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ダメ・ビールに恩赦を -BrewdogのLOST LAGERキャンペーン-

自分がクラフトビール好きになるきっかけでもあり、未だに影響力ナンバー1のイギリスのビールブランド「BREWDOG」(正確にはスコットランド)。これだけ街中のパブやスーパーマーケットでクラフトビールを頻繁に見かけるけれど、未だイギリスでもクラフトビールの消費量はビール全体の10%以下(日本は1%以下)。クラフトビール文化の旗振り役としては、むしろ議論が大事、賛否両論万歳、炎上上等とばかりに、過激なマーケティングキャンペーンを次々と打ち出しています。

今回の「LOST & FOUND」キャンペーンは、シンプルでど直球。まずは映像をご覧ください。

Brewdogは彼らの看板商品である「PUNK IPA」を筆頭に、世界を牛耳る大量生産の小便ビールに一矢報いるため、ビールの美味しさと楽しさを追求している会社です。ビールには150種類を越える幅広いバラエティがあるのに、世界中で飲まれているビールの99%はたった1種類のLagerという品種であることは多くのクラフトブルワリーが謳っていますが、今回、BrewdogはそのLagerに挑戦したのです。

そして今回のキャンペーンはその「LOST LAGER」発売に合わせたものです。なんでも良いから、ボトルか缶のダメビールをBrewdogのバーに持って来て回収ボックスに捨てたら、新作のLOST LAGERを1杯無料でプレゼントというシンプルなものです。「飲むには値しないダメ・ビールへ『恩赦』として、使い道を与えてやったよ」と言うところでしょうか。

ものは試しと、早速参加!

さて、早速、参加してみたのですがいきなりの障壁です。いわゆる「ダメ・ビール」を買ってバーに向かおうとしたところ、意外とダメ・ビールが手に入りません。近所のコンビニやスーパーでは、クラフトビールなら1本ずつ買えるものの、安い大量生産ビールはどれも6本パックでしか売っていません。ようやく見つけたハイネケンの大瓶を1本携え、地元のBrewdog Leedsへ行ってきました。

ビデオにあるようなオシャレな箱はなかったけど、Bad beerと手書きで描かれた段ボール箱に入れると、LOST LAGERを1杯くれました。£1.90のハイネケンが£5.20のLOST LAGERに変わっただけでも十分お得ですが、味の方もさすがのBrewdogでした。日本でも飲み慣れたLagerだけど、しっかりと口に残る味の強さ・濃さを感じました。個人的には、クラフトビールを飲むならLagerじゃないのが飲みたいとも思うけど、大量消費ビールとの真っ向勝負で実力の差を見せつけるには十分なクウォリティだと思いました。値段はもちろん大量消費ビールより高いですが。

今回のキャンペーン、ごく単純な発想のシンプルな仕掛けではありますが、それでも、わざわざダメ・ビールを買ったり、家から持参するという行為を実際にすることに「踏み絵」的な価値があるのかなと思いました。「今後、こういうダメ・ビールとは決別だ」と意識のスイッチが、行動することで入った気がしました。

最後にBrewdogの創始者、James Wattのコメントを和訳してみました(間違いあったらすみません)。

Lost Lagerは、少量のスパイスと風味豊かなライムマーマレードが特徴的な、キレのよいサッパリしたピルスナーです。 発売開始にあたって、我々はビール愛飲家のみなさんに、長く大手のビアブランドが販売してきた大量生産の黄色くしゅわしゅわしたがぶ飲み用ビールではなく、魂と情熱を込めて作られたラガーを味わってもらうチャンスを提供したいと考えました。この数十年で、大手が品質より利益を重視した結果、劣化していったラガーを作る技巧は、失われていき、忘れられてしまいました。 しかし、正しい方法で醸造することで、豊かな味わいを詰め込み、深みと特徴をしっかりと持つ本当にエキサイティングなスタイルを持ったラガーができました。 何ヶ月にもわたった努力の結果、我々はこのレシピを手にすることができました。そして、我々は自信があります。いちど、Lost Lagerを味わったら、もう誰も過去には戻れないと。


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