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[理系による「映画」考察] レベッカ(1940) ➡同一女優の"娘から大人への変化"を演出するのに成功した映画
監督がヒッチコックなので、サスペンス・スリル、な観点の考察は多々されていると思うので、異なる視点で。
2時間のストーリーの中で、ヒロインである女優の顔つきを、こうも変化させることができるのか!、と唸った作品でした。
前半では、ヒロインの
・綺麗だけど垢ぬけない
・王子様と出会い、選ばれてしまった夢心地
・ドレスが全く似合わず、テニス用のポロシャツ姿が一番似合っている
な、引っ込み思案の田舎娘感満載が見事に演出されていました。
極めつけは、鼻をかませる演出をしており、綺麗な女優さんが鼻をかむ映画なんて見たことないです。
が、後半は、不思議なことに、
・ドレスが多少似合うようになる
・逆境に立ち向かうことに不自然さがなくなる
・夫を心配する妻役にこなれてくる
ようになり、娘から大人な顔つきに変化します。
後半の演技は、ハリウッドで主演を勝ち取れる気の強い女優さんならできそうなのですが、不思議なのは前半で、女優さんの才能だけでその雰囲気をだせるとも思えず(引っ込み思案の田舎娘を演じれる女優さんなんているのかな…?)、Wikiを読んでみると下記との記載で納得しました。
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オリヴィエ(旦那役)としては、当時の恋人ヴィヴィアン・リーとの共演を望んでいたため、撮影中ジョーン・フォンテイン(ヒロイン)には冷たい態度をとった。オリヴィエの態度にフォンテインが恐れを抱いたのに気付いたヒッチコックは、スタジオにいる全員に対して、フォンテインに対してつらく当たるように伝えた。これによって、フォンテインから恥ずかしがりで打ち解けられないという演技を引き出したのであった。
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かつて俳優をやられていた会社の先輩に、
「役者さんって、本人に経験のない状況・感情を演じる必要がある場合、どうやって演じるんですか?」
と聞いたところ、
「それは、監督の演出と俳優への演技指導と、俳優の才能と努力」
との回答が返ってきたのが印象的で、"監督の演出"が具体的に何をするのかよくわからなかったのですが、演技を指導するだけでなく、その場の状況からくる感情・条件を利用して、俳優の演技を引き出すのも演出家の仕事なのか!、と映画作製の実際は、生モノ的な要素も大きいんだな~、と勉強になった作品でした。