30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい 第12話考察と感想
どうもこんばんは。霧海さと(きりゅ)です。ドラマ『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』通称『チェリまほ』の第12話の考察と感想を書いていきたいと思います。ドラマのほぼ全話についてネタバレがありますので、ご承知おきください。原作のネタバレはありません。なお、モノローグや心の声は【】で囲っています。
※2021/01/04 一部修正・追記してます。
※2021/01/05 日付設定の違和感について追記してます。
※2021/01/06 一部修正・追記しました。(「いいの?」「力がなくなっちゃっても」のあたり)
※2021/01/13 追記しました。(クランクアップの花の色は演者様の好きな色に合わせた可能性がある)
※第12話はかなり行間が多いため、体感半分くらい違和感がなるべくないように自分なりに解釈して補完しています。
※第12話についての解釈のひとつとして読める方のみお読み下さい。特に批判の意図はありません。
第11話のラストの私の解釈は以下の記事の「安達と黒沢のやり取りの齟齬について」に書いています。ラストについて私がどう解釈しているかがわかると思います。
過去のチェリまほ関連の記事は以下のマガジンにまとめています。ご興味のある方はそちらもご覧いただけたら嬉しいです。主に感想と考察を書いています。
第12話の個人的な見どころ
・オープニングの変化
・浦部さんの思いやり
・藤崎さんの助言
・第2話の対となる柘植のアドバイス
・第1話冒頭から繋がるシーン
・安達と黒沢の2回目の告白
・六角と藤崎さん演出の花火
・「メリークリスマス」
・第1話・第3話の対となるエレベーターでのシーン
・エンディングの変化
『元の日常』
2020年12月22日火曜日。【俺の日常は、完全に元に戻った。】このモノローグを強調するかのように、既視感のある第1話序盤で見たシーンが続きます。ただ、違う点は安達の心境の変化です。第1話では、恋や愛がなくてもそれなりに楽しく生きていた安達(第4話のケーキ屋での藤崎さんとの会話より)ですが、1度恋愛を経験して、恋人と離れた彼は、後悔の念で生気を失っていました。心なしか途中で登場する真むすびのおじさんが、安達を心配しているように見えます。それもそうですよね。黒沢と恋人だった頃は、あんなに生き生きとしていましたからね。
安達が、黒沢という恋人と離れた代償は、とても大きいものでした。心の中で安達は黒沢へ謝罪しながら自宅のベッドに寝転がるのでした。
オープニングの変化
このツイートを見ていたので、オープニングの変化を探していたのですが、私の残念な目では気づきませんでした。他の方がTwitter上で言及されていたのを見て初めて知りましたが、変化は安達の描いている絵が見えるようになる点です。ただ、青いものが描かれていることしかわからず、何の絵かは私の目というか環境ではわかりませんでした。4kの高解像度で見るとわかるらしいですが真相や如何に。この絵が何の絵かは、青い空、黒沢の横顔などのいろいろな見解を見つけたので、探してみると面白いかもしれません。しかしながら、公式見解も知りたいです。
情報元を調べたところ11月29日あたりで台湾の方が気づいていたという日本の方の発言を見かけて検索を断念したのですが、安達のイメージカラーが暖色系、黒沢のイメージカラーが寒色系で、黒沢の家では暖色系(レモン、卵焼きというか溶き卵)がはっきり色づいていることから、黒沢の世界に安達が入っていることをイメージしていると言われています。なので、最後に完成する安達の青い絵は、安達の世界に入り込んだ黒沢を意味しているのではないか、という説が上がっていました。第12話で、初めて心の底から、黒沢が安達の世界に入り込みますからね。
ちなみに、この安達と黒沢のイメージカラーは、クランクアップ写真でお二人がお持ちのお花の色と同じなので、公式見解と合っていそうです。
2021/01/13追記:どうも赤楚さんの好きな色が赤、町田さんの好きな色が青らしいので、クランクアップのお花は好きな色に合わせた可能性もありそうです。
なお、公式アカウントによると、オープニングは『魔法をきっかけに代わっていく安達の世界を歌って』いる曲で、エンディングは『安達を想う黒沢目線の曲』なのだそうです。
