ポケモンSVを自分が楽しめなかった理由の考察

誰に向けた話でもなく自分の脳内を整理するためのテキストですよという前置きをしつつ、ポケモンSVがあまり楽しめなかった理由を整理してみます。

筆者は第1世代民です。第2世代と第5世代もやってて、第8世代(剣盾)で久々に帰ってきたらバチくそ面白かったのでアルセウスと第9世代(SV)も買ったという流れ。剣盾は3図鑑全制覇した。
ゲーム作りは単なる趣味だけど、システム構築が生業なのでその延長で色々考えちゃう系。

剣盾がなぜ面白かったか

ライバルはもちろん、ジムリーダーやチャンピオンに個性があって感情移入しファンになれた。1度戦って終わりではなく、2度3度とシナリオに絡んできてくれたのも大きい。同じキャラを何度も登場させる余地を作るという点で、四天王を無くして正解だったと思った。ネズについては特に有志による解説も充実していて楽しめた↓

戦闘がわりと楽しかった。チャンピオン戦はフルメンバーで挑んで普通に負けたし、その後もバトルタワーやしばり組み手は何度も楽しめた。バドレックスにアストラルビット打たせときゃトーナメントも楽々、みたいなのは気になったが、あれは難しすぎると感じる人向けの救済策と考えればアリかなと。

もちろん中途半端なシンボルエンカウントがわかりにくかったり(シンボルエンカウントでは出会えないが草むらを探すと出会えるポケモンがいた)、やりたくもない金策に時間をかけないといけないみたいな気になるところもなかったでは無いが、やり込み要素だしということで気にはならなかった。

キャラクターの魅力をもっと押し出してほしい

SVで気になるのはキャラとの絡みが薄くなってしまったことで、ライバルや校長がギリギリ及第点かなという感じでもっとジムリーダーや四天王との会話を魅せてほしかったのが本音。

先生がたくさんいるんだから、剣盾みたいに四天王は削ってよかったんじゃないかと。少なくともトップチャンピオンは魅力的に描いてほしかった、ダンデとの魅力の落差が激しすぎるうえに弱いので、存在意義がまるでわからないキャラクターになってしまった。そりゃリップさんも怒りますわ。

足りない分の絡みはポケマスで描かれるのかなぁという気はしないでもないが、ポケマスやらない民なのできちんと原作で描ききってほしい。

オープンワールドを親切にやり切るべきだった

オープンワールドなのに店の中は描写してくれなかったり、レールから外れて旅をしたときのご褒美がほぼ無かったり、システム的に都合の悪いところまで登るとすぐロード&ワープ処理が入ってしまったり、体験はとても中途半端だった。オープンワールドは形だけで、ほぼ一本道でしたよね。
メインシナリオを進めないと移動手段も増えないし高いレベルのポケモンも捕まえられないという縛りも、果たして必要なんでしょうか。ジムリーダーのレベルが挑戦順関係なく固定というのはまだ理解できたんですが。。。

自由といえば、服装縛りも残念ですね。学生だから制服、というのは「年齢関係なくいつでも学生になれる」というメッセージとしてはとても有効に作用したと思いますが。一人一人自由行動の課外学習でも全日制服の必要あるか?単に機能を削りたかっただけでは?とか思いました。ただこれは自分の制服に対する理解が乏しいだけかも。

プレイヤー体験という点ではマップの機能説明も基礎的な移動手段も揃わない開幕早々に迷路を持ってきたのは不親切極まりないと思った。
往年のいあいぎりや近年のなみのりみたいに「ここ、あとで来たらなんかあるのかも!」みたいな思わせ要素があるだけならまだいいんですよ。落ちた時のやり直しが面倒だったり(ロトムスマホのお助け機能が動作しないことがあった)、マップ見ながら着実に進もうにも操作がよく分からなかったりして、ガケガニのところまで到達するのに1時間弱かかってしまった。アクション揃った中盤以降にアスレチックステージ的に持ってきた方が楽しめた気がします。

そもそも宝探し開始までもかなり長いので、チュートリアルが不要に長い印象というか、やれる事がやれるようになるまでクソ待たされたなという所感があります。人に勧めにくいし、周回する気も削がれる。

レイドもそうですけど、なんか全体的にテンポ悪いんですよね。アニメなんかさっさと飛ばして戦闘に入ってほしいし、戦闘中も変にひっかからないでほしいし、ボール投げるアニメもスキップさせてほしい。その点レッツゴーは良いと思いましたが、経験値ペナルティ重くてなんか損した気分ではありました。

戦闘が単調過ぎる

たぶん自分がニャオハを選んだのが良くなかったんですが、メインシナリオの最後まで歯ごたえを感じることなく終わってしまいました。ネモもトップチャンピオンもマジボスも弱すぎて「は?今のがほんとに最後?」と思ってしまいました。道具も持たせないポケモンの順番にも工夫がないで何がチャンピオンか。唯一ペパーには1敗を喫しましたが、あれはあれで最後のヌシとの落差が激しいような気がします。

