キングオブコント2021感想〜キングオブコントで優勝するには、M-1との違い〜
キングオブコント2021、皆さん見られたであろうか。
応援しているニューヨークとそのライブ仲間が多く出演する、個人的にかなり胸熱な決勝進出者となり、注目していたが期待を3倍上回る最高の大会になった。
素晴らしい大会過ぎて大きく語ることないが2020M-1に引き続き感想を書いてみる。
そして大々的に謳ってるが自分なりに思うところがあるのでそちらも最後まで読んで欲しい。
1stステージ
1組目 蛙亭
トップバッターは蛙亭。ABCお笑いグランプリでは自転車の違法駐車やポイ捨てなどどちらも生活の中でのことをネタにしたコントだったが、今回はSFな実験体という設定。
トップバッターが掴みで悲鳴を上げさせるとんでもない出だしだったが、その後は観客も無意味な悲鳴もあげず、拍手笑いも起こしていた。
後述するがトップバッターにしては点が伸び高得点で大健闘。来年の優勝候補筆頭だろう。
個人的にはニューヨークと順番逆ならお互いハッピーだったと思う。
2組目 ジェラードン
YouTubeで新作コントを週4〜5本上げ、いずれもかなり再生数が伸びている、界隈でかなり来ているジェラードン。日頃動画を上げているような強烈なキャラをばっちりはめていて最高だった。
よくセリフを聞いたら、よくあるイケメンとヒロインのセリフをただそのまま言っているだけなのがまた面白い。
これも順番なのかな、落ちるにはあまりにも高得点であった。
3組目 男性ブランコ
勉強不足で恥ずかしながら初めてネタを見たがとんでもなく面白かった。(もしかしたら劇場で見てるかもしれないけど印象にない。)
ボトルメールの設定、白いワンピース、ゆっくりとしたお辞儀と丁寧に丁寧に1分間振って振って、強烈な関西弁が出るのは誰だって笑ってしまう。しかもその後もその関西弁が嫌だなぁではなく、好みだった→妄想だった→現実だったの展開のセンスが凄い。納得の1stステージ突破であった。
4組目 うるとらブギーズ
まず3年連続で決勝来るのが凄いし、蛙亭やジェラードンのような持ち前の強烈なキャラなしに、毎回違う設定、構成なのが凄い。
今回もかなり面白かった。
佐々木さんの必死な演技、そして八木さんの笑いを堪えている演技が凄すぎる。
八木さんに関してはあれ以下だと伝わらない、あれ以上だとわざとらしい絶妙な演技だった。
ジェラードン同様落選するには惜しすぎるネタであった。
5組目 ニッポンの社長
去年のキングオブコントでの衝撃のケンタウロスから早一年、その世界観に惹かれファンになり、今年の8月の単独ライブ配信を購入した。ただその単独ライブは人を銃で乱射するとか、雷撃たれて○ぬとか、やりたいことやってる感が凄くて正直あんまり面白くなく、今回少し心配していたが杞憂だった。
彼らの世界観、「普通のことはやらないぞ」という空気感を、世間に伝わりやすい、いい形で落とし込んでいた。
今回の大会でもっと関東のテレビ露出も増えてほしい。
あと前々から思っていたが辻さんがとにかくかっこいい。
イケメンさは空気階段水川かたまりしか世間にバレないかなと思っていたが今回でしっかりバレていた。
6組目 そいつどいつ
ボケの市川刺身の女性演技ってさりげなくかなり上手いのだが、今回も炸裂。キングオブコント史上最も大きく舞台を使った良いネタであったが、他の組に比べて少しキャラや笑い量が足りなかったか。
怖がらせ一辺倒なのも良くなかったかもしれない。
個人的にはツッコミの松本竹馬のイタさ、やばさが世間にもっと伝わって欲しい。ネタ後の平場や決勝進出会見で既に少し出ていたが。
点は伸びなかったが松っちゃんからあれだけ高い点もらったら芸人冥利に尽きると思う。
とにかく来年以降に期待。
7組目 ニューヨーク
我らがニューヨーク。9/17の単独の配信を購入し、そこで披露されていたこのウェディングプランナーのネタがもう本当に本当に好きで10回以上、多分本番中バインダーにカンペ仕込んでいた嶋佐よりもネタ覚えるぐらい見ていた。
世によくいる小慣れた感じの人を上手くイジる絶妙な設定、あの嶋佐の意味わかんない絶妙な目のテープ、屋敷の一生懸命なツッコミ、本当にどれも好きだ。
個人的には本当に好きだが、キャラコントとして行くにはちょっとキャラが弱いのかな、ボケ方もオッケーですの一辺倒は弱いかな、急に競艇とか言い出して意味わかんないかなと思っていたがまさか最下位になるとは。
