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20220208☆:711号室の回:グロリアス・ワイズと|上之城刀畿《かみのしろとき》最終話
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ゲーム&キャラシートデザイン:株式会社サクセス様
キャラクターデザイン:嘉又夢了
![](https://assets.st-note.com/img/1644295929467-rpqRWTJB4a.png?width=1200)
彼等の世界では見られない煌びやかなクリスマスの装飾に
不愛想な頃のグロリアスの頬も緩むに違いない。
![](https://assets.st-note.com/img/1644296027025-S3rPUV2NpJ.jpg)
わたしは環を持つ土塊の星の
ストュスアイ王国セトフォルドに建つ集合住宅の711号室。
記憶と意思を持つ。
今日はマリエラセス暦3897年2月8日紫曜日、
夜明けと同時に刀畿が亡くなった。
藤の枝と彼の足の裏が擦れるほんの微かな音の直後、
幾重の葉枝と彼の翼が擦れる音、
極軽い衝突音を最後に静寂が戻った。
傍らで彼の加護聖霊が呆然と座り込んでいる。
二人のグロリアスが感知した。
今のグロリアスが、
不意に目覚めた瞬間だった。
数時間後に退院手続きの為に訪れる予定の父親へ
己の加護精霊に伝言を頼むと、
彼は病室を抜け出して一目散に駆けた。
藤棚の下で読書していた後のグロリアスが、
本を取り替えに寝室に入った瞬間だった。
異変を感知した彼は、
ベンチに落ちていた刀畿の身体に
異状が無い事を確かめ、
グロリアスの寝台に仰向けて横たえると、
額を立てて頸部に手拭をさし入れて喉を開かせ、
ばーすせいばー装備の復活の魔法符を
友の胸で発動させながら
己の肘を伸ばした両手を重ね、
屈んで見下ろした友の胸部を圧迫して
繰り返し押し下げ、
医学的蘇生術に望みを賭けた。
錬度の低い魔法符が不安定に輝く中、
規則正しい圧迫が続いた。
百と四十四回目、
まだ温かかった刀畿の亡骸は、
忘れ物に気付いたかのように、
息を吹き返した。
「アア……グロリアスも戻らねぇのにうっかり逝ってたらしいな? すまん、すまん!」
刀畿の陳謝はしかし、
後のグロリアスの耳には届かなかった。
これが彼のこの世界に喚ばれた理由であったかのように、
彼は再び乱暴に界狭間に取り込まれ、
来た時と同じように強制的に
かもんさとに叩き出され、
この時代に現れる事は二度となかったからだ。
斯くして、
刀畿は、
今のグロリアスに無事看取られ、
霊魂で生き残る事無く、
記憶と記録を司る神と
故第18代ワケイザ国王の豪勢な御迎えを受けて、
加護聖霊と共に旅立つ事ができたのだった。
【グロリアス・ワイズと上之城刀畿の話、了】
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![嘉又夢了(かまた・むりょう)](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/120715498/profile_5e4933307729433ce0bf2eef97d4da11.jpg?width=600&crop=1:1,smart)