見出し画像

30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい 第11話感想と考察

 こんばんは。霧海さと(きりゅ)です。『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』通称『チェリまほ』の第11話の感想と考察を書いていきたいと思います。当然ですが第11話までのネタバレの内容がありますので、お嫌な方は読むのを止めてください。後、また前置きありますので、本題に入られる方は目次以降へどうぞ。なお、心の声とモノローグは、わかりやすいように【】で囲っています。

 『チェリまほ』については以下のマガジンにまとめています。ドラマの紹介は第8話の感想を、原作の紹介は第9話の感想でしていますのでご参考ください。正直『チェリまほ』でググっていただいたほうが情報は出るかと思います。

 第10話の感想は、上のマガジンにも入れていますが、以下に書いていますのでご参考ください。

 第11話は、なかなか辛かったですね。ただ、美しい演技の応酬を見ることができたのが良かったと思います。以下は第11話の予告動画です。これを見ただけでは、恐らく流れは全くわからないので、是非本編を御覧いただきたいです。

第11話の個人的な見どころ

・脱・魔法使いの苦悩とアドバイス
・大型犬がじゃれているように見えるワールドワイドハグ
・「デートを楽しむために」を黒沢が安達に何回も言わせようとする様子
・コンペの特訓
・「自分を信じて」とノリで描かれたお弁当
・<しんどい>寺島部長の心の声をそのままコンペで利用した時の悔恨
・黒沢の美しい寄り目の表情
・<しんどい>天使の瞳から流れ落ちる涙

脱・魔法使いの苦悩と助言/心の声の依存性の恐怖

 ある喫茶店にて、安達が一人、悩んでいるところから始まります(上のツイートの4枚目の写真です)。第10話の最後のシーンを思い出しながら、心を読む魔法が使えることを黒沢に伝えるべきだったかどうかを考えていました。

 すると、柘植がやってきました。しかしこちらも何か悩んでいる様子で、ため息を付いていました。「どうしたの?」と安達が訊くと、「昨日、湊にプレゼントしたんだ。自転車」と事の経緯を話し始めます(上のツイートの3枚目の写真です)。

 場面は喫茶店の前です(上のツイートの2枚目の写真です)。湊が自転車2台を見ながら「たしかに俺、運動できるからいいかもって言ったけど……」と言うと、「何だ?なにか問題が?」と柘植が聞きます。すると湊が「いや……俺、てっきりクロスバイク的なのを想像……(笑)柘植さんって、意外と天然っすか?(爆笑)」と笑ってしまいます。すると柘植が「おかしいか!?人の失敗が!」と、いらだちに任せて言ってしまうのでした。湊は柘植のいらだちに驚きます。

 回想はここで終わってしまい、柘植が叱って湊が驚いた後の事の経緯(いきさつ)が省略されているのですが、心穏やかでないことは確かです。確か第10話の時点では、柘植と湊は、ほぼ同棲しているはずです。不穏な空気となってしまうと、かなり気まずいことが想像できます。

 「昨日から筆が進まず」ここで柘植は頭を抱え、「このままでは、『柘植先生の連載は痴情のもつれによりお休みします』になってしまう!」と天を仰ぎます。安達は柘植に「落ち着けって!早く謝っちゃえば?」と助言しますが、そこで柘植が長い沈黙の後、「……どう謝ればいいかわからない」と落ち着いて話します。安達が驚くと、柘植が「忘れてた。人の気持ちを察する大変さを!今までは、いざとなれば触れればよかったからな」と、脱・魔法使いとしての苦悩を吐露します。

 柘植が魔法使いになったことが判明するのは10月12日頃(第3話)、脱・魔法使いとなったのが11月9日頃(第9話)です(日付については諸説あるので、自分で確認して判断したものを採用しています)。多少前後すると思いますが、この辺りは日付の流れがしっかりしているので(少なくとも第11話よりは……)大体あっていると思います。ということは1ヶ月くらいの間、柘植は魔法使いだったことになります。その短さでも、人の心を読める能力に依存してしまい、元々人間として培っていた『人の気持ちを察する大変さ』を忘れてしまったということになります。『触れると人の心が読める』能力の恐ろしさがここで明らかになります。

