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[理系による「映画」考察] 女相続人(1949) ➡最後で帳消しにしたとしても、女性にとってあんな屈辱的なストーリの映画をよく撮れたな...、と感心する映画
財産目的に結婚を言い寄ってきた男に対する復讐劇、なストーリーに見えますが、そんな単純なものではなく、実は"女性"という存在に対して、深く鋭くえぐっている映画です。
主人公の女性はそれなりに美人なので、分かりにくいのですが、
実際の設定は、
・特段、異性から好まれる容姿ではない
・容姿をカバーできるほど頭が良いわけでも、社交的でもない
・華やかさもなく、とても地味で、強いて特徴があるといえば、刺繍ができるぐらい
といったところです。
よってその時代の"女性像"からすると、なんの取柄もない、という致命的な状況にある、という設定なのですが、一点際立った特徴があり、それは、大きな遺産がある、ということです。
つまり、"お金持ち"という特徴以外に異性を引き付ける要素が何もない女性の物語です。
さらに、主人公は、自身が上記であることに気づいておらず、
失恋後、父親から直接的に上記を言われ、かつ、その特徴のため父親さえからも愛されていなかったことに気付く、
つまり、
父親を含めたすべての男性に愛される要素が自身にないことを主人公自身に認識させる残酷過ぎるシーンがある、という、女性にとってこれ以上の屈辱はないストーリーの映画なのです。
このシーンの後、主人公は覚醒し、おそろ恐ろしい女性に変貌し、父親にも、言い寄ってきた男性にも、復讐を果たすのですが、その復讐で帳消しになるとはいえ、よくこんな残酷な映画を撮れるな…、と思いつつ、そういう切り口で"女性"を描くっていう手法もあるのか~、感心した次第であります。
最後に一点分からないところがあり、終盤、言い寄ってきた男性に主人公がルビーを渡すシーンにて、そのルビーをアップで見せる演出があるのですが、その演出の意図が理解できないのです。予想としては、前半言い寄ってきた男性が主人公に炭入れ(?)をプレゼントするシーンがあり、その対比かなとも思ったですが、ストーリー自体がかなり練られているため、無意味な演出をするとも思えず、いまいちモヤモヤしているゴリゴリ理系でした~。