竜を飼ってる友達の話


中学校に入ってからMちゃんという友達ができた。

彼女はかなり独特な子で、
「右腕に暗黒竜を飼っている」と言い張っていた。

暗黒竜とは・・・?という疑問は常にあったが、
Mちゃんは個性的な子だな、面白い人なんだなと思って普通に関わっていた。
中学っていろんな子がいるな〜と思っていた。

Mちゃんはたまに腕を強く抑えたり、かと思うとナデナデする。

何してるの?と聞くと決まって「暗黒竜のケアが大変で・・・」と言っていた。
心の中で何を言ってんだろうと思うこともあったし、信じたことなど一度もなかった。

しかし毎日毎日「暗黒竜がさ〜」と自分の竜の話をするので、
こちらも色々と質問をするようになった。
「まず暗黒竜って何?」と聞くと、「ペットだけど」と即答された。

「竜ってペットにできるの?」と聞くと、
「めっちゃ懐く」と顔色ひとつ変えずまた即答してきた。

懐く竜・・・あ、わかった千と千尋のハク的なやつか、なんとなく掴めた気がした。
頭の中には千と千尋のハクが浮かんだ。

「何食べるの?」と聞くと、「バナナ」と言われた。

一瞬でハクのイメージが崩れ、
バナナを食べる竜というカオスなイメージが頭の中をぐるぐる巡った。

「へー、なんで私には見えないの?」と聞くと、「心が汚いからかもしれない」と言われた。
息を吐くようにdisられたのが面白かった。

その日から暗黒竜の話をたくさんするようになった。

「今日は暗黒竜は何してんの?」
「今日は散歩してるから今ここにはいない」
暗黒竜はお散歩もOKらしくたまに不在しているケースもあった。

Mちゃんは3年間ずっと暗黒竜を飼っていると言い続けた。

ある日Mちゃんが少し不機嫌な日があった。

体育の授業で、悔しい思いをしたらしい。
舌打ちをしたり、ものすごい機嫌が悪そうだった。あまりにも不機嫌そうなので、かける言葉にものすごく戸惑ってしまった。

私はMちゃんの側に行って、
とにかく明るく慰めようと思い、やや無理のあるテンションで声をかけた。

私が「Mちゃん残念だったね、暗黒竜も慰めてるかもしれないね」と言うと
Mちゃんは「暗黒竜とか本当はいねえから!!!!!!!!!」と言った。

3年間の竜の歴史に幕が下がった。

END

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