浦部さんの思いやり
2020年12月23日水曜日。第1話の誕生日前日のように浦部さんが安達に声をかけてきます。しかし、かけられた言葉は誕生日前日の「今まで、誰とも付き合ったことないって、ガチ?」というなかなか無神経なものとは全く異なり、「そろそろ、前を向こうぜ」という、優しい言葉でした。恐らく第11話の21日のコンペ直前までは安達はやる気に満ちていて、1週間みっちりプレゼンの特訓をしていて大変なのにも関わらず、生き生きとしていた様子を浦部さんは見ていたのでしょう。そして、コンペ直後に魔法を利用して部長の気を引いた罪悪感で落ち込んでいた安達の様子をこの2日間に見かけたのでしょう。だからコンペでの失敗で落ち込んだと思っていたのかもしれません。その辺りは浦部さんとの会話の描写がないため想像するしかありません。
浦部さんは安達に「彼女」のことを聞いたりしてお節介なところがありますが、第4話で机の下に潜っている安達を心配したり、第10話でコンペを頑張っている安達を気遣って仕事を引き受けたりと、後輩思いの良い先輩だと思います。
浦部さんは、安達がコンペに落ちたことを気にして落ち込んでいると思っていましたが、安達はコンペに落ちたことは大丈夫であることと、とにかく元の自分に戻ることを告げ、恋人と離れたことは告げないのでした。ただ、浦部さんが安達のことを心配している、その優しさはきっと安達に伝わったと思います。その様子を見ていた藤崎さんは、何かに気づいたようです。
藤崎さんの気遣い
昼休み、安達が一人でおにぎりを食べようとしていると(上のツイートの左の写真です)、藤崎さんが声をかけてきます。ここで正面に座らず、安達の左斜め前に座るところで、藤崎さんの気遣いがわかります。左斜め前に座るのは、親密になりたいときに有効だそうです。以下の記事に載っていました。
ここで藤崎さんが黒沢さんと何かあったかどうかを訊いてきます。第4話で黒沢の安達への想いに気づいていた、第8話で安達と黒沢の様子を見ていて関係を察していた藤崎さんが、安達や黒沢に自分が彼らの関係に気づいていることを言うのか言わないのかが密かに気になっていたので、ついに言ったか、と思いました。
第4話で安達の幸せを望んでいた藤崎さん。最近まで安達が黒沢と幸せな生活を送っているのを見届けていたのでしょう。21日は黒沢が日帰り出張なので、きっとその前の週までは、第8話、第9話宜しく逐一黒沢が安達に構っていたのでしょう。それが22日、23日で突然変わってしまっていたわけです。必要最低限の会話しかなくなったわけです。異変に気付いて安達の幸せのために行動を起こすことは、自然だと思います。
藤崎さんは安達の顔を見て、安達が黒沢と何かあったことを察したようで、そっかと言って頷きます。安達はその反応に驚きますが、藤崎さんは安達も黒沢もわかりやすいと言います。私もそう思います。六角が鈍すぎるだけで。
黒沢からの相談
ここで突然、一人で食事中の藤崎さんに黒沢が声をかけてきた時の回想シーンが入ってきます。(上の3枚の写真のツイートの、右上の写真です。最初黒沢が安達と藤崎さんのいる中で話しかけてきたのかと思って驚いたのは内緒です。)藤崎さんがお弁当を食べていることから、前の週以前の昼休みだと思われます。第4話では黒沢ガールズ(※黒沢のことを好きな女性たち)と食事を採っていましたが、ここで一人で食べていることから、藤崎さんは一人の時間を大切にするようになったのかなと想像しました。黒沢はディナーの場所を2つに絞っており、どちらが落ち着いて話せるかを藤崎さんに相談しています。
藤崎さんをディナーの相談相手に選ぶことは、私は自然だと思っています。第4話で輩に絡まれた際に黒沢が助けた後、会社まで結構長い時間、黒沢が藤崎さんと話しながら歩いています。もしかすると安達に藤崎さんが気を引かないよう、けん制の意味があるのかなと穿った見方もできますが、あまりにも自然に会社のエレベーターまで話しているので、普段からお話する仲だったのではないかと想像できます。また、第10話で『安達応援団』のメンバーになっていたことからも、信頼がおける仲だったのかなと思います。後は、藤崎さんが安達のように落ち着いた雰囲気のある人だからとも思います。安達本人に相談するのが一番手っ取り早いとは思いますが、モテる人は恋愛のエッセンスとしてサプライズを設けたがる雰囲気があります。むしろ何も相談せずに当日のディナーの場所を黒沢が独断で決めるよりは、黒沢が他の人に相談できたことを喜んでしまいました。
