【要約】仮説思考 BCG流問題発見・解決の発想法 その2【☆☆☆】
今回は、内田和成氏の『仮説思考』の後半部分の要約をお送り致します。
後半部分では、コンサルタントの仕事ぶりや実際の分析スキルについても議論がされておりますので、コンサルティングファームを目指す方は全て目を通していただくことをオススメ致します。
【前回の振り返り】
・仮説思考を持つことは、仕事を効率的に行う点でメリットがあるだけでなく、有効な解決策にたどり着くためにも重要である。
・多くの企業は情報を収集することにあくせくしすぎており、情報の海におぼれてしまってアクションができないでいる。一方で、仮説を検証する思考法を持つ、セブン-イレブンでは365回のトライアルを行っている。
・仮説思考を進めていく中で、全体のストーリ構成を先に用意し、それを深掘りして検証していくことが有効である。検証していく中で、間違いが見つかれば、仮説を修正すればよい。
【第3章】仮説を立てる
・コンサルタントに聞いてみると、仮説はコンサルタント同士や顧客とのディスカッションから生まれることが一番多かった。2番目は顧客や取引先へのフィールドインタビューの際に思いつくという回答であった。
・仮説を立てる方法には定石はない。一般的には、分析結果から仮説を立てる方法と、インタビューから仮説を立てる方法、ヒラメキの3つがある。
・仮説思考の人で問題解決にあたり、分析に頼るのは3割ぐらい。むしろ、分析に着手する前に仮説を立て、深掘りすべき分野を絞り込んだ上で、そこについて分析を行い、仮説の検証・進化につなげていく。
・仮説構築のインタビュー技術としては、インタビューの目的を決めることから始まる。
目的① 業界・業務を理解する
書籍よりも実際に働いている人から直接情報を得るほうがわかりやすく実態を性格に把握できる。
目的② 問題を発見・整理する
顧客の経営陣が何が問題かを理解している場合は多くない。インタビューによって問題を発見し、整理していくことが大切。
目的③ 仮説を構築・検証する
よい仮説をつくっていく、あるいはつくった仮説が本当に正しいか検証していくためにインタビューを利用する。
・フィールドインタビューで現場現状や実態を把握することは、問題を発見し、それを効果的に解決していくための土台となる。そういう意味でフィールドインタビューは宝の山といえる。
・質問は深く掘り下げていく必要がある。仮説を立てるためにも、仮説を進化させるためにもこれはとても重要なこと。
「わが社のA商品はシェアが高くて好評だ」→「なぜA商品のシェアは高いのですか?」→「A商品の商品力が優れているからだ」→「どういう点で商品力が優れているのですか?」→「A商品は多機能だから消費者に支持された」
・インタビューメモをつくる目的は、①自分の頭を整理するため、②インタビューで得たことを他人とシェアするため③プレゼン資料を作成するときのベースにするため。
・「ヒラメキ」を意図的に生むためには、①反対側(消費者側・現場側・競争相手)から見る、②両極端に振って考える、③ゼロベースで考えることが必要。
・最初から非現実的な仮説や突拍子もない仮説を除いて考えると、常識的な考えしか思い浮かばず、真の課題や原因にたどり着かないことがある。
・よい仮説の条件ー悪い仮説とどこが違うのか
①掘り下げられている
悪い仮説の例:「営業マンの効率が悪い」「できない営業マンが多い」、「若手営業マンが十分教育を受けていない」
よい仮説の例:「営業マンがデスクワークに忙殺されて、取引先に出向く時間がない」、「営業マン同士の情報交換が不十分で、できる営業マンのノウハウがシェアされていない」、「営業所長がプレイングマネージャーのため、自分自身の営業活動に忙しく、若手の指導や同行セールスができていない」
②アクションに結びつく
よい仮説の事例では、仮説が証明された場合に、すぐに実行できる解決策を出すことができる。これがよい仮説がアクションに結びつくという条件である。
事例:売上が上がらない理由を構造化する
仮説(1)総需要が減少→なぜ減少したか
