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性のカウンセリングに集まった女たち
【登場人物】
・友田先生
カウンセラー・30代女性。
・山田夫(仮名)
40代。 セックステクニック本やビデオをたくさん見て研究している
・山田妻(仮名)
30代。実はあるフェチ
・鈴木(仮名)
清楚な雰囲気の20代女学生
・セリカ(仮名)
30代の元ヤンOL。婚約者と結婚間近
・梅
アラカンの着物姿の女性
【第1幕】 性のカウンセリング
幕が開いて、テーブルのある会議室のような部屋。山田夫妻がドアを開けて登場する。
山田妻「私たちが最初みたいね」
山田夫「・・。何もこんなところに来なくてもいいんじゃないのか・・」
不満そうな顔で席に着く山田夫。
山田妻「今月小遣い3万円増やしてくれたら、私の言うこと、なんでも聞いてくれるっていったでしょ」
山田夫「・・でもさ・・」
妻が席に座ると同時に、セリカがドアを開けて舞台に登場。
セリカ「なんだここ? けっ、しんきくせえ部屋だなあ」
茶髪でヒョウ柄の派手な服を着ているセリカを、怪訝そうな顔で見る山田妻。山田夫はハミ出しそうな胸の膨らみをちらちらと盗み見ている。
セリカは丸いテーブルの夫婦と反対側に行き、椅子を乱暴に引いて、どかっと座る。
山田夫「こ、こんにちわ」
ちらちらと胸を見続ける山田夫を、あからさまに無視するセリカ。
ゆっくりとドアが開くと、真っ白なワンピース姿の鈴木が静かに入ってくる。
鈴木「友田クリニックの相談会の会場は、こちらでよろしんでしょうか?」
山田夫「ああ、どうぞどうぞ」
鈴木のきれいな姿に、さっと席を立ち、部屋に招き入れる夫。セリカは仏頂面で睨み付け、山田妻は興味津々の顔で鈴木を見ている。
突然別のドアが開いて、白衣の友田と梅が並んで入ってきた。
友田「皆さんおそろいのようですね。ではテーブルについてください。さあさあ、梅さんはこちらへ座ってください。では。
今日はよくいらっしゃいました。ここにいる皆さんは私のクライアントさんです。事前に今回の会のことを説明して、秘密の保持については契約書も交わしていますからご安心ください」
友田が契約書の束を掲げて全員に見せる。それを全員で目で追う。
友田「今日は皆さんの悩みをそれぞれはき出していただき、解決する手助けになればと開いた相談会です。もちろん、内容が内容だけにすべて話す必要はありません。ただ、今日来ていただいた方々は、いろんな方々に自分の悩みをさらけ出したほうが、素早い解決につながるだろうと私が判断し、おすすめした方ばかりです。なので、ぜひ勇気を持って話していただければと思います」
それでは自己紹介を始めましょう
友田はあたりを見回す。
「それでは、簡単に自己紹介をしましょうか。事前に個別に了解を得ておいたプロフィールで自己紹介してください。まずはこちらの山田さんご夫妻から」
最初に指名されてびくっと反応する山田夫。
山田夫「や、やまだです」
それを見て山田妻が苦笑いしながら、
山田妻「私たち、結婚5年目の夫婦です。私と夫は10歳、年が離れています。最近はマンネリ気味で、友田先生のところには半年ほど通っています。今日はいろんな意見が聞けそうで、楽しみにしてきたんですよ」
山田夫「こ、こら、そんなことまで」
梅「うらやましいわ、夫婦でそんな話ができるなんて」
突然割り込む梅。さらに話を続けたそうな梅を遮るかのように、友田が次の席の鈴木に声をかける。
友田「次、どうぞ」
鈴木「ある大学の院生をしております。先生を紹介してもらったのは、バイト先の店長が・・・」
これ以上言っていいのか迷っている風に友田を顔をちらりと見る鈴木。
友田「店長さんから、彼女の悩みを聞いてほしいとご連絡をいただいたんですよ。その悩みの内容は、またじっくり話すとして・・では次のセリカさん」
鈴木の隣に座ったセリカに、全員の視線が集まる。ちょっとびっくりして、でも不機嫌そうに話し始める。
セリカ「あのあな、なんの相談会か知らねえけど、俺は来たくて来たんじゃねえからな。先生がどうしてもっていうから。つまんなかったらすぐ帰るからよ」
毒づいて、イスの上であぐらをかくセリカ。
梅「あらあら」
梅は笑いながら取りなすように続けた。
