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食べられない子との晩ごはん。
私はコーギーを飼っている。
コーギーはイギリスのウェールズ地方の犬だが、うちの犬の名前は純和風。
その名も「ふく」
おばあちゃんみたいな名前のオスの犬だ。
ふくは元気が取り柄の犬だ。
全身全霊で「犬」を生きているところがとても可愛い。
おはよ!おはよおはよ!
ごはん食べたい!ごはん!
うんち行きたいうんち!
おかえりおかえり!おかえり!ぼくいい子だったよ!なでなでして!
喋るときっとこんな感じだ。
そんなふくが、3日前くらいから調子が悪い。
1日目は少しお腹がゆるくて、何よりも大好きなドッグフードを食べたがらなかった。
2日目は下痢と嘔吐をした。
「明日は病院に連れて行こう」
と家族と話した。
3日目、つまり今日だが、早朝に胃液をもどしていた。
元気な子が急に元気じゃなくなって、動揺した。
私は仕事だったため、家族が動物病院に連れて行ってくれた。
そこで注射を3本お尻のほっぺたに打たれて、3本目で「キュン!」と泣いたらしい。
ふくは痛みに強くて、自分でテーブルに頭をぶつけてしまって、たんこぶをこさえても平気でいるような子だ。
そんな子が「キュン!」と泣くなんて、よっぽど痛かったんだと思う。
しかも3本も。
犬バカな私はその話を聞いただけで泣けてきた。
獣医さんからは「きょうは何も食べさせないでくださいね」と言われたらしい。
可哀想に。
ふくは昨日の夜から何も食べていない。
栄養剤を打ってもらったから、栄養は採れていても、口から食べられないということはとても辛いことだ。
私が晩ごはんの支度をしていると、ヨロヨロとやってきて、悲しそうな目で私の一挙一動を追っている。
「トントントントン」というキュウリを切る音で、
「切れ端が落ちてこないかな」
と更に近づいてきたので辛かった。
自分の晩ごはんの時間をとうに過ぎた頃には、もはや泣けてきたみたいで、空のお皿を鼻で触って、私の顔を見ては
「きゅう・・・きゅう・・・」
「ピー・・・ピー・・・」
と悲しげな声を出していた。
「ごめん。意地悪しているわけじゃないんだよ。お腹痛くなっちゃうからあげられないんだよ。ごめんね。」
もうこっちが泣ける。
家族でごはんを食べている時は目に毒だから、別室に隔離しておこうかとも思ったけれど、自分だけ別室だとお仕置きをされたと思ってしまう子なので、同じ部屋で私たちはごはんを食べた。
案の定、悲しい目で見てくる。
あかん。
つらい。
「こんな時、犬語が喋れたらなぁ」
と思う。
「意地悪じゃないんだよ。お腹治そうね。きょう我慢して、明日お医者さんにもらったごはん食べようね。」
そう彼に伝えたい。
「キョワングォアンタブェラルェンゲド、アワンシタ タブェヨネェー」
(今日ごはん食べられんけど、明日食べようねー)
試しに犬語を話してみたら「それ、最早人間語だけど」と家族に笑われた。
笑われてもいい。
彼に伝わればいい。
ふくは「は?」という顔をしていた。
伝わらなかったようだ。
広辞苑の金田一先生が「言葉を扱う仕事はいくらAIが発達しても決してなくならない」と言っていたことをなぜか思い出した。
犬語の広辞苑が欲しいです。金田一先生。
いつも元気な子にはいつまでも「いつも元気」でいて欲しい。
明日には元気になってほしい。
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