80点台が出るわけでもないリアルな最下位の、絶妙に嫌な空気になりそうになった瞬間の屋敷の松っちゃんへの噛みつきへの切り替え、本当に素晴らしい。松っちゃんも嬉しそうに見えた。
2019M-1、2021キングオブコントと大会最高得点が出る凄い大会の中でそれぞれ最下位ということもあり、本人たちはキングオブコント翌日のラジオでかなり長い時間悔しがっていて、そこも少し意外、印象的であった。
来年以降出るのかはわからないが、いいネタが出来たら出るような、気負いなくやりたいネタをやるような形でいてもらえればいいと思う。
お疲れ様でした。
8組目 ザ・マミィ
テレビ露出が増えていてクズキャラの酒井が注目されているコンビ。
こちらも恥ずかしながら初めてネタを見た。
初見の感想は、やばいおじさんが自らまともにツッコむのは、どこで見たのかはわからないが既視感があるというか、斬新な感じはしなくむしろチープに感じた。
流石にミュージカル突入は笑ったが、何だろう、ネットとかアニメとかのノリと発想の感じなのかな、とにかくこんな点が伸びるとは思わなかった。
2回目見たら酒井のキャラにしっかりハマったキャラ、林田もキャラにあった、いい設定とネタで、ミュージカル突入は後半の急な展開変換という言わば賞レースを獲り易い「狙った」構成となっており、しかもハマっていて高得点も納得。
酒井のキャラの都合作れるネタの幅が狭いだろうが、来年は酒井の違うキャラにできるネタを見たい。
9組目 空気階段
こちらも当たり前のように3年連続で出ているのがもう凄い。
ただ去年の感じから、このコンビはもうどうやってもクズでやばいおじさんをもぐらに当て込んだネタしかできない人たちなんだと思っていたが彼らをみくびりすぎていた。
とんでもないネタで歴代最高得点も納得、完璧なネタだった。
馬鹿げていて、万人が理解できる設定、疾走感のある展開変換、強烈なボケと賞レースを獲れるネタだった。
個人的には最近増やしているかたまりがボケに回るパターンが好きなので、そっちもどんどん見たい。
10組目 マヂカルラブリー
こんなに忙しいのに決勝出れてすごい。どんなネタを作ったのかと思って見たらフレンチの掴みに吊革を合体した素晴らしいコントだった。
ナイツ塙やスーパーマラドーナ武智もそれぞれYouTubeで言っていたが、もう野田クリスタルの体の動かし方芸はそれだけで1つのジャンルというか、エンターテイメントというか、芸術というか、それぐらいのものだと思う。
出順もう少し早かったり、なんならトップバッターならさらにいい大会になった気もする。
番組としては目玉だからトリでよかったのかな。
2ndステージ
1組目 男性ブランコ
レジ袋という時勢に沿った今年しかできないコント。素晴らしかったがちょっとネットのノリに近いところもあった感じがしてあんまりなところも。
残金3円からの大の袋で5円の流れは本当に良かった。
まぁ1本目良すぎたので弱く見え、優勝する感じのネタでもなかったので同率準優勝に。
来年の優勝候補だと思うので応援したい。
2組目 ザ・マミィ
半沢直樹のようなものをテーマにした、ドラマみたいじゃない?とメタなセリフを言うネタ。なんかこのメタったセリフを言う感じがまたさっき同様ネットのノリっぽくてチープ。終始行ったり来たりでさらなる裏切りや変化もなく、空気階段ひっくり返すほどではないという評価で同率準優勝に。
まあ男性ブランコ同様1本目だけでかなり名が売れ、今後もさらに活躍の場を増やせると思う。
3組目 空気階段
1本目があまりに凄すぎたところもあったが、2本目も普通に去年並みに面白かった。
小学生が描く自作の漫画を何かネタにするのって20世紀少年とか3丁目の夕日ぐらいしか見たことないが、それをコンセプトカフェにして、しかも自分は主人公じゃないとか、凄すぎる。
変な通貨を直で円に交換できないとか、メニューがわかりづらいけど、ヒント出してくれるとか、グラグラだけど落ちないセグウェイとか、その辺りも本当にセンスが絶妙。
文句なし優勝。バラエティでもネタでもずーっと活躍して欲しい。
審査員について
まず人選最高。
そして点の付け方が何より最高だった。
近年SNSの発展により審査員の点の付け方の炎上が目に余る。
ただそれ以上に年々レベルが上がっていて、とにかくこの数年の賞レースは点の付け方が難しすぎる。
