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映画

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[映画]記事を年代順にまとめたもの
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#映画好き

[理系による「映画」考察] ローマの休日(1953) ➡罪がないお洒落映画

自身の父は"アルプス少女ハイジ"が好きだそうです。理由は聞いたところ"罪がないから"とのことですが、この、罪がない、の言葉自体が自身は好きで、映画や漫画を紹介するときに良く使います。 ここで言う、罪がない、とは、ダークサイドなところがない・心安らかに見れる・子供とも安心して見れる、という意味です。 と、前置きになりましたが、この映画は、全く罪がない映画です。 ロダン "地獄の門" ↓ 映画 "地獄門" と地獄・地獄と連続して"罪がある"モノが続いていたので、いい加減、罪

[理系による「映画」考察] 地獄門(1953) ➡人間が生きることは、それほど浮世(憂き世)ですかね...

第7回カンヌ国際映画祭で最高賞であるグランプリ、第27回アカデミー賞で名誉賞と衣裳デザイン賞を受賞した作品です。 シェイクスピアの悲劇っぽい、 あ~あ、なんでこうなちゃうんだろう… な、誰も幸せにならない作品です。 が、世界で賞を取っているだけあり、演出はとても分かりやすく、とても楽しめる作品です。 また、主演女優の"京 マチ子"の現世を離れる覚悟が決まった時の演技も、なんとも幽玄で、"能"を感じ、とても良かったです。 が、ロダンの"地獄の門"に関する考察を書いた直後

[理系による「映画」考察] 真昼の決闘(1952) ➡男前の仕上がりっぷりが分かる映画

若いころ色男と言われた男前が、50代になるとどのように仕上がるか分かる映画です。 具体的には主演のゲイリー・クーパーのことを言っていますが、彼が世に知られたのは下記の"モロッコ"です。"モロッコ"は、個人的にはマレーネ・ディートリヒが妖艶過ぎて、ゲイリー・クーパーの何が良いのかさっぱり分からない映画でしたが、実際はマレーネ・ディートリヒの相手を務めるほどの男前だったようです(191cmですし…)。 そんな色男が50代になるとどうなるか?、が分かるのがこの"真昼の決闘"です

[理系による「映画」考察] 首(2023) ➡死も衆道もお笑いにする北野武

北野初期作品のようなアート性はあまりないですが、2時間があっという間に過ぎたお笑いエンターテインメント映画でした。 全体的に絵がちょっと安っぽかったのが残念でしたが、脚本はとっても良かったので、その内容を中心に考察しますね。 まず、表題の"お笑い"に関して説明する必要があり、記載します。 人が笑う状況の1つとして分かりやすいのが、緊張と緩和、になります。もう少し具体的に説明すると、緊張状態において急激な緩和が起こると人は笑います。例えば、とても重い空気の会議の場で偉い人が

[理系による「映画」考察] ゴジラ-1.0(2023) ➡"シン・ゴジラ"の後ゴジラを作ったことに賛辞を贈る

冒頭からカッコよく、2時間があっという間に過ぎる、とても見やすい映画でしたよ。 で、自身が賞賛したいのは、映画の内容よりも、"シン・ゴジラ"の後にゴジラを映画として作った山崎貴監督の勇気、になります。 "シン・ゴジラ"と比較されるのはもう明白で、庵野監督と比較されると思うと自身だったら絶対にやりたくないです…。それでもやり切った山崎貴監督に賛辞を贈りたいのですが、さらに、ヒットさせるために庵野さんに試写会でみてもらって、その後の対談をyoutubeで流すということまでやり

[理系による「映画」考察] 欲望という名の電車(1951) ➡女優を極めると大妖怪に...

1951年のアカデミー賞は"巴里のアメリカ人"で、それを見ようとしていると、そんなんいいからヴィヴィアン・リーを見るべし、と妻から勧められ、2度目のアカデミー主演女優賞作品ということで、女優として、"風と共に去りぬ"、以上に何かありうるのかしら?、と思ってみていたのですが、 妖怪っぷりにさらに磨きがかかってるやん!!! しかも、クラーク・ゲーブル級の相手役でなくても物語をエンタメにできるまでレベルアップしており、マーロン・ブランドが妖怪に立ち向かう勇者にしか見えない始末(

[理系による「映画」考察] 陽のあたる場所(1951) ➡ストーリー自体は悪だが、演出に宗教的な要素を絡ませているので、結果、感情がうまく処理できず、なんとも後味が悪い…

なんとも後味が悪い映画で、これほど後味の悪い映画はデヴィッド・フィンチャーの"セブン"以来でした。 が、"セブン"もそうでしたが、後味が悪い分、印象に強く残ってしまい、一生忘れることができなくなりそうな映画です。 ざっくりした流れは、下記となります。 1. 社内恋愛は禁止であることを事前に認識しているはずなのに、平然とそのルールを破り、妊娠させる。 2. 出世と、身分の高い・より美しい女性との結婚のため、妊娠した女性が邪魔になる。 3. その女性を殺そうとするも、事故か他

[理系による「映画」考察] 劇場版 魔法少女まどか☆マギカ [新編] 叛逆の物語(2013) ➡女の情念系映画、ここに極まる!!!

