身体を流れる miso soup
昔、家庭科の授業で、
「お味噌汁やお吸い物を飲んで一番美味しく感じる塩分濃度は、自分の血液と同じ塩分濃度」
と教わった。
これを聞いた時、自分の身体の中をお味噌汁が流れている様子を想像してしまい、
「あっ、あっ、豆腐が、豆腐がひっかかる!わかめが!わかめがこびりつく!」
と心配になったりした。
我が家は薄味なので、もしかしたら、家族全員、塩分濃度の薄い血が流れているのかもしれない。
でも、時々、発作的にこってりとした濃いめの味噌煮込みうどんを食べたくなる。
その瞬間だけ塩分濃度の濃い血が流れているのかも知れない。
味噌煮込みうどんと言えば名古屋名物だが、名古屋の有名な味噌煮込みうどんのお店として、
山本屋本店と山本屋総本家が挙げられる。
私は俄然山本屋本店派だ。
私は山本屋本店に一人で入ることが多い・・・ううん、ほぼ一人で入るのだが、暖簾をくぐると私みたいに一人で食べに来ている女性が多い。
ホームかアウェイかで言ったら完全にホームだ。
次に席に着くと、まず、割と大きなお皿に盛られた漬物が出てくる。
この漬物はこってりと濃い味噌煮込みうどんに合うように、限りなく生野菜に近い浅漬けだ。
漬物をシャクシャクと食べていると、こってり熱々の味噌煮込みうどんが運ばれてくる。
季節限定の味噌煮込みうどんもあるので要チェックだ。
熱々コテコテの味噌煮込みうどんをハフハフしていると、さっきの冷たい、限りなく生野菜に近い浅漬けが恋しくなる。
ここで、小脇によけた漬物皿を見てみよう。
あれ?
減ってない。
そう。
山本屋本店の凄いところは漬物が減らないところだ。
客の漬物が少なくなると、おじさんがすぐに補充してくれるのだ。
私はこのシステムを勝手に
「ネバーエンディング漬物」
と呼んでいる。
本当にさりげなく盛ってくれるので、とてもよくできたおじさんだ。
一家に一人はいても良いと思う。
このネバーエンディング漬物は、何も言わないと本当に終わりが無いので、漬物のループから解脱するには、おじさんを目視したときに「もう十分頂戴しました。」と言わないといけない。
味噌煮込みうどんは食べることと真剣に向き合って、食べることに集中できて、食べることの幸せを感じることができるので、脳内「井之頭五郎(孤独のグルメ)」が騒がしい。
脳内「井之頭五郎」を感じながら熱々の味噌煮込みうどんをすするのは至福の時だ。
はあ、山本屋本店に行きたい。