「安達!俺が何を伝えたいかわかるか?」と柘植が真剣に訊くと、「ええと、魔法の力を、大切に……」と、安達は応えてしまいます。

 『魔法の力を封印』という予告を見ていたこともあるかもしれませんが、私はこの安達の答えに違和感を覚えました。『心を読むって手もあるんだし、なんとか、なるか』これは第2話での安達のモノローグですが、普通の人にそんな能力はありませんし、安達もいずれ脱・魔法使いし、能力を失うはずなのです。私の想像以上に、魔法は、安達の判断力を蝕んでおり、安達を依存させていました。

 柘植は、いずれ消える魔法の力に依存しすぎている安達に、魔法に頼りすぎるなと忠告します。柘植の忠告を受け、安達も思い直します。魔法の力に頼りすぎていたことを反省します。

 第10話の感想でも書きましたが、安達は本当に良い親友を持っていると思います。悪いところを忠告してくれる友人を持つ安達は幸せだなと思います。柘植が安達の親友で本当に良かったです。

ワールドワイドハグ

 朝、会社に着き、エレベーターに一人乗って、安達は決意を新たにします。自分の両手のひらを胸の前で広げて見て、【なるべく誰にも触れずに】両手を握り、【心を読まないで、自分の力で】と気を引き締めています。

 会社のあるフロアにエレベーターが到着し、ドアが開き、安達が降ります。いつも通りに安達がオフィスのある右側に進むと、「安達!」という黒沢の声が反対側から聞こえます。安達が後ろを振り向くと、黒沢が勢いよく駆け寄ってきていて、全力でハグしてきます。物理的フライング黒沢ちょっとー!リアルタイム実況している時もここはツッコミました。

 手をつなぐのは慎重なのに、感極まるとすぐハグするのは一体何なんですかね。ハグのほうが勇気が要ると思うのですが、私の感覚がおかしいのでしょうか。そこがまた黒沢の愛らしいところなのですけども。

 黒沢と一緒にいた六角が黒沢の様子を見て少したじろいでいます。「あ……あっ……」と少し苦しそうな安達が見えたところでオープニングへ突入します。

 オープニングが終わると、六角が怪訝な表情で、安達をハグし続ける黒沢を見ていました。黒沢には六角が見えませんが、安達には六角のその表情が見えるので、六角が見ていることを黒沢にアピールして、ハグし続ける黒沢の背中を叩いてハグをやめるよう促しますが、感極まっているのか、黒沢はなかなかやめようとしません。

 六角が気持ちを切り替えたのか、それとも困っている安達を助けるためなのか、黒沢に気づかれたかったのか、気配リスト発動したのか、真相はちょっとわかりませんが、笑顔で「黒沢さん喜び方ワールドワイドっすね!」と言って黒沢に駆け寄ります。安達が状況がわからず驚くと、ようやく黒沢がハグの手を緩め安達の両腕を手で支えるように持ち、「コンペ、一次通ったって!」と喜びの理由を説明します。安達は驚きます。黒沢が「企画開発部のやつが話してた!」と嬉しそうに話すと、安達はようやく状況を理解できたように驚きます。黒沢が安達を大絶賛します。安達は事態の凄さが凄すぎて、まだ信じられない様子です。

 2人で喜んでいると、二次審査のプレゼンについて、六角が安達に近づいて忠告します。安達の疑問に対して六角が頷き、企画開発部の寺島部長の怖さを教えてくれます。案の定、安達が怖がりますが、それを宥めるように六角が「まぁでも、ビビってても仕方ないんで」と言った後、拳を安達に突き出し「当たって砕けろ精神で!」と言いますが、安達はビビらせてきた六角に文句を言いつつ、失敗を恐れているようでした。すると黒沢が安達を見て「今夜から特訓だ!」と告げます。安達が驚くと、黒沢は笑みを浮かべ、両眉を持ち上げます。とても楽しそうです。まるでこれからの安達と2人きりの特訓を心底楽しみにしている様子です。安達のために尽くすことが本当に好きなんだなと思います。

コンペの特訓/デートを楽しむために

 場面は会社の事務所で、安達は黒沢と2人で話しています。どうやら黒沢先生が安達にプレゼンの指導中のようです。黒沢先生の「プレゼンまでの一週間、たっぷり特訓しよう」という意気込みに安達は微笑みつつ、「悪いな」と謝ると、黒沢が微笑みを安達に向けます。「黒沢も疲れてるのに」と安達がいうと、「全然?安達のコンペが審査に通れば俺も嬉しいし。それにこの後のお楽しみのためだからさ」といいつつ安達と目が合うと黒沢の眉が凛々しく上がります。本当に、眉の演技が生き生きとしています。