藤崎さんが黒沢の相談に答えた際に、安達はどちらも緊張するかもと言います。黒沢は頷いた後にその藤崎さんの言葉に驚きます。ここで、安達と黒沢の関係を藤崎さんが把握していたことを、黒沢が初めて知ります。参ったな、と答えながらも黒沢は嬉しそうにしていますので、もしかするときっかけがあれば打ち明けたかったのかもしれません。第8話で安達が黒沢と付き合っていることを柘植に伝えていることから、この世界では信頼のおける優しい相手であれば、たとえ同性の恋人であろうと打ち明けられる、優しい世界なのかもしれません。先ほど申し上げたように黒沢と藤崎さんの信頼関係があった上での発言だと思います。黒沢なら上手にやり過ごすこともできたかもしれませんが、藤崎さんと過去に話す中で、恋愛について茶化したりするような人ではないということが、黒沢もわかっていたのかもしれません。友人を食事に誘う際に場所を相談するのは別に普通ですし、聞かれても特に困らない話だと思います。後は、藤崎さんは第4話で黒沢ガールズと一緒にご飯を食べていますが、この回想シーンで一人で食べていたり、安達のところに食べに行ったりしていることから、黒沢ガールズと時間帯をずらしてご飯を食べていたのかもしれません。それであれば社員食堂に黒沢ガールズがいないことになり、あまり周りに気を遣わなくても済むことになります(※あくまで私の想像による補完です)。
その後、クリスマスに花火を見に行くことが決まっていることと、初デートを最高の一日にすると約束したことを黒沢が話します。これにより、藤崎さんがそれを知ることになります。
この回想により、黒沢から藤崎さんがクリスマスのディナーについて相談を受けたことと、黒沢と藤崎さんに信頼関係があることを安達が知ることになります。
藤崎さんの助言
安達の最近の頑張りに影響されて、藤崎さんが社労士の勉強を始めたことを告白します。社労士は合格率が1割未満のかなり難易度の高い試験です。社内コンペに挑戦することとの難易度の比ではない気がしますが、藤崎さんも優秀そうですし、元々事務仕事をされているようなので、社労士の資格を取ることで、職場環境を改善しようと考えていたのかもしれません。何せ第1話で安達一人で残業していたりするくらいなので。社労士については以下の情報を参考にしました。
「誰といるとか、いないとか、恋愛するとか、しないとか、全部その人の自由だけど、何を選ぶにせよ、自分が、その自分を好きでいなきゃ、そうじゃないと、どんな答えを出しても、相手も納得できないんじゃないかな」いい言葉です。この言葉は落ち込んでいる人には逆効果ではないか、という意見をTwitterで見かけましたが、安達は人のアドバイスを素直に受け止められる人間でした。この言葉を受け止めて、藤崎さんにお礼を言います。これにより、第11話でキャパオーバーで殻に閉じ籠っていた安達の殻に、徐々にヒビが入っていきます。
この昼食の後、藤崎さんが恐らく仕事が片付いた後で社労士の勉強をしていると、六角がクリスマスの予定を項垂れた様子で訊いてきます。藤崎さんは映画を見ながらケーキを食べるかなと流しますが、六角の「俺、友達と花火見に行く予定だったのに(花火が)中止になっちゃったんすよ~」という言葉を聞いて藤崎さんは驚き、黒沢の席を見ます。黒沢が安達とクリスマスに花火を見ることが決まっている、と言っていたことを思い出したようです。しかし黒沢はため息をつきながら既に帰途についた後でした。
コラム:花火の効果
ここで、なぜ花火にいろいろな人が執着するのか、花火の効果について調べてみました。占い的な話になってしまいますが、風水的には以下の意味があるそうです。
花火は火の属性の九紫火星に分類されます。
手持ちで楽しむ「花火」も、夜空いっぱいに広がる「花火大会」の花火も、九紫火星の開運パワーを持ちます。
(略)
炎は「魔を払う(邪気払い)」「厄除け」効果があります。
(略)
九紫火星は「学問」「知恵」も司ります。
(略)
九紫火星の「閃き」は、問題解決能力。
快刀乱麻、こんがらがった問題にスパッと解決の光を見出す。
着地し結果を出す性質。
(略)
空高く上がって照らす『打ち上げ花火』が特におすすめです!!
