20211227:711号室の回:加護精霊・加護聖霊、二足歩行種族について☆
わたしは環を持つ土塊の星の
ストュスアイ王国セトフォルドに建つ集合住宅の711号室。
記憶と意思を持つ。
今日はマリエラセス暦3896年12月22日白曜日。
今のグロリアスは、
襲撃を経て生命に喝が入ったが如く
病室でリハビリに勤しみ始めた。
後のグロリアスは、
一度は帰宅したが、
端末に刀畿への文をしたためている最中に界狭間に引き戻され、
再び囚われの身となった。
刀畿はまだ帰らないが、
「爺グロリアス」からの返信を期待して加護聖霊を帰した。
――蝙蝠獣人の加護精霊としては大層珍しい――鍛冶神の聖霊が、
途中書きの返信を念写して、愛し子の許へ急ぎ戻った。
「私のかけがえのない友、刀畿へ
有り難く休息を兼ねて薔薇探しに散歩に出たが、
界狭間の入口を越える間もなく界狭間に吸い込まr」
以上が返信の全文だ。
加護精霊・加護聖霊とは、
短命二足歩行種族にのみ加護を与える精霊・聖霊だ。
短命二足歩行種族とは、
グロリアスのようなヒューマンと、
刀畿のような獣人と小人を指す。
竜人・龍人も二足歩行種族ではあるが、
加護を受けたものの存在は見た事がない。
長命であり、
生後二十年でほぼ全ての能力が他の生物より優れるからだろう。
獣人は、
猫獣人・犬獣人・馬獣人・蝙蝠獣人が在る。
小人は、
猫小人・犬小人・鳥小人が在る。
精霊とは、
物理変化前・化学変化前の植物・鉱物・自然現象と
二足歩行種族に長く愛着を持たれた人工物に宿る霊体だ。
聖霊とは、
神に仕える精霊と、
神に仕える夭逝した二足歩行種族の霊だ。
二足歩行種族は夭逝すると、
自ら仕える神を選び、最長二十年仕える。
この星の神は、
一柱も漏らさず二足歩行種族の願いによって現れた。
後のグロリアスの加護精霊は、
刀畿の寝床の藤棚の下で、
散々喚き散らした果てにとうとう泣き疲れて眠った。
タングール王よりワイズ家に下賜された
盾に刻まれていた鷲獅子の姿という事だが、
聖霊と比べると精霊は、その性情が押し並べて幼い。