283.20220920:フレデリックの回:防人神殿の伝説と東西風神の加護
すっかり忘れていたが
今年は防人神殿を預かり護る
風の大神が交代する年だから、
何処の土地も天候が荒れ易いのだった。
八年毎に西風の神と東風の神が入れ替わり、
今年からは西風が神殿務めで
東風が自由の身となり、
フレデリックの下の姉が上機嫌な
セーリング三昧の八年の始まりだ。
その昔、東西の風が無秩序に吹き荒れては、
我々ヒューマン含む龍や動物や精霊や魔物、
生きとし生けるものを漏らすことなく
平等に翻弄し傷付けた時代を歴て、
生き物総出で調査にあたった末に
建てられた防人神殿で結ばれた協定なのだそうだ。
恒星からの灯りを巧く採り入れて増幅する事で
秩序を得られたのだと科学者は伝えるが、
交代の年の不安定な大気の状態についての解明はいまだ済んでいない。
という訳なのだが、
「ハイドがデレたら乾季に土砂降り」の語呂が素晴らし過ぎて
頭から離れない。
口にすると新婚生活に水をさしかねぬので
グッと堪えて呑み込むが。
全員全身筋肉痛で
旧式の油不足のロボットのような動きで
最低限の家事をこなすと、
管理人が頑丈なネットを外壁沿いに設置してくれ、
安全を確保できた
絶えずの藤の手前に腰掛けて茶を啜りながら、
揺れる藤の花越しに
生暖かい暴風雨が猛り狂う様を眺めた。
ハイドが語った事によると、
風の加護を得ている者は、
東西を問わず烈しい一面を宿しているのだそうだ。
領民や家政師の中に幾人も見た事が有るが、
御母上より引き継いだ極意に記されている通りに、
付き合い方のコツがはっきりしているのだそうだ。
「加護神が神殿務めの年には
何事も一度で引き下がる事」
「加護神が自由になった年と
拘束される直前の年は休みを多めに与える事」
「そうすれば勤務時間内に最高の働きをしてもらえる」のだそうだ。
目から鱗が落ちた。
今後は少し付き合い易くなるかもしれない。
マリエラセス暦4044年10月8日白曜日25:09
(この星の一日は26時間)。
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