梅「では、次は私かしら。(椅子から立って)私は梅と申します(頭を深々と下げる)。縁あってこの会に出席することにありました。もう50歳はとうに過ぎてます。ほっほっほ」
今日のテーマはセックスですが。。。。 興味ありげにテーブルから乗り出す山田妻。山田妻「あのう、今日のテーマはセックスですけど、梅さんはまだ、、、あのう、、、」山田夫「(小声で)何を言い出すんだよ」山田妻「(いいからと手で夫を制しながら大きめの声で)まだ現役なんですか?」梅「あら、当然ですわ。でも、経験人数は少ないのよ。死んだ夫以外に、ゆうじさんでしょ、それから町内会の(指を折りながらぶつぶつ言い始める)」 梅を制するように、友田「まあ、自己紹介はその辺にしましょう。それではまず、どなたから話していただこうかしら・・・」全員顔を見合わせる。
【第2幕】 私は全身を包まれていたい
山田夫「では、僕たちから話しましょう。(独り言のように)早く話して馬鹿げたこの部屋から出ていかないと。
今日は山田妻がどうしてもというので来ましたけど、もともと私たちはそんなに問題がないんです」
梅「では、どうしていらしたの?」
山田夫「(妻を指さしながら)こいつがもっと勉強してほしいっていうから。でも、十分満足しているんだろ? そうだろ?」
山田妻「普通にはね。でもそれだけじゃダメなの! もっといろいろしてほしいの!」
山田夫「だからそれは何なんだよ!!」
黙り込む山田妻。見かねて友田が口を挟む。
友田「では山田さん、普段の性生活について話してもらえますか?」
少しひるむが、すぐに話し始める。
山田夫「え、えっと、だから。まず週に2~3回セックスをして・・」
遮るように口を挟む山田妻。
山田妻「そんなことじゃなくて、内容でしょ?」
山田夫「わかっているよ! ええいもう(開き直ったように)まずはキスです。キスをしてそれから胸を、というか乳首を舐めて・・」
鈴木「それはどうやってなさるのですか?」
授業での質問のように冷静に聞く鈴木。突然のつっこみにうろたえる山田夫。
山田夫「だから、まずこう、乳首を転がしてですね、それから舌先でちろちろと・・」
ちろちろ舌を出す。
鈴木「そのときはどこを見てらっしゃるの?」
山田夫「(叫びながら)どこ? どこって、乳首の目の前にあるのは体だから、体に決まっているでしょ? それとも何ですか、あなたの彼は乳首を舐めながら、テレビでも見てるッてんですか?」
梅「あのう、私がつきあったタケシさんは、胸を舐めながら他にも・・」
友田「ゴホゴホッ(咳払い)、とにかく皆さん話を聞きましょうよ」
ほっとしたように山田夫は説明を再開する。身振り手振りを交えながら。
山田夫「で、それでね、胸の次はあそこですよ、あそこ。あそこをぺろぺろっとしてですね。ぬれて来たなあと思ったら、入れて、まず正常位、それからバック、そして上下入れ替わって、最後は正常位でイキます。これでいいですか?」
山田夫が全員を見回すが、誰も答えず。そっぽを見いている山田妻に友田が聞く。
友田「奥様、ご不満というのは?」
山田妻「ご不満というか、だいたい気持ちはいいし、イカないこともけっこう多いけど、たまにはイクし」
大声で山田夫。
山田夫「はあ? お前、いつもイクイクいってんじゃねえか」
山田妻「バカねえ、(イク表情を見せながら)『いかない』って言うわけないでしょ?」
山田夫はイスから離れてつかみかかからんばかりに、
山田夫「バ、バカとは何だ!! 俺だって、お前を喜ばせようと、いろんなビデオ見て研究したりしてんだぞ」
睨みあう二人にあきれたようにつぶやくセリカ。
セリカ「でたよ! 何でもビデオだビデオだって、同じようにしてやればみんな気持ちいいと思うバカがいるから、イカない女が増えるんだろうが」
聞こえたぞとばかりにセリカに顔を向けながら。
山田夫「そんなのは俺だって知ってんだよ。だからしみけんとかアダム何とかの本もしっかり読んでんだよ」
セリカ「それがバカだっちゅうんだよ」
鈴木「少し同感です」
山田夫は憤然とセリカに向かっていこうとするが、鈴木の言葉にひるむ。
梅「あら、かわいそうに」
思わぬ同情を受けて、山田夫が顔を真っ赤にして怒鳴ろうとした瞬間、
