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2022年の年間ベストと雑感

まずは個人的な2022年の年間ベストを。今回は合間に雑感を挟みつつ、25作品をさらっと。

25. Daphni『Cherry』
24. Sexy Zone『ザ・ハイライト』
23. Black Country, New Road『Ants From Up There』
22. Wet Leg『Wet Leg』
21. Bibio『BIB10』

ベテランからニューカマーまでが並び、形態もジャンルも異なる5作品。Sexy Zoneだけ浮いている印象もあるが、ジャニーズのアルバム単位での完成度には主にシングル曲の”タイアップ”が影響がしてくるように思う。『ザ・ハイライト』はそうした不確定要素をうまくパッケージ化し、シティポップや80'sディスコといった時代のトレンドも反映。個人的に嵐『LOVE』(2013年)以来にアルバムとして質が高いと感じた。フジロックで観たBlack Country, New Roadは音源とライブで姿形が全く違い、良い意味で裏切られた。大躍進のWet Legは2023年2月の来日公演が楽しみだ。

20. Ethel Cain『Preacher's Daughter』
19. MIKE『Beware of the Monkey』
18. Sabrina Claudio『Better Version』
17. The 1975『Being Funny In A Foreign Language』
16. Earl Sweatshirt『SICK!』

NYのラッパー・MIKEのセルフプロデュースによる新作は、アンダーグラウンドのヒップホップシーンにおいて独自の匂いを纏っている。カニエには到底及ばないにしても、未開なサウンドやビートに対する探究心は強い。その点Earl Sweatshirtにも共通していると思うが、より洗練されたライミングと強烈な個性、そして伝統も理解した上で変貌するEarlは『SICK!』以降のどこでキャリアハイを迎えるか気になる。世界の耳と目がサマソニのステージに注目したThe 1975は、祝祭に満ちたライブへのカムバックとは違い、クラシックな装いでひたすらバンド本来の強みを特化させたのは流石。アリーナ規模で開催される来年4月のジャパンツアーをぜひ成功させて、音楽ファン以外にもよりリーチできるようなポピュラリティを獲得してもらいたい。

15. Yaya Bey『Remember Your North Star』
14. Pusha T『It’s Almost Dry』
13. Drake『Honestly, Nevermind』
12. Little Simz『NO THANK YOU』
11. Big Thief『Dragon New Warm Mountain I Believe In You』

Kanye West、Pharrell Williamsが楽曲ごとにプロデュースを務め、さらにJay-Z、Kid Cudi、Don Toliverらが参加したPusha Tの新作は上半期だけで言えば一番聴いたヒップホップアルバムだった。Donny Hathawayをサンプリングした「Dreamin Of The Past」ではビートにおけるカニエの手腕が眩しいほど光っている。片や続く「Neck & Wrist」でファレルも自らのカラーを全面に出していて、そんな両翼を背に見事なフライングを見せるPusha Tの才にも脱帽だった。Drake、Little Simzは今後”ハズレ”だと思わせるような作品を世に出すとことないのではないか、と思うほど濃密なアルバムだったし、初の来日公演が各所で好評だったBig Thiefも文句なしのクオリティ。

10. Joji『SMITHEREENS』
9. Beyoncé『Renaissance』
8. Yeule『Glitch Princess』
7. Empath『Visitor』
6. Kendrick Lamar『Mr. Morale & The Big Steppers』

TikTokなどあらゆるSNSでバズを巻き起こしたJoijは、R&Bシーンでいよいよ確固たるポジションを築いたのではないか。来年8月には英ガナーズベリー・パークで大規模な野外公演も決まっていて今後の動向にも注目だ。様々なコミュニティに向けたメッセージをハウスミュージックに乗せて届けたBeyoncé、世に放たれたかと思えばテーマや自らの立ち位置において様々な意見を生んだKendrick Lamarの2人は、作品を1つ発表するごとに100にも200にもその作品にまつわるリファレンスが生まれるところが凄まじい。そんな話題性もありながら、しっかりと問題提起にもなっているアルバムが2022年にリリースされた意味もこの先どこかで語られていくはず。

5. NewJeans『NewJeans 1st EP 'New Jeans'』
4. Harry Styles『Harry’s House』
3. 宇多田ヒカル『BADモード』
2. SZA『SOS』
1. Rosalía『MOTOMAMI』

年末リリースのSZAは若干印象が薄いかもしれないが、5作とも「2022年を象徴する作品」であることは間違いない。現在進行形で新曲「Ditto」もヒット中のNewJeansは欧米人ではなく日本人だからこそ理解できるノリが盛り沢山。2023年中頃〜後半にはアルバムも期待したい。山下達郎やJoni Mitchellらも注目したHarry Stylesは、今作で真のポップスターに覚醒。2021年から2022年へと続くモヤモヤとした空気感、さらに先進性や普遍性も同居させた作品に『BADモード』と掲げる宇多田ヒカルはなかなかに尖っていた。

SZAとRosalíaはほぼ大差なく、単純に聴いた回数での順位付け。レーベルとの問題など制作過程で不安材料もあったSZAも蓋を開ければ見事にキャリアハイを更新する傑作を届けてくれた。全てがネットやテクノロジーを介してボーダーレスになっていく世界で、ネガティブな反応が目立つようになった2022年にRosalía『MOTOMAMI』は色々と希望を与えてくれたように思う。非英語圏の音楽/アーティストが大成していく昨今、Rosalíaがスペイン語も英語も日本語もシームレスに歌う姿は、どこか誇らしさすら感じた。激しい性描写も、出自でもあるフラメンコの香りを残したままでレゲェからR&Bまでを脱ぎ着する自由さも素晴らしい。この年末にプライベートで日本を満喫してるみたいなので、次はぜひステージ上にいる姿をここ日本でも見せて欲しい。

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