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映画

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[映画]記事を年代順にまとめたもの
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2023年4月の記事一覧

[理系による「映画」考察] 名探偵コナン 黒鉄の魚影(2023) ➡10代カップルが見るのに何から何まで合理的!

小学4年生の娘から見たいとのリクエストを受けて観に行きました。 いつものコナンらしさ+ラブコメに、機動戦士ガンダム、ルパン三世、宇宙戦艦ヤマト、ふしぎの海のナディア、エヴァ、等々が色々入ってますが、なんとなく"ふしぎの海のナディア"を意識されたかなと(と言っても、ほんのちょっとですが)。監督の立川譲さんは81年生まれとのことで、リアルタイムで見ていてもおかしくなく、なんだか懐かしかったですが、細かい点は専門家にお任せします。 自身がこの映画で驚いたのは、観客です。時間帯が

[理系による「映画」考察] ゾラの生涯(1937) ➡体制・大勢への反骨、すなわちパンク

表題を説明する前に、まずは"パンク"の定義をしたいのですが、個人的には下記の3つがあると思います。 ① ファッションとしてのパンク ② 自由を求めた体制・大勢への反骨としてのパンク ③ その後の価値観を全く変えるパンク ①は、セックス・ピストルズのような服装(ファッション)を意味しています。 ②は、文字通りです。 ③は、美術界で言うと、デュシャンの泉、のように、その後の美術の認識を変えるほど破壊力のある価値観の革命、を意味しています。 ちなみに②と③は明確に区別できず、

[理系による「映画」考察] 巨星ジーグフェルド(1937) ➡紳士という名の色気

豪華な舞台演出の再現が目を引きますが、個人的には、ウィリアム・パウエルの女性を虜にする"男の色気"が気になりました。 "グランド・ホテル"のジョン・バリモアしかり、"或る夜の出来事"のクラーク・ゲーブルしかり、1930年代の映画は、"男の色気"がムンムンする映画が多いのですが、あの色気って何から来るんでしょうね? 必要条件として ・スーツの着こなしがオシャレであること ・髭がセクシーであること ・スタイルが良いこと が考えられますが、一番大事なのは ・紳士(ジェントルマン

[理系による「映画」考察] 赤西蛎太(1936) ➡お笑いの"天丼"(ボケを繰り返すこと)と"間"を多用する落語的傑作映画

よくある時代劇的なやつに歌舞伎っぽさを加えた映画かな、とあまり期待せず観たのですが、全く異なり、"知的に人を笑わせる"という分野における傑作でした! まず、全体的なバックグラウンドは落語にあると思います。按摩の安甲の演技自体はそのまま落語家ですし、江戸時代を舞台とした人間味あふれる創作ストーリの中にお笑いを混ぜてくるところが、落語の映像化を試みた作品とも言えます。で、実際、落語で笑ってしまうのと同じ笑い方をしてします。ここで言う、"落語で笑ってしまう"、とは比較的長いストリ

[理系による「映画」考察] グランド・ホテル(1932) ➡群像劇多重構築(映像的キュビズム)成功の理由は個別の劇にテーマを与えなかったから

にくい!、うまい!、やられた!、 と唸ってしまうぐらい良く出来た映画です。 ホテルを舞台に、異なる人々のうつろいゆく営みを重ねながら1つの作品として成立させる"群像劇多重構築(映像的キュビズム)"に成功した希代のコメディ作品ですが、論理的な側面だけでなく、"常ではない"という意味での無常感から来る寂しさもちゃんと要素として組み込んでおり、それを意図するために舞台としてホテルを選んだところが、なんともにくいです。 で、表題の"群像劇多重構築(映像的キュビズム)"に関してです