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2020年ベスト「配信」ライブ

コロナウイルスのパンデミックで世界中が大パニックに陥った2020年も、気づけばあと数週間で終わってしまうとは本当に恐ろしいものです。多くの音楽好きの方がそうしているように、僕も今年の年間アルバムベストを考えているところですが、なかなか絞り込みきれません。未曾有の状況下とはいえ、今年も素晴らしい作品がたくさん出たので、最後まで悩むのは毎年通りといったところです。

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今年の音楽を振り返る中でふっと頭をよぎるのは、やっぱりライブが恋しいなということですね。今年は結局、1月に観に行ったQueen + Adam Lambertが唯一の有観客にライブ参加となりそうです。フジロック 、スパソニはじめ行く予定だったライブが尽く延期・中止に追い込まれ、定期的に生の音楽を浴びたい僕にとってはその状況はもう苦しみのほか何でもありませんでした。

そんなライブに行きたくても行けず心が死にかけた僕に希望の光をともしたのは「配信ライブ」の数々でした。これまで誰も経験したことのない慣れない環境のなかで、多くのアーティストやフェスを主催するプロモーターの皆さんが趣向を凝らして配信ライブの実施に踏み切ってくれました。それらの一つ一つが、生のライブがなかなかできない世界で僕たち音楽好きにとって心の拠り所となったことは間違いありません。

今回は僕個人が観た中で特に良かった3つの配信ライブについて振り返っていきたいと思います。

サザンオールスターズ / 特別ライブ2020「Keep Smilin’~皆さん、ありがとうございます!!~」 (2020.6.25)

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初めてお金を払って配信ライブを見たのが6月のサザンでした。日頃自分たちの音楽活動を支えるスタッフやファン、そしてコロナ禍で最も大変な思いをした医療関係者をはじめとするエッセンシャルワーカーの方への「感謝」をこめて届けるというコンセプトのもと実施されたのがこの生配信無観客ライブ『サザンオールスターズ特別ライブ2020「Keep Smilin’~皆さん、ありがとうございます!!~」』です。

正直無観客ライブってどんなもんだろうって構えていましたが、無観客だからこそできる演出もあって想像以上に楽しめました。特に来年に延期となったオリンピックにかけて、客席の後方に聖火台が現れ、本物の炎が燃え盛る中「東京VICTORY」のイントロが流れた時、「あぁコロナさえなければあんなことやこんなことができていたはずなのに」と思う一方で「まだまだ希望は消えちゃいない」とグッとくるものがありました。それ以外にも普段お客さんに配布する光るリストバンドを観客席に設置したり、「東京VICTORY」の途中でメンバーが拳を挙げるとスタッフも同じようにあげて一体感を出したり、「勝手にシンドバット」ではダンサーが客席に降りてきてどんちゃん騒ぎを繰り広げるなど、無観客だけど最後までいつものライブに来ているかのように思えるような演出の一つ一つが良かったですね。

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(↑昨年のツアー時のもの)

セトリもかなりナイスでしたね。ここ数年目立っていたミディアムテンポ、バラード中身の「聞かせるセトリ」と比べると、アップテンポでノリノリな選曲が多めでいわゆる多くの人が「サザンらしい」と感じやすい構成だったことから、コロナで暗くなった日本を元気にしたいという桑田さんの心意気が伝わってきたなと個人的に思っています。ハイライトは前半の「Big Star Blues(ビッグスターの悲劇)」〜「シャ・ラ・ラ」の流れ。ライブでずっと聴いてみたかった「フリフリ'65」「朝方ムーンライト」をやってくれたのが特に嬉しかったですね。終盤のおなじみのエロ曲畳み掛けは、配信ライブでも圧巻。本編の締めくくりとなった「勝手にシンドバット」での替え歌も少し笑えました。

いつになればコロナが 終息するのかな!?
お互いにそれまではグッと我慢の暮らし 続けましょう!!

