1.大学編入学歴ロンダリングという方法
大学全入時代と言われて十年以上経過しています。少子化が進み、高校生の数が減っているのに大学の数は増え、特に都会では大卒はまったく珍しくない存在になりました。そのため、重要となるのは大学を出たか、ではなく、”どこの”大学を出たのか、に変わり、大学全入時代になっても受験戦争は依然厳しい状況が続いています。
それも当然で、多くの人は大学卒業後には就職の道を選び、良い企業、少なくともマトモな企業に就職したいのであれば、ある程度の学歴を確保しておく必要があります(もちろん一度もサラリーマンにならず家業を継いだり職人の道を進んだり起業したりする人もいますが圧倒的小数派です)。公には無いと言っていても、人気がある企業では実際に就職活動では書類選考時点でどこの大学を卒業する見込みかで明確に合否ラインが設定されているし、最低でも関関同立MARCHくらいの学歴が無いと就職活動で選べる企業はずいぶん制限されます。経団連が色々と試みていますが、過去何十年にも渡って新卒第一主義を日系企業は選択しており、その流れはここ数年で変わるとは思えません。新卒第一主義の一番の問題は、新卒時に就職活動に失敗すればその後巻き返すことは至難の業になることです。就職における最大のチャンスである新卒カードを切るときに、学歴での評価が付け加えられ、応募できる企業が定義されます。その時にFランクのカードであれば、有名企業に就職することは不可能なのです。
よく親世代が言う「いい大学に行っておけ」というのは、あながち間違いではないと言えます。
良い就職のためにはいい大学を卒業すべき、とここまで書いてきましたが、そのいい大学に入るためにも当然試験があります。それも、就職活動と同じように一発勝負の試験になります。
予備校に通い、模擬試験を受け、赤本を元に演習をこなし、場合によっては旅費を払って受験の為に指定された土地に赴く。そうして時間とお金をかけた一発勝負の大学受験。うまく志望校に入学できればよいのですが、ここでも同じように人気のある大学は以前多くの人が受験し、必ず不合格者が出ます。実力が足りなかった人もいれば、運が悪く当日インフルエンザに罹患してしまったり、と様々な理由もあって不合格になる人がいます。特に後者の場合は元々の実力よりも数ランク下の大学に入学することになり、その後の人生もおそらく、その大学のランクに見合ったものになってしまいます。
不本意な大学に入学するくらいなら、入学せず浪人して来年再び受験をという選択もあります。せっかく合格したし、親にも浪人は許さないと言われているから大学に通いつつ再受験目指して勉強をするいわゆる仮面浪人という手もあります。もちろんあきらめてその大学で過ごすという選択肢も。
でも僕は大学編入という手段を薦めたい。
かつて僕は試験当日に事故に遭い、偏差値40台の大学しか合格できませんでした。浪人は許されず入学した大学は初歩の因数分解すら理解できない学生が隣に座っていました。とことん失望した僕は、なんとか脱出できないか調べた所、編入という手段を見つけます。そしてその2年後、ちょうど3年生に進学するタイミングで偏差値60台の大学に編入することになります。そこから人生が大きく変わりました。机を並べる学生も見違えるものでしたし、コンプレックスも払拭できて自信を持つことができました。家族に対して申し訳なさを感じることも無くなりました。そして何より、予備校に通わず、高校卒業から4年でストレートで卒業することができ、お金も時間も浪人するよりも安くいい大学の大卒という肩書きを手に入れ、そして有名企業、難関企業への内定も手に入れることができました。
前置きが長くなりました。
ここでは大学編入、中でも編入という手段について紹介し、かつての僕と同じく編入を目指す人に僕の経験を共有したいと思っています。
まず大学編入を薦める理由としては、圧倒的なコストパフォーマンスの良さがあります。
予備校費用などは学校やカリキュラムによって異なる上、そもそも予備校に行かない(いわゆる宅浪)によってコストを抑えることができるが、浪人の隠れたコストとして就労期間の減少によるコストがあります。
浪人すれば当然、入学時の年齢がそのまま現役で入学した人よりもひとつ上になります。日本では定年制度があるため、そのまま卒業して就職、定年まで勤め上げる場合、現役生よりも1年働く期間が短くなります。
もちろんどこまで出世するかによって、生涯年収は変わりますが、少なくとも大卒1年時の年収分は浪人生は稼げないのです。ざっくり初年度の年収(月収+ボーナス)が無くなり、その分学費に消えます。しかし、編入の場合は現役生と同じ年齢で卒業するため、追加の学費は発生しないのです。