花火大会は、自然とこの恩恵を得やすいですね。
調べてみると花火は恋愛的な効果は風水においてはないようですが、安達と黒沢のこんがらがった問題を解決したり、結果を出すには良さそうな感じです。風水の意味は以下の記事を参考にしました。
後は一般的に日本人は花火を見ると元気になりますよね。多くの人が見に行くものです。花火を見ていると、なんだか心が洗われる気がします。そんな単純な理由なのかもしれません。(風水の意味を調べた意味とは)
六角→湊→柘植の連携プレー
2020年12月24日木曜日。本来何事もなければ安達は黒沢とデートの予定だったので、この日は休みを取っていました。安達は寝巻姿でベッドに寝たままで、デートで見るはずだった花火大会が安全上の問題で中止になったという新聞の記事をスマホで読んでいました。テーブルの上は散らかったままです。恐らく片付ける気力もなかったのでしょう。【(有休を)取り消さず会社を休んだのは、黒沢に会っても会わなくても、気まずすぎるから】藤崎さんが安達の殻にヒビを入れたものの、完全に砕けていないようでした。
すると突然チャイムが鳴ります。安達は黒沢が迎えに来たのかと思ったのでしょうか。玄関のドアを開かれると、B203号室のドアの前にいたのは、親友の柘植でした。部屋は散らかっているので、そのまま柘植を家には上げずに、恐らく急いで着替えてから喫茶店に行ったようです。ちなみにこの喫茶店で湊がちらっとエキストラ出演しています。公式アカウントによると柘植と湊が仲良くしているシーンは入り切らず、尺の関係で泣く泣くカットとなったそうです。
柘植が「何がいい。ケーキか?チキンか?クリスマスプレートなんてものもあるぞ」と何でも買い与えようとする父親のように言うのでした。「いいの?クリスマスなのに、俺なんかと飯食ったりして」と安達は柘植を心配します。安達の記憶の中では、第11話で柘植が湊と喧嘩したところで止まっています。せっかくのクリスマスですから、親友には楽しんでもらいたい気持ちがあったのだと思います。すると柘植は「友達の危機に、駆け付けないほど腑抜けてない」と言います。柘植先生格好良いです。惚れそうです。安達がはっとすると、最近安達と黒沢の空気がピリ付いていると六角が心配していたと湊経由で聞いたことを柘植が説明します。六角→湊→柘植の連携プレーです。第9話の連携プレー再びです。そこで柘植が、安達と黒沢の間で何があったかを訊きます。安達は渋々、黒沢との状況や近況を説明します。
柘植のアドバイス
恐らく第11話の企画コンペでの挫折から、黒沢と離れたことまでを柘植に説明したのでしょう。第11話で柘植に助言された通りに魔法の封印を決意して自力で物事を解決していこうと試みたものの、結局自分が魔法の力なしでは何もできないことを告白します。それを聞いた柘植は「お前は本っ当に大馬鹿者だなぁ」と若干安達に言い聞かせるように、しかし優しい声で言います。「俺は一昨日人生二度目の土下座をしてきたところだ」と得意げに告白したので、安達が驚きます。「下らないプライドより、湊を失うほうが怖いと思ったからな」ここで土下座シーンの回想が出てきます。柘植先生の見事な土下座です。手が揃っていて綺麗です。「俺もごめんなさい。笑ったのは照れ隠し」「俺のためにプレゼントを用意してくれた柘植さんが可愛くて、嬉しくて、好きだなーって思って」とここで湊が笑った理由が判明します。見事なツンデレで、可愛らしいですね。
「魔法などなくても、いくらでも繋がれる。間違っても、また話せばいい。そうやって、相手のことを知っていけばいいんだ」と柘植が諭しますが、安達は「でも、もう黒沢と俺は……」と首を振り、頑なに元に戻れる可能性を否定します。すると柘植が、「自分の心にも、ちゃんと触れてみろ」と言います。安達が目を見開きます。「気持ちに魔法は関係ない。結局、自分がどうしたいかだ」と、第2話の居酒屋で黒沢の片思いのことを相談された柘植が、安達に助言した言葉を告げます。10秒ほど安達は熟考しています。恐らく柘植の言うように「自分の心にも、ちゃんと触れて」「自分がどうしたいか」を考えていたのでしょう。すると安達は俯いていた顔を上げて、輝いた目で、生き生きとした目で柘植を見ます。安達に自転車の鍵を投げ、「俺の愛車を貸してやる。行け!」と促します。すると安達は力強く頷き、喫茶店を出るのでした。
黒沢に「愛」に行くために自転車を「恋」だ安達
※ツイート引用元の餅さんには掲載許可をいただいています。快く承諾くださり、ありがとうございました!
