暫定的"推し"選びのルール
鷲崎健さん(アニメラジオ界を15年以上支え続けるすごい人)がご自身の番組で時折語られる概念をひとまずそう呼んでみることにします。その考え方が好きだという話です。
鷲崎さんは趣味と仕事両面の性質からいろいろなアイドルグループや音楽ユニットをチェックされていて、番組中の会話がそのあたりに流れることもたまにあります。
その際よく口にされるのが、「グループを見るときは何も知らない状態でもとりあえず推しメンバーを決めて、その人と周囲のやり取りと関係性から全体を探っていく」といった趣旨の話。つまりアイドルというコンテンツを小説や漫画、アニメや映画のような一つの物語と捉えて、それを追う視点、感情移入の対象を設定して楽しむという方法です。「わかる。アイドルは分からないけど、とてもわかる」僕はネットラジオを聴きながら頷き、そう書き込みました。
で、その最初の推し設定のための基準がタイトルです。アイドルグループはメンバーそれぞれに担当カラーが決められていることが多く、衣装やグッズにその色が反映されたりします。そこで鷲崎さんの基準は「黄色担当の子」。その理由は深く存じ上げませんが、自身が結成された音楽ユニット「オッド・アイ」の中でも自分のイメージカラーを黄色に選ぶなど姿勢は一貫しています。僕はまたしても深く頷きました。アイドルの分からない僕の脳裏には、それまで好きになってきたキャラクターが走馬灯のように現れては消えていきました。そしてその中に浮かび上がった明らかな特徴――「わかる。僕は青だわ」。
「ガールズ&パンツァー」で言えば「ダージリン」(青いカーディガン)、「ラブライブ! サンシャイン!!」で言えば「松浦果南」(正確にはイメージカラーは緑で、本来の青の子は「渡辺曜」。だが髪色が黝いのだ)、「スマイルプリキュア!」で言えば「青木れいか/キュアビューティ」(名前の通り)……。僕自身、アニメを見るときには無意識に鷲崎さんと同じことをしていたわけです。
名前を上げた3キャラクターにはその人物性にも相通ずる部分(落ち着いた立ち振る舞い、グループ内での俯瞰的な姿勢)があるように思います。また、青には「世界的にもっとも人気の高い色、友好的で平和な様子を象徴する色」という効果があるともされています。(William Lidwell, Kritina Holden, Jill Butler『要点で学ぶ、デザインの法則150 -Design Rule Index』日本語版2015年)プロが作るアニメにこういった計算が組み込まれていることに疑いの余地はありません。萌えです。一歩引いた立ち位置、いいよね。
となると鶏と卵。そういった性格のキャラクターを探す内に青い子の打率が高いと擦り込まれていったのか、青という色を目で追う内にそういった性格のキャラクターを好きになったのか。
遥かさかのぼれば「デジモンアドベンチャー」において「石田ヤマト」(小学5年生にしてクールな二枚目)が好きだった僕は前者のようであり、「仮面ライダーアギト」では「氷川誠/仮面ライダーG3」(とにかく頼りない)、「仮面ライダークウガ」ならドラゴンフォーム(キャラクターですらないけどとにかくかっこいい)が好きだった僕は後者のように思われます。あるいは一連の「無名世界観」に登場する「青」、「指輪物語」のひたすら謎めいた「青の魔法使い」、「ガンダム」も青い部分があるし、地理的に一番近い球団も青を基調としている……。「ポケットモンスター」は赤だったけど、そもそも青という選択肢はなかったし……。
鷲崎さんの面白おかしいラジオトークは、たまにこうやって思い出を見つめ返させてくれるところがなおさら最高だなあ、という話でした。