仮説(2)総需要は減少していないもしくは増加しているけれでも、競合に負けている。
(2-1) 製品力で競合に負けている
(2-2)販売力・マーケティング力で競合に負けている
・上記で立てた仮説を検証して絞り込み、可能性のある仮説については、更に踏み込んで仮説を立てて、検証する。それを繰り返すことで仮説を進化させていくのが、イシューツリーを使ったアプローチ方法。この方法を使うと、自分が立てた仮説を検証するときにわかりやすく整理されるし、相手を説得するときにも有効である。
【4章】仮説を検証する
・仮説を検証する方法は、①実験による検証、②ディスカッションによる検証、③分析による検証の3つがある。コンサルタントはこれらを個別に行うというのではなく、組み合わせて用いている。
・実験による検証としては、セブン-イレブンの「200円のおにぎり」の事例と、ソニーの「消費者刺激型開発」の事例がある。
・セブン-イレブンでは、おにぎりは100円〜130円というものが常識と考えられていた中で、「品質・味が良ければ200円のおにぎりも売れる」という仮説を立てた。まずは赤字覚悟でほとんどのおにぎりを100円で売ってみたところ,売上20%程度伸びた。次に200円の質の高いおにぎりを売り出したところ、価格を下げたときよりも遥かに高い売上を上げることができた。
・ソニーでは、消費者刺激型開発というものがある。CDプレイヤーを開発した際に、多様な新商品を出してみて、反応のより商品を見極め、そこにバリエーションを展開して、消費者の反応を見るという製品開発を行ったのである。
・このような大掛かりな仮説検証ができない場合には、テストマーケティングは有効な手段である。
・ディスカッションによる検証としては、コンサルティングファームでは同僚やその道のベテランを交えてディスカッションすることで、自分の考えが進化したり、勘違いや思い違いを排除することができると言われている。また思い切った発想が必要なときには、逆にその分野では門外漢だが、幅広い教養を持った人物や、素人の方が、ユニークで斬新なアイデアが出てくることが多い。
・上手なディスカッションを実施するコツとしては、①必ず仮説を立てて行うこと、②仮説を否定せずに進化を目指すこと、③議論は負けるが勝ち、④メンバーはバラエティ豊かに
・分析の基本は、精緻なものではなく、クイック&ダーティー。ときに、その辺にある封筒の裏を使って、ちょことこと計算を行うことから、「バック・オブ・エンベロップ」分析とも言う。
・分析を行う目的は、①問題を発見する②相手を説得する③自分を納得させるの3点。
・定量分析の基本技:
①比較・差異による分析
②時系列による分析
③分布による分析
④因数分解による分析
【第5章】仮説思考力を高める
・良い仮説は裏打ちされた直感から生まれる
→仮説思考力が高まっていくと、最初から相当筋の良い仮説を立てることができる。検証した結果誤っていたので不振り出しに戻って仮説を立て直すということがほとんどなくなる。
・少なくても、筋のよい仮説を立てる確率は上がる。言葉を変えれば、最初から進化した仮説を立てられるとも言える。
・トレーニング①:So What?を考える
・トレーニング②:なぜを繰り返す
BCGでは、なぜを最低5回を繰り返すことをルールとしている。
【まとめ】・仮説の効用は、仕事が速くなる、質が上がることにある。
・部分の積み上げで物事を証明していくスタイルではなく、まず全体像から入って、必要な部分のみ細部にこだわる、あるいは証明をおこなうという取り組み方がある。こういう取り組み方を続けていけば、物事の全体をつかむ力が確実に向上する。
・仮説思考は、組織にとっても大事な役割を果たす。仮説・検証を組織全体で共有化できれば、個人の学習に比べて効果ははるかに大きい。
すなわち、企業の組織能力を飛躍的に高めることができる。学習できる、すなわち成長できる組織になるには、仮説・検証の繰り返し、すなわち仮説・検証で得た学びを組織で共有化することだ。
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