同人誌「距離について」のアフタートーク
mktbnが2023年8月13日に頒布したガールズ ラジオ デイズ二次創作同人誌「距離について」に関して、制作時の思考、進行、こういうことがやりたかったよ~、ここが難しかったね~などを振り返ってみる記事です。必然的に超ネタバレ。と言うかこれだけ読んでも何にもならない。可能であればお手元に冊子をご用意ください。
あとがきとも言えますが正式なものは本紙に付記したため、こちらは雑談メモ程度に読み流していただくのが良いと思います。またmktbnは「裏設定は没設定」「本編に表出しない設定は作品の評価に影響しない」派の人間です。記事内の記述が頒布物や各位の読後感と矛盾した際は、必ずこちらを無視して下さい。本当に大事なことは、本を読むお前がどう思うかだけなのだから。
全体
・ガルラジ終了の告知を受け、夏コミ参加を決めた時点で決めていた要項は二点。一つ、一本を通しで書くこと。二つ、パーソナリティ14人全員を登場させること。作品としての意義を求めて、というよりは趣味の問題。
・スタート時点で内容は未定。始動のことはもちろん思い出せません。ポメラに残る構想中のログを少し貼ってみましょう。
・とあり、公式Twitterからの各チーム近況報告と、2023年時点での年齢の整理から始めたようです。そうなんだ。
・一方、別のメモを見ると……
・という記述が02/07付にあります。ガルラジ終了の正式告知は02/13。夏コミ参加の決意より前にシャッフルの構想を練っている? よくわからない。こわい……。
・ポメラメモの次段も見ておきましょう。
・正確な日付は不明ですが、このあたりの段取りは3月までに考えていたようです。あまり迷った形跡もなし。インスピレーションだ。
・ともあれ順序は……「設定・状況を確認」→「言及したい情報や見たい組み合わせを決める」→「話をつなぐ要素を持ってくる」……という形だったようです。よく分かりました。
タイトル
・タイトルが確定したのは本文がまとまったあと、表紙作業に入ってからでした。優先して考えなかったことも事実ですが、別の創作では題名が先に決まるときもあるので時々&良し悪しですね。
・以下、メモに残る仮称や他案(本当にキツいのは除外)
・「距離について」という名称は突然生えてきたものでは無く、mktbnがこの数年構想しているオリジナル作品の企画案にあるものでした。発表どころか着手の兆しもないので今回に流用。良い使い道に収まったと思います。完全に投げたわけではないので普通にまた使うかも知れません。その時は許してね。
・この世界、距離ってやつがだいぶ重要っぽくないですか?
表紙
・表紙が固まったのも本文後でした。構想は二週間ぐらい、実作業はたぶん二、三日。
・当初は前回の「デイズ バイ デイズ」から色と写真素材を変更したもので考えていました。しかししっくり来ず。前回が水色+富士川、ガルラジのチームカラーが五色あることを考えると五冊出すのがベストでした。見果てぬ夢ですね。
・裏表紙の写真は双葉スマートIC(下り線)入り口。嘘案内板の素材は以前に収集していた「ネクスコグリーン」と「GD-高速道路ゴシック JA」。絶対にもっと明るくするべきだった。
・表紙のイメージは標識の裏側。文章部分は現地でシールを貼る案もありましたが普通に忘れました。余裕がなかったぶん後悔が多いですね。
・実物で見るより人の写真に収まっている姿が良い感じ。不思議。
時系列
・こういう日程を考えていました。
・本文を見ないと何も分からない段落! 実際このスケジュールは本編には反映されておらず(夏であることぐらい)、むしろ制作を進めやすくするための要素という面が強いです。つまり本当の没設定。
・リアルタイムを目指したのはもちろんガルラジだから。
・頒布当日の会場で読むとラストがリアルタイムに……という構想ではありますが、まあ本を読むタイミングなんて人それぞれなので、前面に押し出さなくて正解だっただろうとは思います。
"それ"について
・"それ"と呼ばれる小包、という着想はmktbnのオリジナルではありません。
・元ネタは漫画「カブのイサキ/著:芦奈野ひとし」。「#16 有給」から登場する間違って取り残された荷物です。原作におけるこのアイテムが何なのかは漫画を読んで頂くとして、今回の同人誌と同様「よく分からないまま携行される記録媒体」には違いなく、その点で明確に元ネタです。
・些細な言い訳をさせて頂くとすれば、原作の小包に"それ"のような機能の描写や説明はありません。本当に運ばれるだけ。
