「生命の起源」解明に一歩
東京工業大学などの研究チームは、火星に堆積している有機物が30億年前に大気中の一酸化炭素(CO)から生成されたことを発表しました。現在の火星には予想以上の有機物が存在する可能性があり、これは初期の地球における有機物生成の過程と類似していると考えられ、生命の起源研究への期待が高まっています。
30億年前の火星には液体の水が存在し、有機物が堆積していました。しかし、その有機物がどのように生成されたのかは謎に包まれていました。隕石によってもたらされた、化学反応で生まれた、生命活動によって生成されたなどの仮説がありました。
NASAの火星探査車の分析によると、火星の有機物に含まれる炭素の同位体「炭素13」の割合が地球や隕石の有機物に比べて異常に低いことがわかりました。これを受けて、東工大の上野雄一郎教授と共同研究者は、大気中のCOが有機物に変わる過程を実験で再現しました。
実験の結果、CO2が紫外線によってCOに分解される際に、炭素13の割合が小さくなることが確認されました。初期の火星では、このCOが大気中の水素と結びつき有機物を形成し、地表に降り積もったと考えられます。計算により、当時の火星の大気中のCO2の最大20%がCOを経て有機物になっていたことも示されました。これは火星に堆積した有機物が予想以上に多いことを示唆しています。
研究チームは、地球でも同様に大気中のCOから有機物が生成されていた可能性を考えています。上野教授は「有機物が空から降ってくるという環境はこれまで想定されていなかった。地球で生命がどう生まれたのかを探る重要な一歩だ」と述べています。