雑草ウオーズ⑦ ~ソイツは今年も生えてきた
以前砂漠の国から来た留学生は言っていた。
日本には四季がありそれが羨ましいと。
四季の変化が生み出す色や香りは芸術であるとさえ言っていた。
留学期間を終えて帰国する彼を、空港まで見送った一場面。
日本の季節は素晴らしい。いつか家族と一緒に日本に移住したいとまで目を潤ませながら言っていた。思い出に季節の花々や風景が描かれた絵ハガキををカバンいっぱいに購入して、帰国の途についた。
さて、日本に残った私は、季節の変化を切に実感している。
1年前より続いている雑草もそうだ。
夏が過ぎ、秋を経て、冬になった。
冬の草たちは、淡い色でフカフカだった。
スニーカーで踏みしめると、やさしさすら感じるほどだった。
このまま春になったら、一部の場所をレンガで囲んで家庭菜園でも始めよう。そんなことを考えていた。
が、甘かった。
四季の変化は、私たちに喜びだけをもたらしてくれるのではないらしい。
3月あたりから、そのことには薄々気づいていたのだ。
彼らが、芽吹いていることに。
4月になり、いよいよ見て見ぬふりもできなくなっていた。
踏みしめても、以前のようなやさしさは感じられなかった。
感じられたのは、生命力という名の「威圧」である。
去年よりも種類も増えているようである。
彼らは今年も現れたのだ。
それも新たな仲間を引き連れて。
今年も戦いが始まった。
同じころ、先の元留学生から絵ハガキが届いた。
結婚して、子供が生まれたと書かれたという。
そこでも、また日本の季節のすばらしさに触れられていた。
そんな彼の絵ハガキの背景は、いつも砂漠である。