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唐揚げ死なず?

大分の田舎の方に、50年以上前からある唐揚げのお店があった。
2代目の高齢夫婦が揚げるこの店の唐揚げは、皮はパリッと中は味が沁みてジューシー。
この辺りでは、なかなかの人気店だった。

しかし店の建物はあと何年もつかと思われるような状態で、店内も油で真っ黒だ。

それなりの売上もあるんだろうから、お店改修したら?
と常連客が言っても、
もう私達の代で終わりにするし、そんな余裕もないんですよ、
ただ自分達の楽しみでやっているだけですから。
と言う。

確かにこのご時世で、信じられないような安価で売っているのだから、儲けなんてないのかもしれない。

ところでこのお店、
唐揚げ死なず
と呼ばれている。

唐揚げ死なずの唐揚げ、美味しいよね!
と言うと
え?死なず?
唐揚げにされても鶏が生きていそうで怖い!
なんて言う人もいた。

実は数年前、看板の
「唐揚げしなずや」
の「や」の文字が外れてしまった。
それを人々は、
唐揚げ死なずと呼び、老夫婦の長生きを願ったのだった。

本文ここまで 410文字

これはたらはかにさんの
毎週ショートショートnote
に参加したものです。

今回は裏お題の【唐揚げ死なず】で書いてみました。
なぜ「しなずや」かって?
きっと夫婦の姓がしなずさんだったんでしょう。
(無理やり)笑

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