トップバッターだから85とかそういう付け方をした後に以降85をちゃんと基準とせず、ずっと93とかつけたりするともうダメ。
かと言って全員に92をつけて差を付けないのもダメ。
初見で都度採点しなきゃいけず、後にどんなに面白いネタが来るかも予想しながらつける。
高い点付けすぎたら後が面白い時に困る、でも意味なく低く点付けたら叩かれる。
難し過ぎる。
前述の通り大会のレベルが上がっているので最低点と最高点の差を考えると82とかつけるとダメ。最高点が94とかでもダメ。(M-1の巨人師匠ならOK)
とにかく89〜99(100)の間のたった12点ほどの間に、メリハリをつけ、間違いなく10組を正確に並べなければならないのだ。
※※
ちなみに、「なら最初から15点満点にすれば?」と思う人もいるかもしれない。私も少し思った。
ただそうするとこの理論だと12〜15点でしかつけられなくなる。だからやり方としてはこうするしかないのだ。
※※
こんな採点を求めている我々お笑いファンへの期待に完璧に応える、最高の審査だった。
何より、トップバッターの蛙亭に安易に89とか91とかつけずに93を出せるのが素晴らしい。
残り9組全員がそれより面白くても6点にしか収められないというリスクを考えるとトップバッターの理論上の最高点は93しかありえず、それをあの短時間でスパッと決断できていた。
他にもニッポンの社長、そいつどいつなど好み分かれそうなコンビの点がしっかり分かれていたり、ザマミィや空気階段などは全員が高得点と言ったメリハリも良い。
後は単純に全員コメントが的を得ていて見ていてとても良い。悪く言いたくないしそれなりの良さもあったがやっぱり普通のおじさんの三村が紛れているより全員プロフェッショナルな審査という感じがして良かった。
もう向こう5年はこの審査員で固定して欲しい、叩く要素も無いと思うがどうか叩かず褒め称えて欲しい。
文脈上入れづらかった感想を箇条書きで
・2014シソンヌとか2018ハナコとか、途中から音楽流すと劇的な展開変換を演出できて賞レースの点を伸ばしやすいよなぁとザマミィを見て思った。
・ABCのオズワルド、キングオブコント空気階段と東京NSC17期が熱い。M-1はコットンに期待。
・ニューヨークは単独見るにめちゃくちゃ面白い漫才が3本仕上がってるのでM-1期待。
・ニューヨークの2本目は単独の他のコントも賞レース向きではなく、どうするのか気になってたがまさかの女上司のネタだったらしい。何故か自身のYouTubeで非公開にされてたと思ったらまさか2本目でやるつもりだったとは。あれをどうやって賞レースでやるつもりだったんだろう。
・自分もザ・マミィ悪く書いちゃったけど、やっぱりこいつどこが面白いの?って見方より全員面白いって思った方が自分にも他人にも良いので批判とかしないで全員面白いっていうマインドで賞レースを捉えて欲しい。
総括〜キングオブコントで優勝するには、M-1との違い〜
松っちゃんがニューヨークに放った「漫才でもできることをコントにするのはどうなのか」と言った発言、さりげなかったけど今後のお笑い界にとって大事な一言だったと思う。
(もちろんそうだろうという共通認識はあったろうけど、あの場ではっきりああいう形で言われることは大きな意味を持つと思う。)
ただの掛け合いだと漫才になるからっていう前提だと設定を突飛にする必要がある。でも変な設定にするとボケ幅も狭くなるし展開変換が難しい。
そういう諸々考えたり、今回のファイナリストの人数バランスとかも見て、優勝するコントって結局キャラコントしかないのかなと今回の大会を経て思った。
個人的にはキャラに頼らない、上手い設定で押し切るコントで優勝が見たいけど、その路線は多分準優勝が限界なのかな、ここ数年見るに。
もちろん優勝できる可能性はある。でも多分周りの組や出順に左右される。
その点キャラコントで終盤音楽入れる展開変換で爆ハネしてインパクト残せるコントの方が、自力で優勝を掴み取れるのかなって思う。
ただM-1はそういうわけじゃなく完全に順番とか運で決まる感じがする。ミルクボーイの影響で正統派漫才が評価されがちって空気も最近出てるけど、結局キャラ漫才だろうが斬新なシステム漫才だろうが、マヂラブみたいに優勝はできるし、全員が自分の力で優勝を自ら掴みに行くことはM-1は難しいのかも。
まとまりなくなりました、このぐらいにしておきます。ありがとうございました。