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ファンクラブ「サザンオールスターズ応援団」サイトを通じてチケットを購入した会員には「勝手にシンドバット」で飛ばした銀テープのキーホルダーと特製の記念チケットが特典として贈られました。銀テープはサザンのライブ行くたびに持って帰っているので、サザンの近くでは観れなかったけど「サザンのライブ行ってきたぜ!」という実感を沸かせてくれたこの特典はかなり嬉しかったですね。

サザンは大晦日にも「ほぼ年越しライブ」と称して無観客の配信ライブを実施予定。こちらは6月とは違い事前収録。年越しライブは割とマニアックな選曲をしがちなので、どういったセトリになるのか今から楽しみです。


Billie Eilish / “WHERE DO WE GO?” THE LIVESTREAM (2020.10.24)

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この1〜2年で一気に時代の寵児となったBillie Eilish。大ヒットアルバム『WHEN WE FALL ASLEEP, WHERE DO WE GO?』を提げてのワールドツアーが延期(ライブ当時、のちに日本公演を含めて全て中止)となってしまった中、全世界同時配信で行われたのがこの『"WHERE DO WE GO?" THE LIVE STREAM』。

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この配信ライブはとにかく演出がすごかった。360度の巨大LEDスクリーンと3D技術を駆使した最先端XR(クロスリアリティ)技術によって作られたステージによって、まるでBillieが画面越しながら1曲ごとに異なった舞台にいるように見える圧巻のものでした。巨大な蜘蛛と対峙したり(you should see me in a crown)、月が煌々と輝く幻想的な宇宙空間に行ったり(i love you)、世界中のファンたちの画面をバックに歌ったり(everything i wanted)と、多種多様な演出でBillieならではの世界観に没入しっぱなしでした。このほか「xanny」や「my future」のようにPVが出てる曲はPVをモチーフにした演出も多く、まさに配信ライブという不慣れな舞台を最大限生かしたからこそできるパフォーマンスでした。

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配信当日はアメリカ大統領選挙の投票日まで約1週間に迫っていることもあり、Billieが画面越しで必死に「投票しよう!」と呼びかける姿も印象的でした。18歳のBillieは選挙権を持つ年齢になってから初めての大統領選挙。前回のリーマンショック直後の混乱で多くの困難に当たり絶望しがちな「Z世代」の一人として、そこにかける思いはかなり強いものだったのでしょう。政治をメインの仕事にしない芸能人が政治について持論を語るとその度に賛否両論となってインターネット上が荒れがちですが、個人的にはこういう不特定多数の人がみている状況下で自分の意見表明をはっきりできる人って本当すごいと思いますね。ましてやBillieはまだ10代であんなにはっきりと自分の言葉でメッセージを発信できるんですから。

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また、ライブチケットを買った人だけが楽しめる仕掛けがあったのも面白かったですね。その一つが「チャットルーム」。世界中のBillie Eilishファンとコミュニケーションができるというもので、英語やスペイン語、ポルトガル語といった主要言語に加え何と日本語まであったのは驚きでした。また、購入者限定のサイトにログインすると、バーチャル空間のグッズショップを見ることができ、イベント限定のグッズを多数手に入れることができました。

延期が発表されていたBillieの日本公演も残念ながら中止が決まってしまいましたが、パンデミックが収まったらもう一度しっかりチケット当てて、絶対生のライブを観に行きたいです。

Liam Gallagher / Down By The River Thames (2020.12.5)

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今年はSUPERSONICで来日する予定だった我らがLiam Gallagher。コロナの収束が見えず残念ながら「スパソニで"Supersonic"を大合唱する」ことはかないませんでしたが、我らがロックンロールスターは配信ライブ『Down By The River Thames』でも最高のギグをかましてくれました。Liamが配信ライブの舞台として選んだのは、イギリス・ロンドンを流れる「テムズ川」

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テムズ川を下る船の上には、普段通りのライブの機材の数々といつものメンバーとLiam。そしてオープニングを飾ったのはこれまでやってきた「Rock ’n Roll Star」ではなく「Hello」!今年リリースから25周年を迎えたOasisのマスターピース『(What's The Story) Morning Glory?』に合わせたチョイスで否応がなしにテンションMAXになりました。その後のセトリもソロ曲とOasis時代の曲を半々くらい織り交ぜたかなりバランスの良いセットリストでした。その中でもライブ開催発表時にLiamがやる公言していた「長いこと演奏していない曲」の数々も最高でした。特にびっくりしたのは『The Masterplan』収録の傑作B面ロックソング「Headshrinker」を演奏したこと、これはもう爆上がりでしたね。Oasis時代を入れても本当に長いことやってなかったはずなので、完全に意表を突かれました。

