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【フリー台本】優しいドクターとAIナースの診療記録【12分前後 男2 女2】
【登場人物】
ハヤト・・・主人公の医者。28歳くらい?
みれい・・・ハヤトの助手のAI
輩・・・この街でやさぐれてしまったお兄さん。25歳くらい?
おばあちゃん・・・患者さん。
【本編】
ハ「はい、これでよし。まだ息苦しいかもしれないけどお家で薬飲んでれば大丈夫だよ。」
婆「ハヤト先生、いつもありがとねえ。また来ます。ゴホッ」
ハ「いえいえ。会えるのは嬉しいけど、あんまり病気にはならないでね。」
婆「うふふ、ハヤト先生は優しいねぇ。じゃあ、ありがとうございました。」
ハ「お大事にー。」
僕はハヤト。この街で町医者をしている。
み「先生、お疲れ様でした。本日の診療は以上です。」
ハ「うん、ありがとう。お疲れ様。ふー、今日も疲れたねえ。」
み「いえ、私は疲れを感じませんので。」
ハ「あはは、そうだね。」
この子は人型AIロボットのみれい。僕の助手として働いてくれている。淡々と仕事をこなす有能な助手でとても助かっている。
ハ「でも最近、街の空気が悪いからだろうけど、呼吸器や肺に異常が出てる患者さんが多くて少し心配だね。」
み「そうですね。医療センターの実験の影響でしょうか。」
ハ「そうだね...。僕らが居た頃より無茶なことしてるって噂で聞くし...。」
時代とともにIT分野も医療技術も発達した。この街には先端医療を研究する高度医療センターがあり、僕らは以前そこにいた。はじめは人々の生活を守るため、病気の人を救うため、日々研究できることが本当に嬉しくて、やりがいのある仕事ができて幸せだった。しかし、だんだんと貿易のため、軍事のため、国のため、薬や研究が悪用...と言ったら語弊があるけど、僕の思いとはかけ離れた形で利用されていくことに我慢ができなくなり、みれいを連れてセンターを出た。みれいはその頃から僕の優秀な助手だった。
み「街を漂うスモッグの数値が日に日に上昇しています。人間の体には相当負荷がかかっているはずです。」
ハ「そうだよね...。僕はほとんどここから出ないし、買い物なんかもみれいが行ってくれるからいいけど...。」
み「特にセンター付近は濃度の数値が桁違いです。お年寄りなどは心肺機能も低下しておりますし、心配です。」
ハ「みれいは優しいね。」
み「AIなのに、ですか?私は優しさなんて感情持ち合わせておりません。」
ハ「ははっ、どうしてそんな言い方をするのさ。君はちゃんと人の心を持ってるよ。」
み「そんなわけありません。そんな機能AIには搭載されておりませんので。」
ハ「ふふっ、頑固なのも人間らしい。」
形は変わってしまったけど、少し偏屈なこの子と街の人々のために働けるのは本当に嬉しかった。
しかし...
バンッ
輩「おい!医療センターの町医者っていうのはお前か!」
ハ「な、なんですか、いきなり!」
音と怒声に驚く僕を庇うように、みれいが間に立つ。
み「どなたですか?先生はもうあのセンターとは関係ありません。」
輩「うるせえ、女は引っ込んでろ。俺はその医者に用事があるんだよ!!」
みれいの肩に手を置き「大丈夫だよ」と声をかけ、男と対面した。
ハ「あの医療センターに過去在籍していたのは事実です。そのことで何かありましたでしょうか。」
輩「あのセンターのせいでこの街の大勢の人間が苦しんでるんだ。変な実験のせいでオレの連れも体調が悪くなって...」
み「それではこちらに連れてきてください。先生が治してくれます。」
輩「...それができてたらあいつは死んでねえよ!!お前らのせいだろ!お前らのせいで、あのセンターのせいで仕事も家族も何もかも無くしちまったんだよ!!」
そう。僕らのいたセンターは国と癒着し、この街を統治・監視して好き放題やっていた。この街の全てを牛耳り、背いたものからは何もかも奪うような、そういう奴らだった。だから見つからないように僕も隠れて闇医者のようなことをしているのだ。...ちがう。本当は僕の作った薬が、人々を救うはずだった薬が、知らないうちに、人々を苦しめるための薬になっていた罪悪感を拭うために。こうやっていつも言い訳をしながら、自分が救われるために...
