あえて「飲まない」ことで、幼い頃のクリエイティビティを取り戻す
思えば、小学生くらいまでは、特に何の変哲もない街で暮らしていたかかわらず、かなりクリエイティブに遊んでいた気がする。
昆虫が大好きだった保育園時代は、少しでも生き物の気配がする場所は森や池であれ公園であれ、どこでも時間を忘れて探索することができた。小学生になっても、裏山にいくつも秘密基地を作った。うっかり触って作動させてしまった消化器で一帯が粉まみれになって焦ったのは良い思い出だ。もちろん人並みにゲームボーイアドバンスやカードゲームに熱中したこともあったけれど、それだけやっていても飽きるので、(今思えばはた迷惑な話だが)近くにあった大型団地の区域全体を使ってドロケイに興じたり、あえて遠くの公園まで出かけてみたり、さらにはクラブ活動と称してひどいクオリティのなんちゃってサスペンスドラマを撮影したりしていた。
しかし、中学生になって部活動というものを始めるようになると、(僕個人は電車で1時間半近くかかる私立の学校に通っていたこともあり)そうして街をクリエイティブに味わい尽くす習慣はなくなってしまった。今では大人になって、一見すると行動範囲が広がったようには見えるものの、特に夜は、結局やっていることは飲み会ばかり。以前も書いたように僕はお酒も好きだけれど、あの頃のクリエイティビティはどこへ行ってしまったのだろう、とも思う。
(※)本ブログは、株式会社PLANETSが発行する雑誌『モノノメ 創刊号』について、そのいち編集部員である僕が、個人的な所感を綴ったものです。このブログを通じて、より多くの方に『モノノメ 創刊号』を手に取ってもらい、既に購入いただいた方にはより多角的に雑誌を読む一助としてもらいたいという目的で書いています。
「飲み会」というモノカルチャーだけでなく、本来はとても豊かで多様なポテンシャルを秘めているはずの東京の夜をより楽しむための「飲まない東京プロジェクト」。これは僕なりに言い換えれば、あの頃のクリエイティビティを取り戻す運動とも取れる。あえて「飲む」という選択肢を外して夜を楽しむことで、僕らはよりクリエイティブに遊べるようになるはずだ。
PLANETSの新雑誌『モノノメ 創刊号』に収録されている、[鼎談]「磯辺陽介×田中元子×藤井明香|大人のあそび場は『飲まない』ほうが楽しい」では、「飲まない」夜の過ごし方としてどんなものが考えられるのか、まちづくりにかかわる3名が徹底討論。夜のワクワク感から公共性まで、幅広く議論が展開されてゆく。
磯辺 (略)今日、みなさんとお話しして、東京だからこそ、夜の居場所の選択肢は必要だと実感しました。あと、夜に「遊ぶ」というイメージを持っていたんですけど、「いる」ことがカギだというのは大きな発見でした。
田中 結局、飲まない東京って、お酒の排除ではなく、東京の優しさの実装だと思うんですよ。東京の優しさって、夜中だけど、一人だけど、とにかくそこに存在するっていうことを肯定してくれるということだと思う。(p156)
いま「飲まない」選択肢としてどんなものがあって、今後どんな可能性がありえるのか。その現在地と未来を一望できる見取り図のような鼎談になっていると思う。何より、ひたすらに具体的なアイデアの応酬で、読んでいてとてもワクワクする。
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