喫茶店を出た安達は、電話で藤崎さんに黒沢の出社状況を確認します。黒沢は会社を休んでいました。そこで向かう先から会社が外れ、残りの行先候補はデートで行く予定だったアントンビルの屋上に絞られました。
ここで『何故同じ都内(と思われる)にも関わらず、電車を利用せずに自転車で走り回っているか?』について恐らくツッコミがあると思います(都内はほぼ地下鉄かJRで網羅されているので自転車を漕いで走り回るよりは圧倒的に電車のほうが安全で移動の効率がいいです)。恐らくコロナや予算の関係で電車での撮影が出来なかったことが大きいとも思うのですが、サブタイトルにあるように、『自転車を「恋(漕い)」で黒沢に「愛(逢い)」に行く』と表現したかったのかなと思っています。これに気付けた方はすごいです。私は餅さんのツイートの引用を見るまで気付けませんでした。
【30歳になるまで、考えてもみなかった。平凡な俺の人生に、いや、俺自身に、こんな魔法がかかるなんて】安達にかかった魔法は、第1話冒頭を初めて聞いたときには、『人に触れると心の声が聞こえる』魔法のことだけかと思いましたが、後に続くモノローグを聞くと、違ったニュアンスが含まれているように感じます。【すぐ逃げそうになる俺に、こんな風に、背中を押してくれる人たちが居るなんて】安達にかかった魔法は、恋の魔法であり、また、人の優しさに触れたことによって安達が成長していく魔法だったのかなと思います。
2度目の告白
真っ暗な中、自転車でアントンビルに到着した安達は、金属製の階段を駆け上がって屋上に向かいます。屋上にたどり着くと、周りに人の気配がありませんでした。「いるわけないか……」と呟いて、息を切らせながらその場にしゃがみ込みます。ふとスマートホンを取り出し、LINEで黒沢と連絡を取ろうとします。すると「……あだち?」という声が聞こえてきました。安達が後ろを振り向くと、そこには黒沢が立っていました。立ち上がりながら驚いた表情で安達は黒沢を見ます。黒沢は少し安達に近づき、安達は俯きます。黒沢は止まってしばらくして花火が中止になったと当たり障りのない話題を投げかけます。安達は息を切らせながら、既知であることを告げます。少し俯いて考えた後、また顔を上げて「……ごめん、……もしかして約束のこと、……気にさせちゃった?」と黒沢が作ったような笑顔で訊きます。安達は俯いて小さく首を振ります。
黒沢が安達の名前を呼んで何かを言いかけると、それに被せるように安達が顔を上げて「ダメだった!」と言います。眉をひそめて黒沢は安達を見つめています。「黒沢と離れるって……自分で選んだのに……俺すっげー後悔した」と表情に訴えながら安達が言います。黒沢は静かに聞いています。「自分勝手だって……酷い奴だってわかってる」「でも俺、やっぱり黒沢と一緒にいたい」「魔法がなくなっても、……何回間違えても、……その度に、黒沢のことを知っていきたい。……俺、やっぱり黒沢が」ここで黒沢が近づいて、右手を安達の頭に、左手を安達の背中に回して、お互いの頭を付けて安達を抱きしめます。【好きだよ……あだち……】目から涙を零しながら、心底安達を愛おしんでいる、黒沢の心の声が響きます。安達は目を見開きます。
「安達の、不思議な力の話を聞いて、1個納得がいったことがある」それを聞いて安達は驚きます。「安達が、俺の心を読んでくれたから、俺たち付き合えたんだな」私はこの言葉を聞いて、安達への愛ゆえなのかもしれませんが、黒沢の推理力と洞察力が素晴らしいなと感心しました。安達の誕生日に心の声が聞こえるようになったと第11話のラストで聞いて、安達と一緒に居なかった2日間で過去を振り返っていたにしても、恐ろしい推理力だと思いました。7年間ただの同僚としてしか接していなかった安達の気持ちが自分に向き始めていたことにも、それが、安達が黒沢の家にお泊りした日と重なって、気付いたのでしょう。
「だからその力には感謝してる……でも、……魔法は関係ない……安達を好きな気持ちに」
言わずもがな、黒沢が安達を好きになったきっかけは第7話にある7年前です。でも、魔法が使えなかった頃から、安達は黒沢の心に触れていました。ルッキズムに苦しんで、努力が報われない日々を送っていた黒沢の心に触れることで、黒沢は救われていました。
「ずっと見てきたんだ。魔法があったって、なくったって、安達は安達だよ」「っていうか、……俺の心読んでたなら、わかるでしょ?」「俺も、……安達じゃなきゃ、嫌だ」これらの言葉は、第11話のラストで言ってほしかった言葉ですが、もしあの時言ったとしても、キャパオーバーで、殻に閉じ籠ったままの安達にの心には、黒沢の言葉は触れられなかったでしょう。今は、浦部さん、藤崎さん、六角、湊、柘植の様々な人の言葉に触れ、殻が破れた安達です。黒沢の言葉がようやく、安達の心に触れられるようになりました。そして、黒沢の幼子のような「安達じゃなきゃ、嫌だ」というわがままを、安達が受け入れられるようになったのです。
