見出し画像

福島医大に変えてほしい5つの事

まもるが福島医大の先生方にご意見申し上げる5つのこと 
 
私たちの立場では、しばしば福島医大の先生方へ厳しくご意見することがあります。これに対して、特に福島県の皆様から、「福島医大の先生方は一生懸命がんばっていらっしゃるのにそれに対して批判するなんて」というご意見をいただくことが、よくあります。私たちとしても同じく医業に従事する方々を批判するのは本意ではないのですが、やはり何点か、「同じ医療者としてこれはさすがにいかがなものか」と思ってしまうところがあり、どうしてもここだけは絶対に改善してほしいことについては言わずにいられないのです。
 

①   「過剰診断」という医学用語を使用しない事


福島医大の県民に対する甲状腺検査の説明には「過剰診断」という言葉は一言も出てきません。「過剰診断」という医学用語は使用せず、あいまいな表現で説明し、さらに対策を取っていると説明されています。まるで検査を受けても過剰診断の被害は起こらないかのような説明がされています。住民に対して誠意ある対応だとは思えません。
 
福島医大は、甲状腺検査に関する英語論文を出しており、その中で、住民に配布している説明文書が紹介されています。そこには過剰診断(overdiagnosis)という用語を用いて検査の不利益を説明していると誤解されるような記載がされています。
 

②   IARCの勧告を正しく伝えていないこと


WHOのがん専門部会のIARCは「原発事故後であっても甲状腺スクリーニングは推奨しない」という勧告を出しています。福島医大の先生方はこの見解を住民に伝えようとしていません。さらに、この勧告に対する誤った発言をしています。その代表例が福島医大が主催したシンポジウムで起こったことです。チョルノービリ原発事故後の調査に関わったことのあるイギリス の病理学者が招待され、講演で福島の甲状腺検査があたかもIARCの勧告に準拠しているかのように報告した、という事件です。 
 
この講演の場におられた福島医大の先生方はその誤りを訂正せず、福島の甲状腺検査はスクリーニングではないからIARCの勧告には従う必要はないという主旨の発言をしました(IARCの勧告の作成に参加した当事者もその場におられましたが、訂正はありませんでした)。
 
このことはさすがに問題になり、甲状腺評価部会でも福島医大の姿勢が問われました。これに対して福島医大は、研究者の個人の意見であり、大学の見解ではないと説明しました。それにも関わらず、翌年のシンポジウムでまた同じ講演がなされました。
 

③   「甲状腺検査を受けるか受けないか、県民が自分で決めなさい」と言うこと


福島医大の先生方は、「甲状腺検査は受けた方がいいですか」という問いに対して、「受けるかどうかは自分で決めてください」と答えます。私たちは、このお答えは医師としては無責任ではないかと考えています。福島で行われているような無症状の若年者に対する甲状腺超音波検査は不利益の方が多いので推奨されない検査です。様々な国際機関の提言等を知る医師であれば、受けないことを推奨するのが正しい行動ではないでしょうか。
 
検査を受けるかどうかを自分で決めることはとても重要なことです。ですが、医学知識を持たない方々が自分で決めるためには、多くのことを知る必要があります。特に過剰診断に関する検査の不利益を知らなければ、受けた方がいいと誤解することにつながるのではないでしょうか。前述のように過剰診断についてあいまいな説明のみを受け、IARC等の検査が推奨されないという勧告も知らずに、受けるかどうかを自分で決めることは困難です。福島県と福島医大の検査の説明動画では、情報が十分に提供されないまま、受けるかどうかは任意であると解説されています。県民が自分の責任で受けることを選択したことにして、健康被害に対する自分たちの責任を回避しているように見えてしまいます。
 

④   医学倫理上の問題が懸念されること


前述のように、福島の甲状腺検査は対象者に検査の正しい情報が十分に伝えられていません。また学校の授業中に検査が行われています。これらは医学倫理上、問題ではないでしょうか? 福島医大の倫理委員会はこのような検査の問題点ををどのように考えているのでしょうか。
 

⑤   大津留晶先生、緑川早苗先生を排除したこと


今まで述べてきた内容は、本来、福島医大で甲状腺検査にたずさわっている医療者が一番よくわかっているはずのことです。実際に、大津留晶先生、緑川早苗先生は福島の甲状腺検査の危険性にいち早く気づき、住民にそのことを伝えようとしました。しかし、そのような行動は評価されるどころか、検査の担当を解任され、結局大学を去ることになりました。
 
彼ら以外にも検査に疑問を抱いて現場を去る決断をした関係者はおられると聞いています。どうして彼らが大学を去らざるを得なかったのでしょうか。現在の福島医大が良心的な医療者が真っ先に辞めざるを得ない環境にあるとしたら、福島県民にとってこれ以上不幸なことはありません。彼らを再び現場に呼び戻すことが福島医大が信頼を回復するための第一歩なのではないでしょうか。

 

(終わりに)

医療者が最優先で取り組むべきことは福島の子どもたちの健康や人権を守ることであり、自らの利益や立場を守ることではないはずです。私たちは先生方が医療者としての良心に立ち戻り、県民のために行動を起こされることを期待します。