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小説同人誌の仕様とレイアウトを振り返る
初めて本を作ったとき、ほかの方々の仕様とレイアウトがたいへん参考になったので、わたしも備忘録を兼ねて記録しておこうと思います。
ただし、わたしが本文レイアウトに使用しているのはWordなので、ほかのソフトを使っている方にはあまり参考にならないかもしれません。
また、今のところ、わたしが作った本はすべてA5サイズです。文庫や新書、B6は作ったことがないので、あしからずご了承ください。
1 2020年7月に出した本
依頼した印刷所
表紙のデザイン
キヤノンの「おうちでつくる同人誌」にあるテンプレを使わせていただきました。
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生まれて初めて印刷所に頼んで作成した本です。ごく親しい友人にだけ配りました。その詳細は下の記事に書いてあるので、ここではなるべく簡潔にまとめますね。
仕様
冊子のサイズ:A5
表紙の印刷方法:フルカラー印刷
表紙の種類:ペルーラ スノーホワイト 180kg
表紙の加工:表紙 PP加工(クリアPP)
本文の印刷方法:モノクロ印刷
本文ページ数:88ページ(背表紙の厚さ:約6mm)
本文用紙:淡クリームキンマリ 90kg
遊び紙:なし
カバー:なし
本文レイアウト
本の真ん中あたりを開いています。
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■サイズ・段組・余白
サイズ:A5(148mm×210mm)
段組:縦書き2段
余白:上(天)15mm,下(地)20mm,内側(小口)12.2mm,外側(ノド)17mm
■本文フォントと行間
使用フォント:源暎こぶり明朝TTF
文字サイズ:9pt
行間(行送り):固定値15.3pt(22行×26字×2段)
■フッター
全ページ:中央寄せ、ページ番号
フッター位置:下から9mm
フッターのフォント:Times New Roman
フッターのフォントサイズ:6pt
気になった点
文字のサイズ(9pt)が小さい。
本文用紙(淡クリームキンマリ 90kg)が厚いからか、少しページがめくりにくい。
綴じてあるほう(ノド側)が少し読みにくい。
2 2020年11月に出した本
これはBOOTHで頒布しました。
頒布するのは生まれて初めての経験だったので、ハラハラドキドキしましたが、ぶじに頒布できてよかったです。
依頼した印刷所
冊子は1冊目の本同様、ちょ古っ都製本工房に印刷してもらいました。
業界最安値なんじゃないかと思うほど安いし、クオリティーにも特に不満はなかったので、またお願いすることにしました。
ちょ古っ都製本工房はカバーを手がけていないので、カバーは下記の印刷所に頼みました。10部から注文できるし、お値段もお手頃です。
カバーと冊子の表紙デザイン
てんぱるさんに作成していただきました。
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とてもきれいな仕上がりで大満足ですが、唯一の心残りはクリアPP加工ができなかったことです。わたしの希望したサイズだと、オプションにクリアPP加工が付いてなかったんですよね。
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遊び紙はもっと厚く、色の濃い紙がよかったと思いましたが、この点に関しては、完全にわたしのミスです。紙のサンプルを取り寄せていたにもかかわらず、それをきちんと確認せずに選んでしまったので、イメージと違っちゃったんですよね。
仕様
冊子のサイズ:A5
本体表紙の印刷方法:フルカラー印刷
本体表紙の種類:ペルーラ スノーホワイト 180kg(クリアPP)
本文の印刷方法:モノクロ印刷
本文ページ数:296ページ(背表紙の厚さ:約15mm)
本文用紙:淡クリームキンマリ 72.5kg
遊び紙:色上質中厚口(若草)
カバーの印刷方法:フルカラー印刷
カバー用紙の種類:コート紙135kg
本文レイアウト
本の真ん中あたりを開いています。
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■サイズ・段組・余白
サイズ:A5(148mm×210mm)
段組:縦書き2段
余白:上(天)14mm,下(地)20mm,内側(小口)12mm,外側(ノド)24mm