指輪代わりの万年筆
「もし奇跡が起きて、安達がここに来てくれたら、渡そうって思ってたんだ」そういうと黒沢は跪き、2本の万年筆の入ったケースを開けて、安達に差し出しました。安達が「これは?」と訊くと、黒沢が「だって、……指輪だと安達、恥ずかしがって付けてくれないだろ」と答えます。
私はこの万年筆というプレゼントはベターだと思いました。安達は第6話で六角が気付いたように部屋を文房具だらけにするほど文房具が好きです。それに万年筆は直したりインクを足して使えば一生モノだそうです。なので、安達のためのプレゼントとしては良いものだなと思いました。
黒沢は胸に手を当て、「俺と、……ずっと一緒にいてください」という言葉を安達に送ります。すると安達は頷いて涙をこぼし、「……はい」と答え、微笑んで万年筆を受け取りました。
花火
ここでタイミングよく花火の上がる音が響きます。近くのビルで花火を打ち上げているようです。「あれ、黒沢が?」と安達が訊きますが、黒沢は知らない様子でした。二人は花火を見て笑顔になります。黒沢は安達を見て、花火を見て笑顔になっていました。
花火を演出していたのは、藤崎さんと六角でした。打ち上げ花火の準備をしながら二人が話しています。「藤崎さんウケますね。急に花火上げたいとか」「(笑)理由も聞かずに付き合ってくれる六角君もなかなかだよ」「だって、なんかいいじゃないっスか。これを見て誰かがちょっとでも幸せになれるなら」藤崎さんは頷きます。六角も藤崎さんも、人のために動ける二人は、本当に良い人だと思います。
「……よし!」ここで二人が点火棒をピストルのように上を向けて持って、「……じゃあ、行きますか!」「うん!」と言う様子が、まるで幼いいたずらっ子のようで可愛らしいです。素敵な花火の演出です。
その花火を見た後、黒沢が安達のほうを向いて言います。「いいの?」安達が黒沢のほうを向くと、「……力がなくなっちゃっても」と黒沢が訊きます。「いい。……黒沢がいれば、魔法なんて要らない」と安達が答えます。
ここの「力がなくなっちゃっても」「いいの?」の確認は「童貞を失ってもいいの?」という風にも捉えられるのですが、恐らく第11話で安達が「魔法を失うのが怖い」と言っていたことに対しての確認だと思われますので、言葉通りに捉えるのが正解かな、と思います。後、「黒沢がいれば、魔法なんて要らない」という言葉についても真剣に考えてみたのですが、「魔法を失うのが怖いというのがおかしいから、黒沢と一緒にいる資格がない」理論で「黒沢と一緒にいる資格を得るためなら、魔法なんて要らない」ということだと思います。魔法にこだわって黒沢を失うぐらいなら、魔法なんて要らない、という気持ちなんだと思います。
心の声が聞こえる魔法は、第1話で黒沢の好意に気付くきっかけで、黒沢の一途な想いを知るきっかけで、安達が黒沢を好きになっていくきっかけでした。第7話で『俺はこいつの心に触れるために、魔法使いになったのかもしれない』と感じ、第8話から第10話にかけて魔法に頼りながら恋愛を謳歌し、第11話で黒沢を愛しているが故に、黒沢を求めているにも関わらず、黒沢との関係をうまくやっていくための魔法を失うのが怖くなってしまいました。しかし、今の安達にとって、かけがえのない大切な人が黒沢であること、間違ってもまたやり直せば良いとわかったのであれば、今後どんな困難があったとしても、魔法がなくなったとしても、二人はきっと周りの皆の協力を得ながら乗り越えられると思います。
二人は手をつなぎ、お互いを見あって、笑顔になります。盛大に上がる花火を見ながら、二人で花火を見上げます。
ドラマのチェリまほでは、手をつなぐシーンというのが、お互いの心に触れたところで出てくるように思います。お互いの手で『触れる』ことを大切にしているように思います。
「メリークリスマス」
青い枕。青いシーツ。青い布団。第2話で見た黒沢のベッドの上で、白いシャツを着た安達が目を覚まします。右(視聴者から見て左)に寝返りを打つと、そこには黒沢が眠っていました。黒沢は安達に眠っている姿を見せられるほど、気を許せるようになったのだなと思うと、なんだか嬉しくなります。
暫くして黒沢が目を覚ますと、気だるげに「メリークリスマス」と安達に挨拶します。安達はそれを聞くと、笑ってしまいました。「なんで笑うの~」と、甘えた声で訊く黒沢もまた新鮮ですね。「いや、……だって……」安達が答えようとすると「だって?」と黒沢が促します。「だって、普通、おはようだろ」笑いを抑えて安達が言うと、黒沢が「おはよっ」と言いながら布団を安達にかけて布団の中で暴れています。恐らく黒沢が安達をくすぐっているのでしょう。じゃれあっている声が聞こえます。