山田妻「違うのよ! 彼は努力していると思うわ。でもね、私がいけないのよ!」
山田妻の大きな声に一同、びっくり。山田妻は立ち上がって話始める。
山田妻「私がいけないんです。確かに彼は努力している。たぶん普通の感覚だったら、気持ちよくなれると思う。友達に聞いても、もっとひどい旦那さんの話、いっぱい聞くんです。でもね、普通じゃダメなの。私がダメなの!」
唖然として妻を見つめる山田夫。冷静に見つめる鈴木。興味なさそうにそっぽを向くセリカ。笑顔をくずさずに、でも興味を隠せず腰が浮いている梅。数秒の沈黙の後、山田妻は意を決して部屋を出て行く。
山田夫「おい、どうしたんだ?」
山田妻「ちょっと待ってて」
私はこれを着ないとイカないのよ
ドアの向こうでがさがさと音がした後、真っ黒な全身タイツをもって、山田妻が戻ってきた。
そしてそれを着始めた。
山田夫「なにやってんだ、どうしたんだよ?」
山田妻「私・・・私、これを着ないとイカないのよ!」
全身にぴっちりとしたタイツをまとい、山田妻は声を絞り出した。
山田夫「・・・」
恥ずかしさでみんなに背を向けた山田妻に向かって、友田が話しかけた。
友田「奥様、やっと告白できましたね。あとは、ゆっくり事情を説明してください」
背を向けたまま、頷く山田妻。そして顔を向けると、話し出した。ピンスポットがあたる。前に出て独白シーン。
山田妻「私、初体験が中学生の時だったんです。そのときつきあってた彼をデートの帰りに、私の部屋にこっそり入れたの。窓から二人で忍び込んで、部屋の電気を消したまま、小声で話していたら、父親が気づいたみたいで、私の部屋をノックしたの。彼と私はあわてて押し入れに隠れたのよ。布団の中に抱き合うように滑り込んで、ギュウギュウになって」
他の人は声だけ。
梅「あら、素敵だわ。で、見つからなかったの?」
山田妻「(客席を見たままこくりと頷く)そしたらお互い興奮してきて・・そのままセックスすることになったんです。初めてなのにすごく気持ちよくって、いっちゃったんです」
彼女の横に一人出てくる。告白中、その位置に。
梅「初めてでイクなんてそれは幸せだわね」 山田妻「でも、その彼ともう一度したときはちっとも気持ちよくなくって、すぐに別れたんです。それから何人かとつきあってみても、あのときの気持ちよさは感じられないのよ。で、大学生の時につきあった彼が、ちょっと変わった人で、いろんな服を着せてセックスをするのが好きだった。体操服やセーラー服、ナースやバニーガールとか。いろんな服を試してみたら、イクと言うほどではないけど、けっこう気持ちよくって楽しかった。そしてあるとき、これに巡り合ったんです」
独白シーン終わり。
山田夫「なんでセーラー服じゃなくてタイツなんだよ?」
セリカ「はあ、セーラー服ならいいのか?」
つぶやくセリカ。軽くセリカを睨む山田夫。 山田妻「その彼がたまたまバイト先でもらった全身タイツを使ってやろうって言いだして。私、なんとなくドキドキしていて。もしかしたらそのとき、もうわかっていたのかもしれない。彼がタイツを引き延ばして私に着せた。それで体中を触ってくれたの。そしたらいままでになく気持ちよくて、久しぶりにイッちゃったの。もう最高だったわ!」
鈴木「そんなことがあるものなんですか?」
全員が友田を見る。
友田「そうねえ。そういうのって圧迫プレイというんですよ。おそらく彼女にとっては、タイツに締め付けられる=押し入れで圧迫される=初体験の感覚、ということで、絶頂の感覚を思い出したのかもしれませんね」
山田妻「初めて先生にカウンセリングを受けたとき、そうアドバイスされて。でも、夫には言えなかった」
山田夫「どうしてだ?」
山田妻「だって、一生懸命努力しているのがわかっていたから」
山田夫「なにいってんだよ。それくらいのこと、早く言えばよかったんだ」
山田妻「でもこれ(タイツを引っ張りながら)が好きで、これじゃないとイカないなんて、それじゃあ変態じゃない!?」
二人の掛け合いに割り込む梅。
梅「変態って、そういうのじゃありませんよ。ホントの変態はね・・」
顔を背けながらセリカ。
セリカ「(小声で吐き捨てるように)じゅうぶん変態だよ」
それを聞いた鈴木。
鈴木「あんなの普通ですわ」
梅「だからね・・」
俺は鎖骨が好きなんだ!