ハ「申し訳ございません...」
輩「あぁ?!」
み「先生!」
ハ「僕らのせいで申し訳ございません...!」
輩「謝って済むことじゃねぇんだよ!!」
み「なぜ先生が謝るのですか?先生はこの街の人たちを救うためにこの病院をやっているのですよ?」
ハ「違うんだ!これも全部自分のため!僕は僕のために罪滅ぼしをしてるだけなんだ...!」
輩「はっ!そんなことどうでもいいんだよ!お前みたいな偽善者がここでのうのうと暮らしてんじゃねえよ!!」
み「先生!」
男が拳を振り上げた。当然の報いだ。僕は自分の罪から逃げ続け、それなのに幸せな生活をしようとしていた。男の拳を受け入れようとギュッと歯を食いしばった瞬間、みれいが僕と男の間に立ち、男の拳を受け止めた。
ガキッ
輩「いってえ...!」
ハ「みれい!」
輩「なんだてめえ...!ロボットか!ふざけやがって!!ロボットが人間面してんじゃねえよ!何もかもむかつく奴らだな!!」
み「仰るとおりです。私はロボットなので人間の感情などわかりません。」
輩「だったらどけ!クソロボット!」
み「ですが、先生が街の方々のために診療を行なっていたことはわかります。」
ハ「みれい、僕は...」
み「私はロボットなのでわかります。先生の睡眠時間は人間の平均睡眠時間を大きく下回ります。先生が患者様と話すときの声色は人間が他人を思いやって出す音色です。数値でも統計でも算出できます。事実です。」
輩「だ、だからなんだってんだよ!お前らのせいで俺らの生活はめちゃくちゃになったんだ...!」
み「あなたのその発言は逆恨みに過ぎません。先生はすでにセンターとは無関係の存在です。そんなに言うならセンターに直接行ってください。」
輩「そんなのもうとっくにしてんだよ!!でもいつも門前払いの武力行使!俺らのことなんてゴミとしか思ってねえ!」
み「それを先生にぶつけるのは間違っています。お引き取りください。」
輩「そんなの、わかってるっつってんだろ!じゃあ、俺らはどうすればいいんだ!どうせこの体もそんなに長く持たねえ!金だって無え!もうできることはねえんだよ!」
み「そんなはずはありません。こんな無駄なことをしていないで、もっと有益なことができるよう考えてください」
輩「有益ね...そうか。良いこと思いついたぞ!爆弾でも巻き付けてセンターに飛び込んでやる。はははは簡単だ。どうせ俺なんていなくなったところで...」
み「そんなことしてもなんの解決にもなりません。やめてください。」
輩「うるせえんだよ!さっきから正論ばかり並べやがって!ロボットにはわからねえだろうけどな!もうこうするしかねえんだよ!!邪魔したな。」
ハ「ちょっと待ってください。」
決意が固まったのか、先程より少し冷静になった彼を引き留める。
輩「なんだよ。俺はもう決めたんだ。止めるなよ。あのセンターをぶっ壊してやる。」
ハ「僕も決めたことがあるんです。」
輩「あ?」
ハ「あなたの言う通り僕の作った薬や、僕たちが行った実験のせいで大勢の人が苦しんでいるのに報いも受けず、今まで逃げてきました。本当に申し訳ございません。」
み「先生が謝る必要なんてありません!」
ハ「いいんだ。僕にも責任の一端はある。」
輩「はっ、謝られたって何も戻ってこねえし、変わらねえ。もうどうでもいいんだ。八つ当たりして悪かった。じゃあな。」
ハ「だから!!僕に責任を取らせてください!!」
輩「責任?」
ハ「あなた含め体調に異常がある方全員僕が治してみせます。研究に携わっていた僕なら対処できるはずだ。だからあなたたちの体を診させてください。お願いします。」
これが僕が決めたこと。今までずっと見て見ぬふりをしていた。自分には関係ないと。自分のせいではないと。でも、それじゃいけない。」
輩「お優しい先生よ、俺にそれを信じろってのか?何されるかわかったもんじゃねえ。それに金も無えって言ってんだろ。薬代も診察代も出せねえんだよ、俺らゴミは。」
ハ「そんなもの必要ありません。無償でやらせていただきます。もちろん、センターにも命懸けで抗議、交渉をしてみせます。研究者の中にも今のセンターに疑問を持っている人たちが沢山いるんだ。きっと僕の話を聞いてくれる人達もいる。僕を信用してもらう根拠は持ち合わせていません。信じてくださいと言うしか。」
輩「そんなの...」
み「先生は信用できる方です。今先生の心音は人間の嘘をつく時の乱れではありません。緊張はしていますが、それは恐らく将来への多少の不安と覚悟の表れかと思います。目線もあなたを真っ直ぐ捉えており、真実を語っていると考えられます。」
輩「それもロボットだからわかるってか。」
み「はい。」
輩「...そうかよ。わかった。俺の仲間を救ってやってくれ。...頼んだ。」
み「あなたもです。」
輩「ふっ、わかってるよ。ロボットは頭がかてえな。」
み「当たり前です。金属ですから。」
ハ「はははっ。」
輩「このロボット冗談言いやがるのか。面白えな。」
み「何を笑っているのですか?冗談なんて言ってません。」
みれいのおかげでいつの間にか緊迫した空気は解け、殺意に満ちていた彼も笑い出してしまうくらいに調子を崩されてしまった。
その後の僕たちは本当に忙しい毎日を送っていた。街の空気や地質調査、住民の健康診断、新薬の開発、センターにもどうにか意見を聞いてもらえるよう毎日駆けずり回っていた。
み「先生、あまり無理なさらないでくださいね。先生が体を壊したら、救えるものも救えませんよ。」
ハ「ははっ、わかってるよ。君が側にいてくれるから大丈夫。」
み「...」
ハ「どうした?」
み「いえ、先生が不思議なことを言うので、なんと答えていいのかわかりませんでした。バグでしょうか。」
ハ「ははははははっ、バグじゃないでしょ!君はやっぱり人間の心を持っているね。」
み「何を言っているかさっぱりわかりません。」
ハ「僕は君が大切で、君が支えてくれるからどんなことでも頑張れるんだよ。」
み「はい。」
ハ「ははは、わかってないでしょ?」
み「はい。ですが理解できないのが人間だと理解しておりますので、お気になさらず。」
ハ「ふふふ、君は可愛いね。」
み「すみません、よくわかりません。」(Siriみたいに)
ハ「急に一昔前のロボットみたいになったね?!」
これは、少し偏屈で可愛い僕の助手と奮闘していく、僕の幸せへの物語。
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