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あなたのかなしみは

あったかくなってきたのでおふとんのカバーを外して洗濯したが、おふとんのカバーをかけるのがにがてで結局部屋の隅におふとんとおふとんカバーは積み重なっておふとん山となっている、左右上下がわからなくなる、こんな些細なことさえスムーズにできないじぶんがどうしようもなくて笑えてしまう、あらゆる椅子の上はカーディガン山、パソコンの上は積読山とレシート山ができあがっていたのをなんとなくこっちからあっち、あっちからそっちへ移してこれを書いている

かつて労働していたころ、上司に「出勤するのって当たり前ですよね、それと同じくらい日々のノルマを達成することは当たり前です」みたいなことを言われたことがあって、当時わたしは平日も休日もノルマに追われてうまく休めずにいた、いまでもたまに思い出しては「上司がいまのわたしをみたら無能だと思うだろうか」と思う、そのころ社内に設置されているメンタルヘルスケアの相談室的な場所に相談のメールを送るかどうか悩んでいた、ずっとずっと悩み続けて、下書きフォルダに保存しておいたメールは結局送れないまま退職をした

少し前に、父にストックフォトでお金を稼ぐ方法を教えてもらった、やっと重い腰を上げて登録してみたけれど、デジイチで撮られたであろう、なんの意思も匂いも感じない高画質で使いやすそうなだけの大量の写真・写真・写真を前にめまいがした、だれかに買ってもらうということはこういうことなのか、こういうことなんだな

大学を卒業してから10年弱、向いていない種類の労働をずっとしていたツケがいま回ってきているのでは?という気づきがある、だからといってじぶんのやりたいことでつつましくちいさく暮らしてゆくだけのお金も生み出せない、貯金がどんどん減っていく、口座やカードが燃え尽きるのが先か、わたしの命や生活が燃え尽きるのが先か、こんな八方塞がりの状態に陥っても、なんにも作れていないのに、くだらない自我が、この記名性で評価されたいというゴミみたいな思いをだいじに抱えている

アラームをセットするといまでも鳴る前に目が覚める、何時に寝付けて何時に起きるときであっても、目が覚める、そういういくつものちいさな呪いの解き方がわからないままここまで来てしまった

過去に目にしたり耳にしたりした他人の言葉や仕草や表情やそのすべてが、ふとしたときに蘇って、何度もかなしい気分になってしまって、蘇るたびにかなしみが濃くなってゆくのは、思い出すわたしが悪いんだろうか、「良い・悪い」「わたしのせい・あなたのせい」の二択では答えが出ないこと、答えなんか出さないほうが関係が良好に保てる場合もあること、が大半であることはわかっているつもりだ、つもりなだけなのだろう、わたしもだれかのかなしみを濃くしているかもしれない

精神科の先生がちょっと年上くらいにみえるかっこいい先生から、同い年くらいにみえるかっこいい先生に代わった、1月後半〜3月中旬くらいまでに比べると新キャラのくすりが合っているのか、沈むところまで沈んだから浮き上がってきているのか、それでもまた悪くなるだろう、また沈むだろう、と思っておけばこわくない、一直線に良くなることはない、と、思っていてもこわいものはこわい、狭い場所で人間たちとその人間たちの喋る声に囲まれると視界がぐらぐら揺れる、こうなったときに飲むようの頓服を処方してもらえないか次の病院の日にきいてみてくださいね、きいてみてください、良くなるためにいまできることをする努力を惜しまないで

駅の近くにある喫煙所は落ち着ける場所だと思っていたけれどそうでもなかった、むしろ最近はパニックになりがち、タイミングによっては電車よりも狭い場所・入れ替わり立ち替わりやってくる無数の人間たち・その人間たちの喋る声・その人間たちが絶え間なく操りつづけてチラつくスマホの画面の光・灰皿を無視してあちこちに捨てられる灰・風に吹かれて服に飛び乗った灰をこれみよがしにおおきな動作で払い落とす電子たばこ人間・吸い終えたたばこの箱のゴミ・ここで開けられた新品のたばこの外側のパッケージのゴミ・わたし・わたしもこのゴミ溜めを形成している一部

電車が高くなったので、西武線(ほんとうの最寄り駅)じゃなくて絶対にJR(架空の最寄り駅)で行ってJRで帰るぞ、と思って出かけたけれど、出先で具合が悪くなって、「これではJRで帰れない」と思って、喫茶店に入って休憩をする、ブレンド650円を飲んだり、たばこをちょっと吸ったり、本をちょっと読んだり、たばこをちょっと吸ったりして、何ターンめかで、「この650円を使って西武線に乗って帰ればよかったんじゃ…?」と気づく、チクショウ、チクショウチクショウ、でも、コーヒー飲みたかったし、たばこもゆっくり吸いたかったし、650円で安心できるコーヒーとパーソナルスペースを買ったと思えば安すぎるくらいだ

さて、あかるい話題をひとつ、すきな江國香織は犬小屋(暫定)です、読み終えた瞬間、イマジナリ麦くんが「そのひとは江國香織さんの『犬小屋』を読んでもなんにも感じないひとだよ」と言った、村上春樹の新刊ももうすぐ出るし、花束みたいな恋、したいものだね、ずっと花束みたいな恋したいって言ってるね、わたしはすきなひとのすきなものをすきになる準備はできているんだよ、すきになれるかどうかは別として

展示のためにプリントしたばかでか写真、玄関に飾った
数日後に落下して壁と床にちいさな傷を作っていた
いまはあきらめて床に置いている


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