また、仮面浪人をする場合、最低1年は学費を多く払うことになります。これもまた国公立か私立か、文系か理系かによって異なるので文転、理転によって金額が変わりますが、少なくとも百万円近い金額を払うことになります。一方編入の場合は入学金を2回払うことになるが、授業料に比べればかなり金額は抑えられるのです。先に述べた就労期間減少のコストに比べれば10分の1程度の費用で済みます。
こうして表にして整理するといかに編入のコストがほかの手段に比べて抑えられるかがおわかり頂けると思いますが、いかがでしょうか。
ちなみに、僕は編入試験において予備校は一切使用しませんでした。だから現役に比べて余分にかかった費用は入学費くらいに抑えられ、親もすぐ納得してくれました。
また、編入学における試験は英語と編入する学部の専門、加えて場合によっては第二外国語の試験になります。学部さえ選べば、勉強する科目は相当抑えられるのです。僕は元々文学部でしたが、経済、経営、商学系の学部受験に狙いを定め、経済学、経営学と英語とドイツ語の勉強だけで複数の大学を受験しました。英語は受験英語のほぼ延長で、長文問題が学部に関係するものになるため語彙をやや強化するだけで乗り切ることができます。専門の勉強は大学にいくらでも教材があるし、編入試験用の赤本は無いが過去問や別の方法で問題演習をこなすことで十分対応できます。第二外国語については語学検定、たとえばドイツ語であればドイツ語検定試験の3級の勉強で十分で、大学受験とくらべ範囲はかなり絞られます。
受験できる学校の広さも魅力です。中には編入試験を行っていない大学(東大など)もあるが、国公立、私立含め多くの大学が門戸を開いています。僕も複数の大学を受験しましたが、その中には国立大学も複数含まれていました。一般入試では国公立大学を受ける数は前期と後期の2つに限られるのはご承知のとおりですが、編入試験に至っては日程さえ被らなければ制限無く国公立大学を受けることができるのです
ただ、デメリットもあります。
まず大学の勉強と両立が必要なこと。特に親元を離れて下宿している場合は、家事などに加えて大学の勉強も十分行う必要があります。もし実力があって、片手間で大学の授業についていけるのであれば問題ないのですが、編入試験では現大学の成績も評価材料になるのでただ単位をとればいいのではなく、高い評価を得る必要があるためまったく手をつけないということはできません。不真面目な学生が多ければ辟易するかもしれませんが、授業には出席し、レポート等の課題をこなし、なるべく協力しつつ高い評価で単位を獲得する必要があります。
そして孤独と焦りに打ち勝たなくてはならない点もあります。ここについては仮面浪人や宅浪と同じかと思います。いつか辞めるつもりの大学に籍を置き続け、交友関係を築くのは歪だし、奇跡的にすぐ近くに編入試験を受ける友人がいれば孤独は多少和らぐかもしれないけれど、ほとんどその見込みは無いでしょう。編入予備校に行けばそういった友人もできるかもしれませんが、前述のとおり大学の授業と編入の勉強、そして人によっては家事やバイトで時間を十分に使えないかもしれません。そうなった場合、一人で戦う覚悟が必要になります。
最後に倍率の問題があります。編入試験はあまり知られていないため受験者数は多くても100人ほどです。ただ、枠が問題で1~2人のところもあれば多くて10人ほどというのが殆どの大学における合格者数の設定人数になります。実際に会場に足を運んだ感覚ですが、しっかり勉強して受けている学生は多くて全体の半分程度だと思われます(空席や途中退席、回収時にちらりと見た範囲だがほぼ白い答案も散見された)。
ただ、これらのデメリットはコスト面をはじめとする各メリットを上回ることは無いと僕は考えています。
このまま受験の失敗を言い訳に人生を過ごすよりも、再び浪人によって受験戦争に真っ向から挑むよりも、編入試験を利用して目当ての大学に入学し卒業するほうが何倍も効率的でしょう。
もし、大学受験が不本意な結果に終わり、仕方なく滑り止めとして受けた大学に通っているけれど馴染めず、また将来に悲観してしまっている人がいれば是非編入試験という道もあることを知ってほしい。
そしてもし編入試験を受験すると決めたのならば、ここから先の僕の経験を活かしてほしい。
今後、定期的に編入試験に関係する記事をアップしていこうと思います。
ひとまず最初の記事としてはここまで。