 「最高の初デート、初めてのクリスマス、楽しい事しか待ってないから何にも苦じゃない♪(笑)」安達は周りに誰もいないことを確認して「またそんな事平気で」と言うと、黒沢が「ん?」と聞いてきます。「いや、俺も頑張るわ。……デ、デートを楽しむために……」と安達が恥ずかしそうに言うと、黒沢は安達が見ていないところでニヤッと笑った後すぐ顔を素に戻して「ん、何?もう一回言って」「いま絶対聞こえてたろ」人差し指を立てて「(笑)もう一回言って」「やだって」「もう一回(笑)」「やーだー(笑)」片手を立てて(この手がまた美しいです)「お願い(笑)」「(笑)」このやり取りが本当に可愛いです。最初は真面目に話していますが、徐々にラブラブカップルの体(てい)になっていきます。安達も黒沢も愛おしいです。

 【このコンペ、絶対後悔したくない】【魔法は使わず、自分の力で】黒沢に特訓に付き合ってもらいながら、安達は着実にプレゼンの力を付けていきます。このモノローグのときに映るコンペの特訓の様子も面白いです。黒沢が澄ました感じで管理者になりきっているのとか、指導している様子がこのドラマでは初めて見るものばかりで、なかなか目がうるおいます。

不慮の事故

 いよいよコンペ当日です。安達は家のカレンダーの21日に丸をして、「よし」と気合を入れます。

 会社に来ると、黒沢が日帰り出張前にお弁当を渡すために会社の前で安達を待っていました。グッと片手を握って見せる黒沢に、安達も片手を握って返し、互いの行き先に向かいます。

 エレベーター前に来ると、何と、怖いと噂の寺島部長がやってきました。たまたまエレベーターが混んでおり、安達の隣に寺島部長が来てしまいます。当然、寺島部長の企画に対する文句の心の声が聞こえてしまいます。安達は何とか離れようとしますが、満員のエレベーターでは身動きが取れず、最後まで心の声を聞いてしまいます。不慮の事故としか言いようがありません……が、エレベーターが混んでいることと寺島部長に密着してしまいそうなことは予想できたような気がします。……エレベーターを1回見送る時間が惜しかったのでしょうか。何にせよ、後の祭りです。

「自分を信じて」とノリで書かれたお弁当

 昼休み、先程黒沢から預かったお弁当を安達が開くと、そこには安達の「好物ばっか」のおかずが入っていました。上の段をどかすと、下の段には「自分を信じて」というノリ文字が載せられたご飯は詰められていました。安達を朝から会社で待つ前にお弁当を作るために一体黒沢は何時に起きたのでしょう。Twitterの他の方の情報によるとノリの文字はかなり難しいらしいです。前日から準備していたにしても、愛情が深いなぁと思いました。

心の声で得た情報をコンペで利用した悔恨

 コンペの場面に変わり、安達が緊張した面持ちで管理者の前に立って挨拶し、発表を始めます。安達が発表を進めようとすると、例の寺島部長が「なんだか地味ね」といきなり野次を入れて、出鼻をくじかれます。寺島部長から何故クリップにしたかという質問に辿々しいながらも安達は答えようとしますが、「もう結構よ。お疲れ様」と言われてしまいます。せっかく黒沢に1週間の特訓をしてもらったにも関わらず、水の泡になってしまいそうになります。これまでの特訓を台無しにしたくなかった安達は、苦渋の決断で、先ほどエレベーターで聞いた寺島部長の言葉を使って、彼女の気を引いてしまいます。これまでせっかく魔法の力に頼らず自力で頑張ろうとしていたのに、結果的に魔法の力に頼ってしまいます。

 コンペが終わり、魔法の力に頼ってズルをしてしまったと後悔しながらエレベーターを降りると、そこには日帰り出張から帰ってきた黒沢がいました。黒沢が帰ろうと言うと安達が落ち込んでいる様子に気づいたようですが、安達は誤魔化して帰ろうと言います。

