娘から母へ、ハンドクリームを。
母が二泊でうちに来ていました。
仕事を辞めてから、軒並み家族も体調不良で春の寒暖差の影響をバシバシに受けていました。
その最中にはるばる静岡からやってきた母も、やはり不調なのでした。
東京に来て、田舎の車生活と年齢の影響で如何に母の足腰が弱っているかを、本人もわたしもよくよく知りました。
61の母はわたしの手を見て、綺麗な手だねと言いました。
それはわたしが二十歳の頃から、何度も聞いてきた台詞です。
飲食店で働いてたからか、最近はわたしの手も荒れてきています。
母の言葉には、純粋なわたしへの思いだけでなく、少し別の気持ちも感じます。グッと何かが、色々な何かたちが込み上げることもあります。
二十歳より前から、気がついた頃には、手にクリームを塗るのを意識してます。目につくからです。
1日に何度もクリームを塗ることはありませんが、朝夕鏡を見るタイミングや、電車に乗ったときは、ハンドクリームを塗っています。荒れた手を見て、この手が家事をしたり子どもを育てているのよ、なんて思えるような自分でもないわけです。ハンドクリームのCMは、手荒れ=母の勲章という決め付けを感じて、好きじゃありません。
今日は母が帰るので、お土産にハンドクリームをあげることにしました。
でもあげなくてもいいんだろうな、ともおもうんです。
塗る時間がどうとか、そんな暇はないと、そう母はおもう人なんだと思うからです。
わたしはハンドクリームを手に塗るのが好きだから、塗るんです。目につくところを自愛したいだけで。
そうでないから母は塗らないんだと、ただそれだけのことだと本当はおもってます。
でも娘というわたしは、母にハンドクリームを持たせて帰らせてやりたいと思っていて、鞄に忍ばせていてくれたらいいなと願ってます。
あなたの娘の手は、わたしの本当の手よりも、綺麗に見えているのだとおもう。だからきっと減ることのないハンドクリームでも、贈り物になるでしょう。
わたしの言葉に代えて。