■本文フォントと行間
使用フォント:源暎こぶり明朝TTF
文字サイズ:10pt
行間(行送り):固定値15.85pt(20行×24字×2段)
■フッター
奇数ページ:左寄せ、ページ番号+章タイトル
偶数ページ:右寄せ、ページ番号
フッター位置:下から7mm
フッターの日本語フォント:源暎こぶり明朝TTF
フッターの欧文フォント:Cambria
フッターのフォントサイズ:8pt
1冊目の反省点を踏まえて、本文とフッターのフォントサイズを大きく、紙の厚さを薄いものにし、ノドの余白を広くとりました。
それとページ数が多く、章の数もけっこうある本なので、読者が今どこを読んでいるのか分かりやすくしたいと思い、フッターに章タイトルを入れることにしました。
フッター位置は、もそっと下のほうがいいように感じたので、下から9mmだったのを7mmに変更しました。
フッターの欧文フォントは、「伝わるデザイン」内の下記の記事に掲載されていたフォントの中で、半角数字がいちばん読みやすく感じた「Cambria」に変更しました。
今のところ、この本文レイアウトでほぼ満足なのですが、しいて改善点を言うならノドの余白がもう少しほしいかなと。
本が厚い(300ページ弱)からある程度しかたないかとは思うんですが、やはり150ページ付近だと、ノド近くの文字が少し読みにくいんですよねぇ。大きく広げにくいので。
なので、もそっとノドの余白を広めにとったほうがいいかなと思ったんですが、そうなると、行間をこれ以上せまくするか行数を減らすしかありません。
わたしの本はけっこうルビが多いので、これ以上行間をせまくすると読みにくくなりそうだし、かといって、行数を減らすと、本に収められる文字数も減り、ページ数が増えてしまうし……悩ましいなぁ。
それと、本文用紙の厚さは薄くして大正解だと思いました。正直、72.5kgより薄くてもいいんじゃないかと思ったほど。
でも、ちょ古っ都製本工房では、A5サイズの本だと淡クリームキンマリは72.5kgと90kgしかないんですよね。文庫だともっと薄いのを選べるんですけど。
気になった点
一部の本で、背表紙側の糊付け部分に小さな穴が見られました。本を読むのに何ら不都合はないんですが、見た目が美しくないなと。
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印刷所に問い合わせたところ、やり直したとしてもこの程度の穴は、またできる恐れがあるそうです。
1冊目の本はページ数が90ページ弱でさほど厚くなかったからか、まったく気づきませんでしたが、あらためて気をつけて見てみると、1冊目にもあることはありました。ただ、本当に微小な穴なので、漫然と見るだけでは気づかないんじゃないかと思います。
あと、本の波打ちが気になりましたね。これは全ての本に見られました。
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画像が2冊目じゃなくてすいません(画像は3冊目の本)。2冊目のときは写真をとり忘れていたもので……。
こんなふうに本が波打ってしまうのは、オンデマンド印刷に起きがちな現象のようです。その原因については、下のウェブページで分かりやすく説明されているので、よかったらご一読ください。
しかしながら、わたしの経験上、この「波打ち」は時間の経過とともに改善されるようなので、そんなに気にしなくていいんじゃないかと思います。
わたしの作った本や購入した同人誌にも波打ちは見られましたが、しばらくしたらまっすぐになりました。
3 2021年11月に出した本
前回出した本の続編です。こちらもBOOTHで頒布しました。
依頼した印刷所
下記の印刷所に本体とカバー両方をお願いしました。
これまで印刷をお願いしてきたちょ古っ都製本工房も悪くなかったのですが、背表紙側の糊付け部分に小さい穴があったのが気になりました。そこで、ほかの印刷所を試してみようと思い、おたクラブに頼むことにしました。
ちょ古っ都製本工房ほどではありませんが、かなり安いです。それに、用紙の種類が豊富なので、いろいろ選べる楽しさがあります。
カバーと冊子の表紙デザイン
再びてんぱるさんに作成していただきました。
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カバー用紙は何種類かある中から選べるのですが、クリアPP加工をしてもらえるのは「コート紙 135kg」だけだったので、それを選びました。