梅、セリカ、鈴木が変態についての議論を始める。タイツを抱きしめるように立ちつくす山田妻。突然大声を出す山田夫。
山田夫「(立ち上がって)待ってくれ! 静かにしてくれ! (そして妻を引き寄せて向かい合い)君の気持ちはわかった。では、僕のことも聞いてくれ! 僕は、僕は、君の・・・鎖骨が好きなんだ!!」
一同シーン。やっと梅が話し出す。
梅「それはどういうことなの?」
山田夫「俺、18歳の頃、10歳上の人妻とつきあって。その人はとてもきれいで、感じやすい人だったんです」
驚きながらも興味津々の山田妻。
山田夫「彼女は女性の体のことをいろいろと教えてくれて。僕のつたない愛撫でも、いつもちゃんとイッてくれるんだ。その彼女が一度だけ、何度もイったことがあって、それが鎖骨なんだよ」
セリカ「(小声で)なんだよじゃねえよ、変態夫婦じゃねえか」
セリカを睨む鈴木と梅。
山田妻「どういう風にしてあげたの?」
山田夫「抱き合ったまま鎖骨にキスをして、ずっと舐めてあげたんだ。そしたら入れてもいないのに、何度も何度もイッて。すごく感動してすごく嬉しくて。こんなことがあるのかとびっくりしたし、なにより僕の愛撫でこんなにイクなんて」
ほほえむ友田。
山田夫「でも、そこから悩みも始まったんだ。どのビデオを見ても、どのセックステクニックの本を見ても、鎖骨だけでイクなって話はないんだよ。やれ愛撫だ、やれムードだなんてことはあるけど、結局、最後はセックスする。入れるんだよ」
鈴木「男は、女性のあそこに自分のものを入れたいんじゃないんですか?」山田夫「そりゃ入れたいさ。でもそれだけじゃないんだよ。相手にも気持ちよくなってもらいたい、自分の愛撫で何度もイッてほしい。そして自分がイケたらいいんだよ」
梅「それに気づくなんて、すばらしいことですよ」
山田夫「でも、なんで、彼女はイッたんだろ? あれは演技? それとも特殊な女性なの? あの日のことが忘れられない俺はおかしいのか?」
一同、友田を見る。
友田「まあまあ、そんなことはないですよ。彼女も奥様と同じように、何か鎖骨につながる性体験があるのでしょうね。性感帯は乳首やクリトリス、Gスポットなどといいますが、それだって誰もが必ず感じるとは限りません。やはり、人に愛撫され自分で感じた記憶があるからこそ、性感帯になるのです。もちろん、ただ愛撫されたからだけじゃなく、その状況、つまりムードや愛情の度合い、シチュエーションなど、性感を高める要素は必要だと思います」
それまでそっぽを向いていたセリカが友田に向って。
セリカ「じゃあこいつらは、どうすればいいんだ?」
友田「今日、この場に来て、お互いの性感帯を見つけたじゃないですか。お互いのことがわかれば、あとは話し合い、協力し合えばいいんです」
鈴木「でもタイツを着れば鎖骨は見えないのではないですか?」
梅「あら、タイツの鎖骨部分だけ切り取れば大丈夫じゃない?」
山田妻「そうですね。鎖骨が出てても、ほかの部分が締め付けられれば、いける気がします」
3人は共感したように頷きあう。
友田「セックスでお悩みの方は多いのですが、愛情があれば、少し心を開くだけで、ちゃんと解決できるのですよ。山田さんご夫妻はお互いに深い愛情を持っているということが、私の目から見ても、十分に感じられました。だからぜひ、本音で話し合ってほしかったんです」
夫&妻「ありがとうございます」
和やかなムードの中、見つめ合い抱きしめ合う二人。
⇒続く
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