・とはいえ漫画におけるこれが何なのかは、読んだ上でも断言できませんが……。
・付け加えて白状すると「カブのイサキ」は「突然地面が10倍になり、飛行機が足代わりに使われる世界」という何とも距離のある作品で、もっと言えば「デイズ バイ デイズ」の表紙は同作者による漫画「コトノバドライブ」の丸パクりです。影響を受けていると開き直るしかないですね。
・また別角度として……
・……ということでもあるとか、ないとか。
各章について
穂波明莉、吉田文音 愛知
・掲載順と同じく最初に書いた場面のはず。
・よく分からない"それ"を話の推力に使い、かつ物語の重点をその調査に置きたくないとなると、出所をKSTAにしてしまうのが最短経路になります。さらに"それ"を日本在住の各パーソナリティが持ち回りにするなら受け取りの手順が必要、と考えた辺りで(神楽→)吉田→穂波→……で始めるのが良かろうとなりました。
・穂波吉田ラインは「ガルラジ特別編'21 吉田文音と穂波明莉のみみもとティータイム」もあり強力。チームを問わない組み合わせで軽くSFをやるぞ!という開幕宣言でもあります。
・穂波明莉さんはかぐりん団長の渡米に付いていかなかった。その意味を無理に考えるというより、事実を強調したかったような気がします。
・他細かい元ネタ(以降もあれば都度)
「無知こそ武器ですわね」……映画「TENET」
「万能家令」……無名世界観
二兎春花、穂波明莉、桜泉真維 岡崎
・こちらもほぼ掲載順通りの着手。
・同じ愛知に進学ということで穂波さんがチーム岡崎と接触。萬歳さん抜きのオカジョとカフェばん、二兎さんと桜泉さんのお仕事モード、あたりを書きたかったはずですが、書き切れてない。
・単純に短すぎる。場面一つでは明らかに無理があります。でも二兎社長が苦労してるところとか、全然書きたくないんだよな。
・オカジョとKSTAの共通項を見出だせたことは良かったなと思います。社長と団長、それぞれの腹心、楽しみつつ苦労している人。
・それにしても書けていない。厳しい。
桜泉真維、穂波明莉、二兎春花 岡崎
・掲載順は三章ですが最後にまとまった場面でした。連載じゃないので楽をしましょう。
・ここだけでなく、以降もいくつかの場面は飛ばし飛ばし進めていました。書きづらい部分を回避してともかく進捗を得るためであり、あとから全体のバランスを取るための遊びでもあります。
・場面自体は概ね考えていたのですが、書きづらかったのは岡崎のどこに行くかというところ。真夏に歩き回れるわけがなく、車で動くにしても決め手に欠け、さてどうしようかということで保留。一週間前の08/05であれば夏の花火大会があってちょうどよく、それはそれで大変そうでもあり。
・他が終わって戻ったところで学校に思い至りました。めでたし。
・藤田ゆきのさんによる近況報告「真維は普通の大学生を演じながら春花のブレーンとして活躍」の一文で桜泉さんと穂波さんの関係が強くなり、ここにはやり取りがあるべきだと導き出された組み合わせでした。会話としてはそこそこ満足。
・二兎さんに注目が集まるのは前段で書き切れなかったことの影響。多面性ということでどうにか。
・ぶっちゃけ桜泉真維さんとCV野村麻衣子さんの口調がごっちゃになっています。賢ラジを聴きすぎた。
・穂波さんの出番長くない!?
萬歳智加、桜泉真維、金明凪紗、玉笹彩乃 岡崎→御在所→神戸
・ここも掲載順通り。NEOPASA岡崎の描写だけ後に回しましたが、結局大きな変動もなし。
・萬歳智加さんと桜泉真維さんが二人で自然に会話をしていたら……嬉しい! 考えてみれば前回もこの二人で一本書いていました。一貫性ですね。
・金明凪紗さんと玉笹彩乃さんの合流は意外性があり、我ながらナイス。とくちゃんも合わせて仮称シン飲酒部。運転ができて酒が飲めそうば社会人の組み合わせ。このチームだけで往復1000kmくらいの距離を稼いでいます。タフすぎる。俺なら絶対に嫌だ。使おう新幹線。
・でもダウ90000が東京ー大阪で運転してたから……。
・書き始めた時点ではEXPASA御在所に寄ることまで考えておらず、途中で思い付き命拾いしました。見落としたら一生後悔していた。結果として長くなりましたが許容。いつかのあの夏を思い出すような描写も気に入っています。
神楽菜月、穂波明莉、徳若実希 コンゴ共和国
・テンションが違うので後回しにしたはず。正確には不明。
・リターン・トゥ・KSTAチャンスだ! やったー!