画像からだと伝わりにくいですが、表面がめっちゃテカテカしてます。丈夫そうで安心しました。
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
本体の表紙は、ウェブ上の見本画像を見て、「パールスノーペーパー」がいいなと思ったのですが、聞いたことのない紙の名前だったので、どんな紙なのか問い合わせました。
「パールスノーペーパー」はおたクラブにしか置いていないオリジナルぺーパーだそうです。わたしはキラキラ好きなので、「キラキラ感が強い」という説明が決め手だったのですが、実物を見てみると、分かりやすくキラキラ~ン☆と光るというよりも、シックに光るという感じで、とても素敵です。
今回は冊子の表紙にクリアPP加工をしなかったのですが、結果的にはそれでよかったと思います。たぶん加工をしていたら、この紙特有の風合いが隠れてしまったと思うんですよね。
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おたクラブは遊び紙に使われている紙のサンプルが取り寄せられないので、画像を見て判断するよりほかなかったのですが、里紙の説明に書かれていた、
触り心地がとてもザラザラとした、和風なテイストの用紙
というのがいいなぁと思い、選びました。
実物を見てみたら、イメージしていたとおりの紙でよかったです。ほどよい厚みがあり、透けません。
仕様
冊子のサイズ:A5
本体表紙の印刷方法:フルカラー印刷
本体表紙の種類:パールスノーペーパー 205kg
本文の印刷方法:モノクロ印刷
本文ページ数:292ページ(背表紙の厚さ:約16mm)
本文用紙:書籍用紙(淡クリームキンマリ) 70㎏
遊び紙:里紙(あずき)
カバーの印刷方法:フルカラー印刷
カバー用紙の種類:コート紙 135kg(クリアPP加工)
本文レイアウト
本の真ん中あたりを開いています。


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今回はpixivに初出の年月日と奥付を1ページにまとめたのですが、ぎゅっと圧縮した感がありますね(苦笑)。
■サイズ・段組・余白
余白:内側(小口)11mm,外側(ノド)25mm
2冊目とほぼ同じなので、上記の変更箇所だけ書いておきますね。
ノドの余白を広くしたいけど、行間をこれ以上せまくするのも行数を減らすのも避けたいというわけで、全体を1mmだけ小口側に移動させてみました。
印刷されたものを見てみると、ノドが広くなったのはよかったんですが、やっぱり小口が11mmっていうのは狭い気がします。本を開いたとき、文字の上に親指がかかりそうになっちゃうんですよね。
とはいえ商業誌でも、小口が11mmの本、けっこうあるしなぁ。
気になった点
糊付けの仕上がりが気に入らなくて印刷所を変えたのですが、おたクラブで作った本も何冊か穴が開いていました(泣)。いや、もちろん穴がないものもあるんですけどね……。
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問い合わせたら、「ページ数のある冊子の場合、糊部分に空気が入る可能性が高い。弊社では仕様として出している」とのこと。
ページが厚いとそういう弊害もあるのか~(泣)。でもま、2つの印刷所から「それくらいの穴はどうしてもできちゃうんです」と言われ、あきらめもつきました。読む分には何の支障もないですしね。
あと、カバーの折り込み幅が65mmだったんですが、本音を言えば、もそっとほしかったです。
折り込み幅については、下の(カバーを折らずに広げた)図をご参照ください。

2冊目の本は80mmにして、それがわたしにとってはちょうどよかったんですが、おたクラブは背幅によって折り込み幅が決まっちゃうんで、こちらの希望で変えられないんですよね。
反省点
印刷してから気づいたんですが、フッター位置の指定を間違いました(泣)。
前回と同じ「下から7mm」に設定したつもりだったんですが、ぬりたし分を加えるのをすっかり忘れてました。ぬりたしは3mmだったので、実際は「下から4mm」になってしまったという……(泣)。
さいわい、だいぶ下に寄ったとはいえ、フッターに記したタイトルとページ数はきちんと紙の中に収まっています。あー、よかった。
次回からはそういうことがないよう、くれぐれも気をつけなければ。
さて、わたしの作った小説同人誌の仕様とレイアウト、いかがだったでしょうか。何かの参考になればさいわいです。