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大規模怪異発生日記29


暗夜迷宮日記スクショ
第二十九更新分
20230608~20230610
テキストは以下


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主な登場人物


左から
万禮ばんらい久幸ひさゆき、ヒー、始祖:かど凌司りゅうしのバンパイアにおける直系始祖。
かど凌司りゅうし、りゅーし:万禮ばんらい久幸ひさゆきのバンパイアにおける直系係累。
土果とか久幸ひさゆき凌司りゅうし二人の伴侶犬。
恵玄よしはる:凌司の後天性加護精霊。トゥから贈られたカーボナードの精霊。
上段左から
ラン:久幸ひさゆきの友人。凌司りゅうしの恩人。
トゥ、師匠:久幸ひさゆきの友人。凌司りゅうしの魔術の師。
泰市たいち:ランとトゥの伴侶猫。
下段左から
サンタ:ねこのぬいぐるみだがトゥの魔法で限定的に猫になる。
スュクセ、すゅー:トゥの特別な遣い魔。個性と向学心がある。

本編

20230608

ランさんと師匠の生きる環を持つ土塊の星では
まだ安価な合成香料が発明されていない事と、
哺乳類を食べない決まりが有って
肉類を食べる機会が少ない事とが多分の要因で、
彼等の匂いはとても柔らかい事が判った。
午後の間だけ流れ込む匂いの内、
合成香料は、醸造アルコールと同じく
尖って知覚を刺激する為に不愉快らしい事も判った。
今は専ら純米と表記されているものだ。
日本酒は超辛口が好みだったのに
最近受け付けなくなっており、
調べたら醸造アルコールが原因らしいと知った次第だ。
手当たり次第に原材料名をひとつひとつ確認して驚いた。
私の昏睡中に始祖が揃えたという
邸内の全ての物に合成の文字が見当たらなかったのだ。
香料なら不使用か天然香料使用かのどちらかだった。
私が不用意に増やした物が
現在の私の天敵と化している事も判った。
うーむ、ビバ健康オタク。
見習わねば。

嗅覚の抑制にはあと一歩届かないが
視覚聴覚触覚の抑制とバンパイア式ワープを体得した。
にのまえ学園の分かり易い補習の賜物だ。
端末越しに教師が見せてくれた
校内の非常用ワープ口に
灯りを消した衣装室から
一っ跳びできた時の感動ときたら!
学園長が校内を案内してくれた。
互いに興味津々の体だったが、
壱学園長は異界が落ち着いてから改めて
晩餐に招待すると言って見送ってくださった。
裏富士が窓の外に見えていたので山梨辺りだろうか
場所を尋ねるのを失念した。
邸の衣裳部屋に無事帰れたのは予想外だった。
一瞬始祖の喫煙室が思い浮かんでしまったからだ。
視覚記憶が精確でなかったからだろうか、
兎も角、これで始祖の心配事を
かなり減らせたのではなかろうか。
私は自信を大分取り戻していた。

20230609

戦闘は不得手だからと
言い訳にも似た捨て台詞の後に、
九尾の狐は
自らの総てを仕上げのにえとし、
子宮や羊膜を破るかのように自刃して
だいだらぼっちを召喚……と言うよりは
完成・・させたように見えた。

攻撃が通っていないようにすら見える程の
巨人から一斉に
20体もの凶悪な怪異が生み出され
心折れそうになったその時、
光の壁が生成されて我々は護られた。
己の手柄ではないと
身振りする仲間達の様子で思い至る。
ああ、想い、か。
今日までの我々の決意とあらゆる感謝、
仲間に、組織に、
或いは留守を護ってくれている者に、
或いは戻ってきてくれた人々に、
もしくは戻ってこられた人々の
我々への感謝もあるかもしれぬ。
そうだ、タイムリミットは未だだ。
未だ諦める時ではない。
前向きな直向きな想いに双肩を抱かれ
再びの決意の後、
巨体を跪かせる事ができたが、
核を砕かぬ限り
真に倒せたとは言えぬのだったなと振り向くと、
案の定、再び首を擡げていた。
二戦目間もなく
巨体の外した一撃が砕いた
コンクリートの破片から飛び出した鉄筋が
タブレットを直撃し、
小さなヒビの奥に暗闇が広がった。
この時の為に懐に忍ばせていた
タフネススマホを取り出すが手が震える。
未だ始まったばかりだと言うのに……!
二台目は無い。
決して取り落とさぬように
チタン製ボールチェーンストラップを
リストバンドと接続する。
想いはまだそこ・・に在るのに!
戦闘が長引き過ぎて
桔梗院の判断で強制的に
仲間と共に戦線離脱させられた。
繰り返し挑んだが
二度目の勝利は得られなかった。
一旦引く事とする。

我々は未完のだいだらぼっちの
体内で戦っていたのだろうか。
そうと知っておれば
中にいる間に念入りに傷つけておいたものを!
安定して勝ち続けて着実に核に近づかねば。

桔梗院の許可を得て
師匠とランさんに戦闘ログを見てもらう。
ラン「バフと単体攻撃極みだけで
雑魚召喚前にぶっ倒せないかな?」
始祖「気が合うねぇ!」
師匠「もし間に合わなかったら
全員がジゴクを見ますよね……
全体攻撃も怖いですし。
タンク、この場合久幸氏ですよね、
久幸氏に蘇生術符を持ってもらってはどうでしょうか。
丈夫な人にAEDを持ってもらうと心強いですよ」
始祖「アー、AEDは基本だよな、忘れてたよ。
道連れ呪符が息してねぇ以上は
AEDと回復に専念した方が安定するかもしれねぇな」
始祖と装備をひとつひとつ見直した。
光量の違いだろうか
スマートフォンよりタブレットの方が
微妙に呪力が強い気がするので
明朝一番でタブレットの修理か新調に走る事とする。
微小な差異が戦況を左右する可能性は零ではないからだ。
今夜の処は休む。
休む。

20230610

最も輝度の高い端末を購入して
桔梗院の提携家電店から帰宅すると、
師匠が夜なべして作ったという
保険用ボードを下さり、
ランさんが作ったという
持ち物が離れない御守を下さった。
ボードは薄い板版サイリュームのような外見だ。
電子端末の反応が消えた事を察知したら
私の真言称名に反応して発光し、
起死回生の術が発動するそうだ。
使う機会が来ない事を本気で祈っていると
ランさんと師匠が口を揃えて言う処をみると、
余程かけがえの無い物を
材料にしてしまっているようだ。
二重三重の保険の後に頼る事に決める。

タンクとヒールを始祖に、
バフとデバフを私に、
断頭持ちアタッカーの
仲間三名と共に赴いた戦いで
難なく勝利をおさめられて
私は大いに安心した。
桔梗院の本気度合がシステム改変から窺える。
的が大きくてナビに手間を取られないからか
幾度でも挑めるようになったのだ。
何時の間にか私は始祖の結界外で
記憶が欠落する事が無くなっていた。
以前の記憶は未だ戻らないが、
実に有り難い!
始祖に従って、
時間には邸で軽食と入浴を挟んでから
始祖と共に戦地へ戻るという事を繰り返す。
記憶が消されなくなったお蔭で
身も心も軽い。
私に寄せられた想い、
決して無駄にはすまい。


次話のご案内

ゲーム内にて公開した健全日記は以上です。

エピローグ公開を待たず投稿してしまいました。
スクショ版にはゲーム内の
日記の作成&プレビュー画面を
活用させていただきました。
感謝申し上げます。

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