルの裏庭には、大きな松の木がありました。
その高いところには、トンビが巣を作っていました。
ある時夫婦は、その巣に、小さな雛がいることに気づきました。
夫婦は、嬉しくて親鳥が遠くに行かなくてもいいように、裏庭の奥の方の木々の間に餌場を作り、野うさぎやモグラやネズミなどをとって、置いておきました。
そのうち二匹のトンビは餌の時間になると、餌場の近くで待つようになりました。
ある日少し小さいトンビが二匹増えて、4匹のトンビがやってきました。
巣で生まれた子供のトンビのようでした。
夫婦は、喜びましたが、これまでよりたくさんの餌を探さなければなりません。
野うさぎやネズミも、捕り尽くしたのか、近頃はあまりの捕れなくなってきていました。
それでも、夫婦は可愛いトンビのために、お客さまの残した料理や、時には食材の肉などの餌を与え続けました。
しかし、そのうちどこからともなく、他のトンビも集まってくるようになり、いつしかそのホテルは、数十匹のトンビが集まるトンビ屋敷になりました。
それはそれで珍しく、トンビ見たさのお客さんも来るようになりましたが、
餌代はホテルの経営を圧迫するほどになりました。
それでも夫婦はトンビに餌をやり続けました。
そんなある日、そのホテルに泊まっていた一人の女性が、そこがトンビの餌場の近くとは知らずに散歩していました。
その頃、夫婦が餌をやる間隔が長くなっていたこともあり、空腹だったトンビ達は、その女性を餌だと思ってしまいました。
たくさんのトンビに襲われた女性は、逃げることもできずに、とうとうトンビに食べられてしまいました。
それから少しして餌場に来た奥さんは、餌場に残された惨状をみて驚きましたが、かわいいトンビが殺されたら大変だと思い、そのまま誰にも言いませんでした。
ところがしばらくして、奥さんがトンビの餌をもっていくと、人間の味を覚えてしまったトンビは、奥さんを襲い、食べてしまいました。
探しに来たご主人は、トンビが群がって食べているのが、奥さんだと気づきました。
やめてくれ! やめてくれ!
と、棒を振り回してトンビを追い払おうとしました。
トンビ達は怒ってご主人までも攻撃しました。
そしてとうとうご主人も食べられてしまいました。
その後トンビは、村に集団で降りて行っては、人をさらって食べるようになりました。
トンビが真っ黒な集団なって山から下りてくると、人々は慌てて家の中に逃げ込みました。
そして恐れた村人は村を出て行きましたが、残っていた数人も、トンビに襲われ、食べられてしまいました。
こうして村には誰もいなくなりました。
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これでおしまい
おやすみー。
となるわけです。
実はこれ、また後日、続編というものが作られてております。
妹に評判が良かったので、また別の日に、第二話、第三話くらいまで話したと思います。
いつも話しながら、思いつくままに、結末も考えないで話をしていました。
第二話は、誰もいなくなった村に、ある日若者のグループが、高台からの綺麗な海を眺めにやってくる、というところから始まったように記憶しています。
そして、最後には、木でできた笛を持った男が現れ、その音色が
ぴーひょろろ、ぴーひょろろ、というトンビの鳴き声にそっくりで、
トンビたちはその音色に誘われて、男についていった。
(ハンメルンの笛吹きか!?)
男は笛を吹きながら、里から遠く離れ、どんどん山の中に入っていって、
餌となる生き物がたくさんいるところまで来ると、ようやく笛を吹くのをやめました。そして、夜暗くなってから、笛をやめて静かにその場を立ち去りました。
こうして、トンビはもう人里にきて人を襲うことはなくなりました。
よかったね、とちょっとほっとした感じで終わりました。
これなら、穏やかに眠れます。
ところが、まだ3話目もあるんですよねえ・・・
開発が進み、山の中にもキャンプ場ができました。
なんとそこは、笛吹きがトンビを連れてきた場所でした。
そこでまた、キャンプをしていた人が、トンビに襲われるという・・・
まだ、人間の味覚えてたんかい!!
もう数十年たっているぞ、って感じなんですが・・・。
最後に、そのキャンプ場は誰も来なくなって、また静かな森に戻ります。
その後、人食いトンビたちがどうなったかは・・・誰も知らない。
そりゃそうだ。
昔家の近くに、昔庄屋さんだった大きなおうちがありました。
その家の庭に大きな松があり、その一番高いところにトンビの巣がありました。
今はトンビも見なくなりましたが、当時は空高く気持ちよさそうに飛んでいるトンビをよく見かけました。
そんなトンビを、時々すぐ近くで見ることがありました。
田んぼや草むらで、獲物を狙っていたんだと思います。
近くで見るトンビは、大きくて、くちばしが鋭く、目も鋭くて、
襲われたら怖いな、と思う鳥でした。
そんな気持ちからできたお話だったんだと思います。
ちなみに妹に、この話を覚えているか聞いたところ、覚えていないとのことでした。
ただ、トンビの話ではなく、私がした
「目ん玉物語」が怖くて覚えていると・・・
目ん玉物語・・・?
そういえば、そんな話もしたような・・・
でもそれ、食べるものがなくて、赤ちゃんに何も与えることができずに、自分の目ん玉をしゃぶらせた・・・という話じゃなかったかしら・・
どうしてこんな話ばかりしたんでしょう??
私の子供時代の精神状態を疑ってしまいます。
ただ、楽しい話もしていたと思います。多分
とにかく、空想の世界が大好きだった私。
思いつくままに話しているので、思わぬ方向に話が進んだり、まとまらないまま話が終わったりもしていたような気もします。
でもそれが、私が文章を書いたりするのが好きになった原点かもしれません。