最後のバイバイ
彼と知り合ってもう3年。
初めは私の片思いだった。
あの日偶然彼が会議室に忘れたスマホを見つけて、届けた。
なんで俺のってわかったの?
って聞かれて
いや、あの…いつも見てたから…
真っ赤になって誤魔化そうとする私を見て、
ありがとう、お礼に飯奢るよ。
って。
こうして付き合うことになった私たち。
思った以上に優しくて
意外に甘えん坊で、
年上だと思ってたのに、実は2歳年下だった。
空っ風が吹く寒い日、手を繋いだまま彼のポケットに手を入れた時の暖かさ。
遠い外国では、今戦争が行われて、食べ物や住むところが、命までも奪われた人がたくさんいる。
こうして好きな人とのんびり手を繋いで歩けるって、本当に幸せなことだよね。
そんなことを言いながら、歩く彼の横顔は、とても優しかった。
数え切れないくらい口喧嘩をしたけれど、大きな喧嘩にならなかったのは、彼が私の言葉にもちゃんと耳を傾けてくれたからだった。
じゃあね。
そう言って、彼はバス停に向かって歩き始めた。
冷たい空っ風に首をすくめ、ポケットに手を突っ込んで歩いていく彼の後ろ姿を見ながら、私は、彼と出会ってからのたくさんの出来事を思い出していた。
私の視線に気づいたのか、彼は振り返って、右手を挙げて、大きく手を振った。
私も顔の横で手を振りながら
バイバイ
と呟いた。
きっとこれが最後のバイバイ。
明日からは、もう
バイバイじゃなくて、
行ってらっしゃい
になるのよね。
私は手を振りながら、微笑んだ。
これは、Mr.Childrenの
「空風の帰り道」の歌を聴いて、私の心に浮かんだ画面を書いてみたお話です。
あくまでも、私の心の中のお話です。
ファンの皆様、お許しください。
この曲の中で、櫻井さんが小声で
バイバイ
っていうところが大好きで、
そこだけボリューム上げて何度も聞いてました。
とっても素敵な曲です。