【こうして俺は、魔法使いじゃなくなって】というモノローグで安達は一人笑顔で歩いて会社に向かっています。黒沢がいないのでクリスマスとは別の日か、黒沢はカモフラージュのために時間をずらして出たのでしょうか?真相はわかりません。魔法使いではなくなったので、満員のエレベーターにも乗れるようになっています。【どこにでもいる、30歳の男になった】場所は安達のデスクに移り、安達が黒沢からもらった万年筆の蓋を抜いて刺しています。安達が誰かに気付いたようで、ふと左側を見上げると黒沢も万年筆を持ち、軽く振っていました。安達もそれに応えるように、笑顔で自分の万年筆を振ります。何かの合図でしょうか。これも真相は2人にしかわかりません。
クリスマス後のそれぞれの人がどうなったのかが映っていきます。場面が会社から本屋に変わって、柘植と湊が二人並んで『柘植将人先生新作!金色の猫は月夜を舞って』という看板が掲げられた本棚を見ていました。本に描かれた金髪の人は、なんとなく湊に似ています。二人が映り、湊が柘植の顔を伺って微笑んでいます。また場面が変わって、どこかの文房具屋でしょうか。六角が文房具をチェックしている様子が出てきます。店員さんに「こちら、新商品です!」と言いながら商品を見せています。また場面が変わり、会社の休憩所で藤崎さんが社労士の勉強をしています。皆さん楽しそうです。
エレベーターで始まり、エレベーターで終わる物語
場面が変わり、会社のエレベーターの横の廊下で、今度は黒沢が安達を見ながら2人でエレベーターに向かって歩いています。もう帰途についているようです。ずっと黒沢が笑顔で安達を見ていると、「やめろ恥ずかしい」と安達が照れていました。「なんで?」とふざけた様子で黒沢が訊くと、「今、俺のこと好きだなーとか思ってたろ」と答えます。「正解!すごいね~もう魔法使えないのに」とまたふざけながら、でも嬉しそうに言います。黒沢がエレベーターのボタンを押した後、「は?そのくらい黒沢の顔見りゃわかるよ」と安達が嬉しそうに答えます。第9話の時とはまた違った、お互いに心が許せる、恋人同士の会話だなと思います。「へ~」と言いつつ、黒沢がエレベーターに向かいます。扉が開かれると黒沢が先に入り、安達が後に続きます。「じゃあ今何考えてる?」と黒沢が訊くと、安達が「は?なんだよ、そのクイズ」と答えながらも嬉しそうです。黒沢が左手を安達の右肩よりの腕に沿わせて、黒沢が徐々に目をつぶり、安達が黒沢の唇を見て、キスをしようとしたところでエレベーターの扉が閉まるのでした。その扉にはスカイツリーが映っています。第3話のキス未遂のシーンの東京タワーと対になっているのかな、と思いました。なかなか粋な演出ですね。
エンディングの変化
エンディングは、途中までは今までと同じですが、画面が光った後もスーツ姿に変わらず、私服姿のまま歩いています。これは、これまでのエンディングは私服姿が黒沢の夢だったそうなのですが、第12話で初めて現実になったことを意味しているそうです(スピンオフの副音声より)。
安達がクリスマスイブの服装と同じなので、2020年12月25日も休暇を取ってクリスマスデートをした説を個人的に推します。
蛇足:第12話展開予想の答え合わせ
以下の記事で挙げていた展開予想の答え合わせをしたいと思います。展開予想しすぎたため長いです。
・第12話のストーリーの写真と第8話前インスタライブからの予想
柘植が鍵かも→一応合ってました。
藤崎さんが活躍→これも合ってました。
黒沢に藤崎さんが助言→合ってましたが、デートのことのみでした。
黒沢がどこかに行こうとする?離れる?転勤?それを止めようとする?
→全部はずれました。
・安達の状況打開からの予想
安達の自信がつけばきっと、その先に未来があるはずです。
→これは……外れましたね。自分の心に触れるということでした。
・第1話冒頭と第12話30秒予告と第11話からの予想
柘植の話を聞いて心が動いて柘植の自転車を借りて坂道を登って黒沢の元へ行った→大体あってました。
・第4話の藤崎さんと第8話の黒沢の心の声からの予想
藤崎さんは4話で、心の声で「安達くんには幸せになって欲しい」「恋をしても、しなくても」と言っているから、その伏線の回収があるはず
→回収されましたね。
黒沢は8話で「もし心の声が聞こえたら、安達がしたいこと、何でもしてあげるのに」というようなことを言っていたのが気になる伏線ですけど、最終回で回収されるでしょうか。
→特になかったですね。まあ心の声は聞こえませんしね……。
・六角と藤崎さんのラストシーンのオフショットを見ての予想
オフショットとストーリー予告見て、黒沢→藤崎→六角→湊→柘植→安達の伝言ゲームかなぁとちょっと思いました。
→伝言ゲームはありましたが、六角→湊→柘植→安達まででしたね。
・第11話の安達の家のカレンダーからの予想
12/21にカレンダー全体がぼんやりと映ります。その時に12/30辺りにピンクの付箋が貼ってあります。
もしかして忘年会が12/30?