 すると次のエレベーターで寺島部長がやってきて安達が呼ばれます。この場で寺島部長に安達と黒沢の仲の良さを知られます。寺島部長直々に、「安達くん、残念だけど、あなたの企画、最終には残らなかった」「でも、文具への考えは、悪くなかったわ」と告げて去っていきます。

 黒沢により、寺島部長が人を褒めることがかなりのレアだと言うことが判明し、安達はすごいと黒沢に褒められます。しかし安達は、あくまで【すごいのは魔法の力】と考え、遅くまで特訓に付き合ってもらったにもかかわらず、最終審査まで残れなかったことを黒沢に謝ります。黒沢は、ここは喜ぶところだと言いますが、安達は魔法を使っている罪悪感から素直に喜ぶことができません。その様子が黒沢も少し気になっているようですが、【頑張ってれば、ちゃんと伝わるんだな。ちょっとは自信ついたかな。安達が、『俺なんか』って思わず、笑ってくれてれば、それで】と、これまで応援していた本当の気持ちを考えているようでした。安達は【こんなことなら潔く引き下がったほうがマシだった】と、応援してくれた黒沢の言葉を聞いて、更に後悔しているようでした。

彫刻に浮かぶ漆黒の瞳

 場面は黒沢の家に移ります。とても豪華な料理がテーブルの上に用意されています。【頑張ろうって決めたのに、ズルまでして。結果、自分の中身が空っぽってことに気づいただけで】安達は心ここにあらずで、コンペでのことをずっと後悔していました。黒沢がワインを注いで「やりすぎだったかな、キャンドルとか」というと「いや、いいんじゃない」と安達が答えます。黒沢がワインを注ぎ終えて「よし!じゃあ、冷めないうちに食べよっ」といいながら椅子に座り、乾杯してワインを一口飲みます。

 【元気ないな、安達】という黒沢の心の声が響きます。黒沢の足が安達の足と当たっていて、彼の心の声が聞こえていました。【デートの話、してみようかな。誰にも邪魔されず、花火が見える取って置きの場所があるって。アントンビルの屋上、知り合いに頼んで貸してもらえるんだーって♪いや、サプライズ感がなくなるか……】その心の声に【ごめん……もうサプライズ感なくなった……】と安達がモノローグで答えます。当然黒沢には聞こえないので、健気に安達を元気づける言葉を探します。【それとも冗談言ってみるか!ご褒美、ちょっともらえるかな、とか】と考えている黒沢に対して、「ご褒美って、何すればいい?」と、安達はまた反応してしまいます。黒沢は驚き、「俺また声出てた?」「あ、いや……」安達は心の声と普通の声をまた間違えて捉えてしまっているようです。どんどん心の声と普通の声の区別がつかなくなっているように感じます。

 安達は、追い詰められていきます。【こんな魔法さえ、なくなれば】黒沢は安達が心の声を聞いたとは思っておらず、自分が失言したと思い、しまったという表情です。【悩むこともなくなるのかな】「黒沢」「ん?」ここで安達の目線が黒沢の顔よりやや下で、「俺、よくわかんないから、その……」辿々しい安達の言葉に黒沢は微笑んで「うん」と返事をします。【魔法なんて、なくしてしまえば】「お……教えてくれよ」という安達の声に、黒沢が真剣な表情で見つめ、「わかった」と答え、頷きます。黒沢は安達のもとに歩きます。安達は目をパチパチさせてからしっかり閉じ、黒沢を待ちます。黒沢は安達の左頬に右手を軽く添えて、安達の顔を見つめながら、【何だよ急に。可愛いじゃん。けど、……ちょっと安達らしくないな】と、安達の様子をうかがっていると、安達が目を見開き、黒沢を見つめます。右手で安達の左頬を支えて【きっと、勇気を振り絞ってくれたんだよな】安達の右肩に左手を乗せて【勇気なんかじゃない】【その優しい気持ち、すごく嬉しい】安達は黒沢の目を見ずに【優しさなんかじゃない。黒沢の気持ち、全部知ってて】黒沢は目を閉じて安達に顔を近づけます。【今利用しようとしてるんだ!】良心の呵責に耐えきれず、安達は目を閉じて黒沢を押し出してしまいます。「ご、ごめん!」安達は謝りながら黒沢にかけよります。黒沢は大丈夫そうに笑いますが、心の声で【や、やっぱり、無理させちゃった……?】というと、「違う、違うんだ!」と安達が答えます。

 ちょっとここで一区切りしてみます。これまで安達目線で書いてきましたが、黒沢視点ではこの部分がどうなるかを考えてみます。

黒沢視点ではどうなっているか?

