言葉だけじゃぜんぜんたりない

「きみがひとの言葉に傷ついて生きているのは知っているけれどきみの言葉で傷ついているひともいることを知ってほしい」と言われて、ああ、そうですか、そうですかそうですか、こんなに他人からぐちゃぐちゃにされているのに、わたしは黙って死ねってことですか、そうですか、そうですかそうですか、そうですよね、わたしなんか死んだほうが地球のためですよね、
みたいなことを、ずっと考えていて、これってサーヤさんのお母さんヒス構文じゃん、わたしなんかほんとに死んだほうがほんとに地球のためじゃんほんとに、と思った、ほんとに、え、死んだら地球のためになれると思ってるんですか？とんだ思い上がり

どのミュージシャンのどの曲をきいてもドラムしかきこえなくなって、なんにもわからなくて、なんにもわからなくなって、どんどんどんどんなんにもわからなくなって「ああ、わたしの曲、ゴミなんだなあ」という呪いにかかりにいって、買ってからずっとつけっぱなしにしていたパソコンをシャットダウンした、気が向いたらDAWを立ち上げて曲をこねこねしていたけれど、じぶんの感性も脳みそも耳もなにもかも信じられなくなった、くだらない、くだらないわたし、くだらないわたしが作る曲はうつくしいのか？わからなくなった、こわくなった、これまでリリースしたじぶんの曲たち、うつくしいはずだった宝物たち、わたしには、わたしが考え尽くした最適なはずのドラムがきこえていたのに、わたしはゴミをずっとだいじに抱えていたのか、宝物だと思っていたのか、宝物じゃないのか、うつくしいだろ、わたしが、ほかのだれでもないわたしが、ぜんぶをゴミにしているんだろ

少し前に「全方位に迷惑をかけるようなふるまいはやめたんだね」と言われたことを急に思い出して、わたしという存在は、無意識に全方位に迷惑をかける存在なのだと気づいた、いまさら、そして、なにもかもおそろしくなって、2月、外出できた回数は片手で足りるほどで、ほとんどねていた、病院のせんせいに「もう出せるくすりがない」「くすりでは治せない」「カウンセリングを受けて」と言われてあたまが爆発した、泣いた

何者かにしてくれると思っていた街、何者でもないと教えてくれた街、で、わたしはだれと関わることもできなくなって、お金を生み出すこともできなくなって、先月のサブスクで得た利益は3円、中国でたくさんきいてくれたひとがいたみたいでうれしい、うれしいけど申し訳ない、きっとドラムしょぼいって思わせてしまったんだろうな、
と思ってしまう卑屈さ、醜さ、惨めさ、情けなさ、

ハローワークの窓口のひとって、なんで初対面なのにタメ口なんだろう、「就活できてる？」「体調良くなった？」ってなんなんですか？初対面ですよね？きょう初めてお会いしましたよね？こんな帽子を目深に被って、あちこちで止めどなくつづく人間がしゃべる声、声、声、番号札を発券する音、番号札を呼び出す機械がしゃべる声、声、声、人間が歩く音、に、ガタガタガタガタふるえながら、じぶんの順番がくるのを待って、やっと呼ばれて、あなたと目も合わせられないようなゴミが、言葉も出てこないようなゴミが、就活できてると思いますか？元気にみえますか？こちとらもうずっと死んじゃいたいんだよ、でも最近はあきらかに死んだほうが楽だと思うんだよ、思ってるんだよ、でも死ねないから、死なずにいつづけるのはお金がかかるから、なにもかも値上がりしていくから、わたしの曲サブスクできいてくれよ、YouTubeチャンネル登録してくれよ、SNSフォローしてくれよ、ツイート拡散してくれよ、インスタグラムいいねしてくれよ、CD買ってくれよ、ZINE買ってくれよ、この窓口におかせてくれよ、お金くれよ、くすりじゃ治せないって言われたんだよ、助けてくれよ、もう助からないんだよ、このままじゃ生きていけないんだよ、死にたいよ、ずっとこんなんなんだよ、ずっとこんなんなのに「望んで無職でいるんじゃないんですか」とか言われて、ウケるんだよ、すごいかなしいんだよ、

「カウンセリングを受けて」と言われたので50分8800円保険適用外のカウンセリングを受けた、50分のうちの早い段階で「現実問題として働かないと生きていけない」と言われて、あたまの中も目の前も真っ白になって、でもどんどん質問されて、泣いたり、泣いたり、考えたり、なにをきかれたかわからなくなったり、思い出したり、思い出せなかったり、考えたり、言葉を選んだり、泣いたり、泣いたり、考えたり、どんどんわからなくなったり、泣いたり、しているうちに50分が過ぎて「今後のカウンセリングでどういうことをやっていけるかはまた次回に」と言われた、ほとほと疲れ果てた、くだらないじぶんのままでは生きていけないことを、働かなくては生きていけないことを、プロの前で再確認する50分、を、8800円で買いつづけたら、くだらなくないじぶんになれるのだろうか、周囲にいる方々や地球や全方位にご迷惑をかけず、嫌な思いをさせず、生きていく価値のあるやさしい人間になれるのだろうか

カウンセリングは主体的にならないといけないとインターネットに書いてあって、だれかの前で主体的になることはいちばんしんどいことのひとつだ、なにをしてもなにをしなくても、じぶんが気づかないうちに、わからないうちに、全方位にご迷惑をおかけするふるまいをしている、事前に質問のリストをもらえたらいいのに

父にも「働かないと生きていけない」と言われて、しんどい、わたしもわかっている、つもりだ、でも人間と関わるのがこわいから、全方位にご迷惑をおかけするから、もう死んだほうが楽だ、と思う、ほら、地球のためじゃなくて、くだらないじぶんに耐えられないだけじゃないか

なんにもやる気が起きない、なんにもできない、父にも、カウンセラーの方にも、「働かないと生きていけない」と言われて、わかっている、わかっているけど、わかっているから、生きていけないと思う、生きていく自信がない、人間がこわい、どんどんこわくなる、と、せんせいに話したら、「セロトニンを増やす新しいくすりがあるので試してみましょう」と新しいくすりに変えてくれた、出していただけるくすりがあるんですね、医療すすんでるんですね、イエーイ、希望、希望、希望、希望なのか？薬剤師さんには「効果が出るまで1週間か2週間くらいかかる」と言われた

にも関わらず、次の日くらいにはなんとなく調子がちょっと良い気がして、イエーイ、希望希望！と思って、がんばって電車に乗ってがんばって映画をみにいったら、地震の映画で、地震の映画とはぜんぜん知らなくて、繰り返されるアラート音や、地震の描写に、ほんの少しそこそこだいぶかなりすごく具合が悪くなってしまって、ずっとやられつづけてしまっている、良くなった気がすると、良くなった気がする前よりスコンと悪くなる

数日前にユニセフから「寄付をしてください」のお手紙が届いていて、やっと開けたら、にこにこ笑う子どもさんたちのポストカードが同封されていて、ごめんね、こんな世界にして、こんなひどい世界にして、ほんとにごめんね

勝手に傷ついて、勝手に泣いて、勝手に消耗して、わたしは、ずっと、くだらないわたしとふたりきりでいる、こんな音楽はもういらないし、生きていても死んだとしても、世界は少しも変わらないことがかなしい、くだらなくないわたしになりたい、なれない、くだらないわたし

また耳鳴り

希望はAmazonで8000円で売っていた