そこまで引っ張る可能性…ありますかね。
→12/30ではなく12/29で、仕事納めの付箋でしたね。
・赤楚さんのインタビューからの予想
第11話でいきなり一月経過していることから一年後というのもなくはないかもしれません。これはTwitter情報ですが、2021年のバレンタインは日曜で、2022年のバレンタインは月曜なので。一年後というのも予防線として考えておくのもありかなぁと思いました。
→復縁したのは一年後ではありませんでしたね。まさか21日から3日後とは思わなかったです。
蛇足コラム:安達は何時間自転車を漕いでいたか
※少し野暮なツッコミをしているので、読みたくない方はこの章ごとスルーでお願いします。特に下の方です。
2020年12月24日の東京の日の入りは16時33分だそうです。真夜中と同程度に真っ暗になるには1時間半~2時間かかるため、アントンビルに着いた時間帯は最短でも18時3分以降となるようです。日の入りから真夜中と同程度に暗くなる時間は以下の記事を参考にしました。
安達が家のベッドで寝転んでいるときが昼の11時30分頃。喫茶店から出て藤崎さんに電話した時の会社の時計が16時くらいに見えます。そこから安達は2時間くらいは自転車を漕いでいたことになります。柘植と会話しながら昼食と軽食を摂っていたなら喫茶店で時間が経つのは早かったのかもしれません。(テーブルが映らないので想像です。)
むしろ、その後の六角と藤崎さんが花火を打ち上げるところが気になるところです。安達からの電話を受けた後、六角に話を振って急いで帰宅して着替えてから花火の買い出しとビルの屋上を借りる許可をもらっていたとかはありそうですね。それとも花火が中止になって即準備していたとか。前日に花火中止の話は知っていたので既に相談して着替えを用意していたとか。打ち上げ花火をするのであれば危ないから動きやすい服装に着替えるというのはありそうですが、六角の頭や服装で会社のあるビルを出入りするのは厳しそうだから1度帰宅していそうですね。ということで花火は前日に購入して準備、ビルの屋上の使用許可も前日に実施、それで一度二人とも早退して帰宅後着替えて頭のセットをして合流という説が有力そうです。安達の電話を受けてすぐに帰途に付けば間に合いそうです。後は実は藤崎さんが黒沢にアントンビルに行くことを聞いていたとか、最初黒沢が屋上にいなかったのは電話で確認していたからとか、黒沢に聞いてはいたけど藤崎さんは花火をすることを黒沢に言ってないから黒沢は知らなかったとか、というところで納得することにします。
蛇足コラム:日付設定の違和感について
※これも野暮なツッコミなので満足されてる方はスルー推奨です。
私はどちらかというと第12話は脱魔法使いするためには良かったと思っている派なのですが(ラブコメ展開も勿論もう少し見たかったですが)一つだけどうしても違和感が拭えなかったのが、安達や周りの人達が、安達と黒沢の離れていた期間を、2日しか離れていなかったにも関わらず、まるで1週間かそれ以上のように捉えている点です。
それでタイムラインを書いていたのでわかるのですが、時系列の判断は小道具しかないんですよね。第9話まではセリフに「付き合ってから9日」とか出るのですが、第10話以降は確か企画コンペの締め切りとか、安達の家のカレンダーで丸が付けられることで判断するしかないです。なので恐らくですが、小道具の用意の指示をした人が脚本をあまり読み込めてなかったために、日数の認識にズレが生じたのかなと思ってます。なのでそこは脚本を正として捉えれば良いかなと思います。(さすがに2日間を「最近」とか「毎日同じことの繰り返しで」というのは感覚として無理があるので)
終わりに
第12話は、演者様の演技のお陰で多幸感いっぱいに見終えることができました。しかしながら、細かく時間帯や、周囲の環境に注目しすぎると、気になってしまいましたので、ややその辺には目をつぶって話の流れだけで見たほうが良かったように思います。でも考察することで様々なギミックに気付けたので、面白いドラマだと思いました。
まだ第7話までの感想や考察ができていないので、それが終わったらストーリー全体の考察や、安達の成長の様子、妄想の変化、原作との細かなキャラクター設定の違い、原作と同じ部分と異なる部分など、また記事にできればいいなと思います。
かなり長くなってしまいましたが、ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
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