この映画は凄いです!!! "女"というものを描いた作品としては、"黒蘭の女"は優に超え、"風と共に去りぬ"級の世界的な名作として歴史に名を刻んでもよい!と思うのですが、悔しいかな、アニメ教養がある人以外ではいまいち理解されないでしょう…。かつ、男性には異常に評価されると思いますが、女性にはそれほど評価されない気がしています(この点で"風と共に去りぬ"は超えない)。 具体的に何が凄いかというと、男なしで女の情念を描き切った!、ところなのですが順序立てて説明します。 魔法少

[理系による「映画」考察] 羅生門(1950) ➡キュビズムで映画を作り上げる芸術家、黒澤明

黒澤明が世界的に評価された初めての映画です。 で、黒澤明の映画を見て思うのですが、黒澤明は、 ・技術進化により演劇を映像表現にする な位置付けで映画を作っている気がせず、 ・絵画を映像表現に落とし込む な意図で映画を撮っている気がするのですよね。 なぜなら、黒澤映画をどのタイミングで一時停止しても、 あ、黒澤明だ! と分かってしまう絵になってるんですよね。 で、本題の"羅生門"ですが、個別の絵も濃いですが、それよりもここで語りたいのは、 映画をキュビズム的に作っている、

[理系による「映画」考察] オール・ザ・キングスメン(1949) ➡リスクを取って政治を批判するという行為を始めて映画化したことが評価されたのかな...

権力に固執することによる悲劇的な最後、を演出した映画になります。 ただ、ストーリーの演出に無理がある気が…。具体的は、"勝ち方さ"、というセリフと共にダークサイドに落ちる瞬間で、それが急すぎて、展開が早すぎない?、とツッコミを入れました。 権力に固執することによる悲劇的な最後、をエンタメ化しているので、ダークサイドに落ちるくだりは端折っても映画的には楽しめるのですが、なぜサニーサイドだった人間がダークサイドに落ちたかの背景説明をもう少しすると、映画としても深みがでて良かっ

[理系による「映画」考察] 女相続人(1949) ➡最後で帳消しにしたとしても、女性にとってあんな屈辱的なストーリの映画をよく撮れたな...、と感心する映画

財産目的に結婚を言い寄ってきた男に対する復讐劇、なストーリーに見えますが、そんな単純なものではなく、実は"女性"という存在に対して、深く鋭くえぐっている映画です。 主人公の女性はそれなりに美人なので、分かりにくいのですが、 実際の設定は、 ・特段、異性から好まれる容姿ではない ・容姿をカバーできるほど頭が良いわけでも、社交的でもない ・華やかさもなく、とても地味で、強いて特徴があるといえば、刺繍ができるぐらい といったところです。 よってその時代の"女性像"からすると、な

[理系による「映画」考察] ハムレット(1948) ➡映像化が非常に困難なシェイクスピアの戯曲を見事に映像に落とし込んだ映画

シェイクスピアの戯曲を映像化するのは至難の業です。理由は、あらゆる時代・国に適応できる人間の本質が描かれており、映像化するには演技・脚本・美術とも緻密なところまでモーレツに作り上げないと、そのメッセージを伝えることができず、また、エンタメとしても成功しないからです。 例えばシェイクスピアの"リア王"を映像化した黒澤明の"乱"を観れば分かりやすいのですが、役者の選定やその演技、また美術まで、ものすごいお金をかけて作りこんでます。 では、シェイクスピアは舞台ではよくやってるが

[理系による「映画」考察] 紳士協定(1948) ➡人種差別という難しいテーマをエンタメとして成立させつつ、大衆にカウンターを入れた映画

差別する側への嫌悪だけでなく、それを気付いているが、無関心を装う・大勢側に沿う・表面的には差別を嫌うことを発言するも本質的にはそうではない、大衆に向けたカウンターがメッセージの映画です。 人が敢えて見たくない・聞きたくないテーマを、料金を取るエンタメ映画として成立させるには、かなり難しいモノであり、自身だったらどうするかな?、と自問自答ですが、何もよいアイディアが思い浮かびませんでした。 そもそも、日本人が人種差別的なことをする・される機会が少ないため(基本的には単一民族

[理系による「映画」考察] 我等の生涯の最良の年(1946) ➡"戦争からの帰任"とはどういうことなのかが非常によくわかる映画

1946年の映画なので、終戦直後の映画です。やっと戦争が終わった!、な時期だったと思われるので、題名からもそれなりに明るい映画かな?、と思いましたが、実際には結構社会派の要素を入れており、でも最後はハッピーエンドで、その辺のバランスがとてもうまく、とても良い映画でした。 具体的には帰還兵3人の物語なのですが、 自宅に帰ること自体が、"戦場に行く気分"、とセリフにあるように、戦闘員として戦争、という状態に慣れてしまうと、日常の生活、はあまりにも違う状態で、なかなかそれに馴染め