・競技人口が少なかったために悪目立ちしましたが、人がいればきっと多発したであろうパロディ寄りの拡大解釈。俺は気に入っています。
・近況4コマにモケーレ・ムベンベが登場した時点で内容はほぼ確定。実際の伝承とmktbnの嘘っぱちが混ざってもうよく分かりません。楽しかったですか? 私は楽しかったです。
・現地へ取材に行くことが難しく、せめて気持ちを寄せるため作業中はAmapianoを延々流していました。効果は不明。
・リターン・トゥ……リターン・トゥ・ガンパレード
突然始まる(これまでのあらすじ)……ニンジャスレイヤー
徳若実希、萬歳智加 神戸
・掲載順の通り。
・酔いどれとくちゃんと相手をする萬歳さん……はともかく、うーん。オカジョと探偵団の対比で考えればもっと書くことがあったはず。一番悔いがあります。
・"それ"の説明を入れた前段と繋ぎつつ、二人で交流してもらうのが難しかった。神戸お散歩編をできれば良かった話です。何なら神戸での飲酒自体に儀式的な意味を付けても……でも前段で遊んじゃったし……。力不足。
・あまりに悔しいのでメモを挿入します。
・これは何? 嘘、本当は分かっています。mktbnを酔わせたら喋ります。
玉笹彩乃、金明凪紗、萬歳智加、徳若実希 神戸→岡崎→富士川
・掲載順通り。
・もう帰るんだ。帰路を進みつつ経緯説明を兼ねた回想。構成自体は好みかつ楽。
・別れ、旅の終わり、ホームへの帰還と出迎え、軽薄な次の約束。そのサービスエリア。シチュエーションの勝利。
・読み返すと彩乃さんのパーソナリティが割を食っている気もします。良い場面には出てもらえたけど繋ぎ役ばかりになってしまった。とはいえ自然にそれができる貴重な人材でもある訳で。難しいなあ。難しい。
金明凪紗、年魚市すず 富士川
・掲載順通り。この情報意味あるんですか?
・ダントツで見慣れたEXPASA富士川、初めて書いたガルラジ二次創作と同じ金明さん視点、しかもほぼ会話のみ。間違いなく一番楽でした。
・楽をしすぎて特に書くこともない。困った。物足りないのでメモから一部の没要素を掲載します。
白糸結・年魚市すず、金明凪紗 富士市周辺
・掲載順通り。というかもう後ろの方なので。
・各場面を一人ずつの視点で、という形式が安定したところで混線。この変化は普通に計算です。小説って楽しいね。
・まもなく富士市を出て行くであろう年魚市すずが白糸結と地元を回る、という構想。本文もそこそこ長いのでメモが早いです。
・暗くなりすぎる会話はカットしましたが流れるものは同じつもり。
・幸せな形に辿り着いて欲しいと思い、勝手な理想を抱きつつ、これが幸せな形だと断定することもできない弱さですが、言うほど悔いもなし。二次創作はあくまで可能性に留めるのが趣味なのかも知れません。読む分には別。みんなどんどんやって下さい。
・というかつまり可能性を示したいんでしょうね僕は。
玉笹花菜 東京
・掲載順通り? 文量に対する細部の比重からちょっと後に回した気もします。
・さらなる変化として一人だけの場面。物語として必要な解決を、適切な人が良い位置でやってくれたのではないでしょうか。
・"それ"を出した時点で決めていた解決編ではありました。もちろん具体的な推理は辿り着くまで未定。どこから思い付いたんだろう? メモを見てもよく分からない。ノープランのまま残していた封筒に気付き、アレシボ・メッセージの情報を強引にねじこんだ、ということのようです。よく通ったな。
・直観で答えを見つけるかぐりん、じっくり考えて色々試して答えに辿り着く花菜、という対比は上手く行ってないですね。仲は良さそうなので良いか。
・映画「ゴールデンアイ」にも登場したアレシボ望遠鏡は2020年に崩壊。再建されることもなく、役割を終えました。
玉笹彩美、手取川海瑠、玉笹花菜 東京
・掲載順通り、というか後ろの方。
・近況で東京に集まってしまった以上、手取川海瑠vs玉笹sisters、もといvs玉笹彩美はやるべきでしょう。みなさんの合意を確信しています。
・アイドル兼Vtuberと元タレント。家族に恵まれながら悪戦苦闘する人と、生活に苦しみながら才能を見出された人。年下と遊ぶ人、年上を好きになった人。大物同士のシンパシーはありつつ依存はしない関係。そこまで大袈裟な話ではないにしても。
・緊張の接近遭遇からすっ飛ばして砕けて現在、という形をやりたかったので順序は満足しています。
・裏テーマというほどではありませんが、ここまで徒歩・車・船と色々な移動経路を使い、次が飛行機(空港)になることも見えていたことから、シチュエーションは電車になりました。
・「自由ですよね」「好きになりそうってこと?」から次に行くベタさがご機嫌。
・彩美が遊んでいるゲームは「LOOP8」。みんなクリアした? 私は……まだ全然……。
手取川海瑠・吉田文音 富士川→東京
・飛ばした箇所を残して順当に着手。
・混線するときは年魚市・白糸みたいになりますよ、と提示した上での手取川・吉田。さすがに計算。mktbnの最終的なスタンスはこの二箇所、ということでもあります。
・別れを見据えて再会、と見せかけて出て行かない締めは早々に決めていました。迷ったのはシチュエーション。いくらなんでも空港は陳腐すぎ。
・まあでも、二次創作の同人誌やけん。
・同じものを見て別のことを考えて、待ち合わせて、グダグダ喋って、また出掛けて。それ以上の願望もなし。
・空港の所感がほぼ私自身のものであることは反省点。普通に良くない。
・意味合いの関連は薄いですが、書く前に見ていた空港展望台の場面は映画「ラ・ジュテ」でした。
・Natchさんが吉田文音さんの誕生日に書いてくださったイラストを添えて終わります。一生見せびらかしたい。
・以上です。