2023年4月の記事一覧
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[理系による「映画」考察] 赤西蛎太(1936) ➡お笑いの"天丼"(ボケを繰り返すこと)と"間"を多用する落語的傑作映画
よくある時代劇的なやつに歌舞伎っぽさを加えた映画かな、とあまり期待せず観たのですが、全く異なり、"知的に人を笑わせる"という分野における傑作でした! まず、全体的なバックグラウンドは落語にあると思います。按摩の安甲の演技自体はそのまま落語家ですし、江戸時代を舞台とした人間味あふれる創作ストーリの中にお笑いを混ぜてくるところが、落語の映像化を試みた作品とも言えます。で、実際、落語で笑ってしまうのと同じ笑い方をしてします。ここで言う、"落語で笑ってしまう"、とは比較的長いストリ
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[理系による「映画」考察] グランド・ホテル(1932) ➡群像劇多重構築(映像的キュビズム)成功の理由は個別の劇にテーマを与えなかったから
にくい!、うまい!、やられた!、 と唸ってしまうぐらい良く出来た映画です。 ホテルを舞台に、異なる人々のうつろいゆく営みを重ねながら1つの作品として成立させる"群像劇多重構築(映像的キュビズム)"に成功した希代のコメディ作品ですが、論理的な側面だけでなく、"常ではない"という意味での無常感から来る寂しさもちゃんと要素として組み込んでおり、それを意図するために舞台としてホテルを選んだところが、なんともにくいです。 で、表題の"群像劇多重構築(映像的キュビズム)"に関してです