事前収録したということもあるのかもしれませんが、このライブでのLiamの声の調子が本当に良かった。Oasis解散以降では最もレベルの高いボーカルパフォーマンスを見せてくれたような気がします。今年Liamのドキュメンタリー『AS IT WAS』を見て彼の人間性や復活劇の舞台裏に触れたことも相まって、何だかグッとくるものがありました。

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あと、何といってもこのライブを観て思ったことが一つあります。
「海外旅行きたい・・・(泣)」
Liamたちのライブセットがある船が、ロンドンの中心を流れるテムズ川を下っていくということもあり、景色の移ろいとともにちょっとしたロンドン観光気分を味わえました。ロンドンブリッジに差し掛かったところは本当に絵になりました。時間帯が夕方〜夜だったこともあり、空撮したロンドンの夜景がめちゃくちゃ綺麗で幻想的だったのが最高でした。あんなの観せられたらロンドン行きたくなってしまいます・・・

配信ライブで音楽欲だけでなく旅行欲まで掻き立てられるとは思っていませんでしたが、来年はどっちも心から楽しめる状況になっていることを願うばかりです。


(番外編) フジロック・サマソニの名演アーカイブ

フジロックとスパソニの延期、心の中では覚悟していましたがやはり決まった時のショックは大きいものでした。夏の一番の楽しみがなくなってしまって、どうやって乗り越えればいいんだろうとこぼさずに入られませんでした。そのような中で僕たち以上に悔しい思いをしたであろうSMASHとクリエイティブマンの皆さんの熱い計らいで過去の名場面を観れたことで、何とか夏を乗り越えることができました。

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フジロックの配信は本来フェスが開催される予定だった3日間にわたって実施されました。音楽フリークを唸らせるアーティストのチョイスは、配信ライブでもさすがでしたね。個人的ハイライトはジャパニーズレジェンドのパフォーマンス。特に2000年のヘッドライナーだったBLANKEY JET CITYTHEE MICHELLE GUN ELEPHANT、そして特別枠だった忌野清志郎はマジで別格でした。この他、大ブレイク前のEd Sheeranのパフォーマンスを見れたり、Day 3に登場したOasisの選曲が「The Masterplan」と「Roll WIth It」だったりと、随所に「フジロックらしさ」を感じさせる3日間の配信イベントで、ハイネケンがすすんでしまいました。

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一方のサマソニ、こちらはまだスパソニの延期が決まる前にオンライン形式で「SUMMER SONIC 2020」と称して、過去の名演を演奏する配信を6月に実施。画像の通りの錚々たるメンツの中、特に嬉しかったのは2013年のLinkin ParkとMettalica。2013年は個人的に人生で初めて行ったサマソニでその時マリンのトリ前、トリを飾っていたのがLinkin ParkとMetallica。思い出のパフォーマンスをもう一度観ることができて胸が熱くなりました。1stアルバムをリリースし、これから大ブレイクしようとしていたThe 1975の2014年のステージや、名演と名高い2016年のRadioheadのフルセットもその場では観れなかったのでありがたかったです。11月の配信もサマソニの色が溢れたラインナップのアーカイブでめちゃくちゃ楽しめました。

フジロック、スパソニともに来年の延期開催が決定しています。2年連続でお預けは流石に辛すぎるので、来年は無事開催されることを祈るばかりです。


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いかがだったでしょうか。コロナ禍で音楽業界や音楽好きの注目を得た配信ライブ。配信ならではの演出方法が出てきていることも相まって、新しい音楽表現の形になりつつありますが、ライブ(Live)と書く以上やはりライブハウスやフェスに行って生の音楽を浴びることが恋しい状況には変わらないので、早く楽しめる状況になって欲しいですね。去年のThe 1975を超えるようなライヴパフォーマンスをまだまだ観たい。



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