 安達のモノローグや心の声が聞こえている描写を省略または黒沢視点に書き直して書いてみます。長いです。

 場面は黒沢の家に移ります。とても豪華な料理がテーブルの上に用意されています。安達は心ここにあらずでした。黒沢がワインを注いで「やりすぎだったかな、キャンドルとか」というと「いや、いいんじゃない」と安達が答えます。黒沢がワインを注ぎ終えて「よし!じゃあ、冷めないうちに食べよっ」といいながら椅子に座り、乾杯してワインを一口飲みます。

 【元気ないな、安達】という黒沢の心の声が響きます。【デートの話、してみようかな。誰にも邪魔されず、花火が見える取って置きの場所があるって。アントンビルの屋上、知り合いに頼んで貸してもらえるんだーって♪いや、サプライズ感がなくなるか……】黒沢は、健気に安達を元気づける言葉を探します。【それとも冗談言ってみるか!ご褒美、ちょっともらえるかな、とか】と考えている黒沢に対して、「ご褒美って、何すればいい?」と、安達が反応します。黒沢は驚き、「俺また声出てた?」「あ、いや……」黒沢は自分が失言したと思い、しまったという表情です。

 「黒沢」「ん?」ここで安達の目線が黒沢の顔よりやや下で、「俺、よくわかんないから、その……」辿々しい安達の言葉に黒沢は微笑んで「うん」と返事をします。「お……教えてくれよ」という安達の声に、黒沢が真剣な表情で見つめ、「わかった」と答え、頷きます。黒沢は安達のもとに歩きます。安達は目をパチパチさせてから閉じ、黒沢を待ちます。黒沢は安達の左頬に右手を軽く添えて、安達の顔を見つめながら、【何だよ急に。可愛いじゃん。けど、……ちょっと安達らしくないな】と、安達の様子をうかがっていると、安達が目を見開き、黒沢を見つめます。右手で安達の左頬を支えて【きっと、勇気を振り絞ってくれたんだよな】安達の右肩に左手を乗せて【その優しい気持ち、すごく嬉しい】安達は黒沢の目を見ずに、黒沢は目を閉じて安達に顔を近づけます。安達は目を閉じて黒沢を押し出してしまいます。「ご、ごめん!」安達は謝りながら黒沢にかけよります。黒沢は大丈夫そうに笑いますが、心の声で【や、やっぱり、無理させちゃった……?】というと、「違う、違うんだ!」と安達が答えます。

 このように書くととてもわかり易いのですが、安達に押し出されるまで、黒沢ずっとごきげんなんですよね。安達があの寺島部長にも認められたことをずっと喜んでいるのか、お疲れ様会をやる気満々でいるんですよね。
 安達に押し出されるまで何故あんなにごきげんなのかが最初わからなかったのですが、とあるツイートを見かけて、黒沢視点で考え直してみると納得しました。(わからなかったの私だけかもしれませんが……)

 ちょっと考察を入れて話が前後してしまいましたが、次からが告白です。

天使から流れ落ちる涙

 黒沢が驚くと、「俺、……黒沢に言わなきゃいけないことがある」と安達が訴えます。黒沢は真剣な表情で安達を見上げます。「俺、……触った人の心が読めるんだ」安達の、魔法が使える告白です。黒沢は目を泳がせています。いろいろ思い出しているのか、安達がこんなにパニックになる原因を考えているのでしょうか。

 「この前の誕生日から、こうなって!童貞だと魔法使いになるって言うだろ。あれ本当で!サプライズの話、全部聞こえてた!アントンビルの屋上だよな?さっきも、俺らしくないって心配してくれて!……ごめん、……今まで黙ってて……最低だよな……」黒沢は安達を見つめます。「でも、嘘じゃなくて!」「安達」黒沢が立ち上がり「落ち着いて」安達の肩を持って、落ち着かせるために椅子に座らせます。

