20220107:711号室の回:悪戯
わたしは環を持つ土塊の星の
ストュスアイ王国セトフォルドに建つ集合住宅の711号室。
記憶と意思を持つ。
今日はマリエラセス暦3897年1月4日緑曜日、
今のグロリアスは、
――これまでとは打って変わり――自ら養生に努めた。
焦燥感から解き放たれ、達成感に満たされたのだろう。
刀畿は、
病室に付き添って宿酔いを癒した。
後のグロリアスは、
鉢植えの薔薇の手入れをしてから、
早くも落ち着きを取り戻したワイズ邸へ、
邪まな願望を叶えに行った。
「叔父の部屋に悪戯」だ。
件の叔父クラウディオは今のグロリアス殺害計画を立てた教唆犯の一人だ。
後のグロリアスの世界でも幾度となく彼を亡き者にせんと企てたが、
他星に証拠を隠したようで、
長く悪事の証拠を押さえられなかったのだそうだ。
警察沙汰にまで至らなければ
痕跡や本音を視通し
界狭間をも自在に行き来して追跡する
警察関係職や裁判関係職の神々や聖霊の出る幕が無いので、
特に界狭間を使った事件は解決しようがない。
そういう訳で
クラウディオの部屋のバルコニーに見付けた界狭間の入口に、
縁切りの呪いを施してきたそうだ。
捜査は既に完了し、
クラウディオも既に自由を奪われているが、
クラウディオの子孫がこの入り口を見付けられぬようにとの悪戯だそうだ。
呪いの精度は施した本人にも不明であるから、
腹癒せにしかならないかもしれないねと、
グロリアスは爽やかに笑った。
いいなと思ったら応援しよう!
宜しければサポートの程、お願い申し上げます。
頂戴したサポートは、
闘病生活と創作活動に充てさせていただきます。
スペインはグラナダへの長期取材を夢見ております。