 安達が第9話で『柘植は俺と同じで、すぐキャパオーバーに』なると言っていたことを黒沢は覚えていたのでしょう。キャパオーバー状態の安達を落ち着かせようとします。

 心配そうな表情で「嘘なんて思ってないよ」といいながら安達の左手首を右手で掴みます。「安達がこんなに真剣に話してるんだ。嘘なんてない」と黒沢は安達の言葉を受け入れているように見えます。しかし安達は視線をそらし、黒沢の腕を外させます。

 ここで黒沢の腕を外したことは、これ以上安達が黒沢の心の声を聞かないため、だったのでしょう。安達がこれから言うことに対して、黒沢がどう思うか。どう感じるか。それが怖かったから腕を外したのではないか、と思いました。

 「それだけじゃないんだ」黒沢が驚くと、「俺、……今、魔法の力がなくなるのが怖い」黒沢の表情が映ります。「魔法なしじゃ」ここで黒沢の顔を見ます。「……黒沢とうまくいかないかもって」黒沢の真剣な表情が映ります。「こんなのおかしいだろ!?……こんな、一緒にいる資格ないだろ!……もう、どうしたらいいかわかんないんだ……」

 目をうるませて訴える安達に、黒沢は「……俺は、……安達が苦しくない、選択をしてほしい」と言います。安達は黒沢を見ます。黒沢は笑顔で、「安達には笑っててほしい」と伝えます。黒沢は跪いて、「俺達」安達の顔が映り、黒沢に戻り「……もうここでやめておこうか」あくまで笑顔で言います。安達は、そこまでずっと目に貯めていた涙を、ぽろっと流して、強く頷きます。黒沢は、涙をこらえ、強引に笑顔を作り、「わかった」と答えます。安達は謝り、黒沢家を出て、恐らく家の前でかばんを背負って立っています。

 この告白後のシーンは、見ているとこちらも安達のやるせなさに辛くなってきますが、それと同時に2人の素晴らしい演技に魅了されます。見入ってしまいました。

安達と黒沢のやり取りの齟齬について

 安達の告白を整理します。
・30歳まで童貞で魔法使いになってしまった。
 例1)アントンビルの屋上のサプライズ
 例2)黒沢が安達を心配してくれたことに気づく。
・黒沢とうまくいかなくなるかもしれないから、魔法を失うのが怖い。
 言い換えると、『魔法がないと恋人とうまく付き合える自信がない』というのが人としておかしい。元から自分になかった能力を前提として恋人と付き合うということがおかしい。
 ⇢だから黒沢と一緒にいる資格がない。
・どうしたらいいのかわからない、と言うことで判断を黒沢に委ねている。

 あと、黒沢視点で考えてみるとわかりますが、安達はコンペで魔法を使ってズルをしてしまったことを黒沢には伝えていません。安達がこれを伝えると『特訓に付き合ってくれた黒沢のために』ズルをしたと捉えられて黒沢を責めることになりそうだと判断したからなのか、理由はわかりません。魔法が使えることと、サプライズを台無しにしたことと、黒沢が安達のことを心配してくれたことが魔法でわかったことしか黒沢に伝えていないんです。
 また、黒沢の気持ちを利用して脱・魔法使いするために『ご褒美』をあげようとしたこと、そのズルさ、というと印象が悪いですが、安達の言葉になぞらえてズルさといいます。魔法を使ってずるいことをしていたことを言わずに、魔法がなくなることを怖いと言っているんですよね。

 黒沢としては、安達が魔法を使えること事態は受け入れているので、魔法がなくなることが怖い安達に「やめておこうか」という提案くらいしかできなかったのではないか、と思いました。

 それで、安達視点に戻ると、安達はあくまで黒沢に判断を委ねていましたが、黒沢から「苦しくない判断をしてほしい」と言われ、その後に「やめておこうか」と提案されています。安達は心を閉ざしてしまっていたことと、「(黒沢と)一緒にいる資格ない」と思っていることから「やめて」おく判断をしてしまったと推察します。

 こうして考えると、安達が心を開いて動くしか、幸せの道が残されていない気がします。第10話で言っていたように、「大切な人には、ちゃんと気持ちを伝えなきゃ」ということを思い出してほしいです。

第12話の展開予想

 今回は第8話並に感想と考察が長くなってしまったため、第12話の展開予想は別に記事を書きました。いろいろ予想するのが楽しく書いたものなので、興味のある方はどうぞ。

 ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?