高速アタッカーが急所必中くさ技に加えてフェアリー・あく・むしという技範囲を誇っていたので、ほとんど工夫なくゴリ押しで勝てたんですよね。終わってから調べたら弱点のないナンジャモのムウマージであるとか、初手びんじょう持ちを繰り出して長期戦セオリーの裏をかいてくるリップであるとか、落とし穴は結構あったようなんですが。でもクリア後に某先生のイリュージョンにはきれいに騙されまして、これだよこれ!となりました。ああいう驚きがメインシナリオでほしかった。たすきカウンターとか。

自分の旅パは弱点の多いくさ統一だったこともあって、もうちょい苦戦しても良かったんじゃないかな。。。というのが通しての感想です。レベルの低いほのおやむしはまだしも、どくアジトもこおりジムもひこう四天王も一発合格だったんで。

単にレベルを上げすぎた疑惑があるので、バトルタワーみたいにレベル固定バトルがあれば体験も違ってきたのかなとは思います。が、DLCは知りませんが無印にはそんなもの無かったですね。
剣盾にはあったのにSVには無い要素が結構多いし、それが不満の元になってることが多いんですよね。ポケセンがボックスのポケモンを回復しなくなったのはマジで意味がわかりませんでした。

とにかく品質が悪い

キャラクタの表示が壊れるタイプのバグは幸いにして経験しませんでしたが、四天王のBGMバグはしっかり踏みました。歩行者がカクカクしている問題も学園ひとつ前の街から経験しています。通してプレイしてたら当然気づくだろうと思えるレベルの問題が初期リリースに含まれているのはとても残念です。

そりゃあね、第1世代民なのでセレクトバグは大いに楽しみましたし、だからこそいないはずの欠番ポケモンが捕まえられる噂とかは楽しんでましたよ。でももう時代もゲームフリークの企業体力も全然違うんでね。。。自分の期待値も違うんですよ。「あ、バグだ」って思ったその瞬間に感情移入がぷちっと切れて「ポケモン世界にダイブしてる」のが終わってしまい、「ゲーム機を手にニヤニヤしているおっさん」に向き合っちゃうんですよ。システムとしての都合とか作り手としての限界とか、あるのはわかるんでうまく隠してほしいっす。

自分が1番気になってるのは、スタッフロールに知ってるQA会社が載ってることなんですよね。彼らがこれらの不具合、特に純粋にシステムの作り方に起因する「ウネルミナモやテツノイサハがたまごとして捕獲できる」不具合を事前に見つけられなかったはずは無いと思ってます。

リメイクの品質が悪いと聞いた(ので買わなかった)ときは外注先の問題かなと思いましたし、アルセウスの体験がとっちらかっていたり暗闇でのポケモンの描画がちらついたりしたときはまぁ実験作だしと割り切りましたが。これ単にゲームフリークの旗の振り方、プロジェクトマネジメントに問題があるのでは?少なくともQAのエキスパートを単にテスト実行部隊として使ってしまっているのでは?という気がしてしまったナンバリングタイトルでした。
ポケモンの品質問題は気になってる人多いと思うので、そのうちCEDECみたいなイベントで「ポケモン品質保障の変遷」とか話してもらえるといいなと思っています。

スター団BGMが神です

もちろん良いところもあります。スター団BGMはめちゃくちゃ好みでした。サントラ、やっぱり出ないんですかねぇ。。。そこは残念です。

色々あってヴィランを描きにくい情勢なのかなとは想像するところで、前作エール団に続いて純粋悪ではない団が描かれたわけですが、そのシナリオは非常に良いものでした。技術力も行動力も責任感も人望もある自分の弱みと向き合えるマジボス、めちゃくちゃカッコいいですね。余計にトップチャンピオンが色褪せるわけですが。

自動回復も良かったと思います。レッツゴーとあわせて、可処分時間の少ないプレイヤーという時代の要請にきちんと向き合う姿勢を感じます。ボールはともかく、回復は店で買うことなく拾い物でなんとかできましたし。慎重に計画的に行かなくてもとりあえず進めるくらいの難度に抑えられてたこと自体は悪くないと思いました。

あとマップの画質にケチをつける意見があるのは知ってるんですが、これはご批判にはあたらないというやつだと思ってます。我々はポケGoや名探偵ピカチュウで、ポケモンにリアル背景が合わないことを学んだので。いや名探偵ピカチュウは悪くはなかったんですが、ゲンガーやベロリンガやフシギダネなんかをあの質感で描く能力は今のSwitchには無いんじゃないですかね。本気出せば行けるんだろうか。

まとめると、ゲームの品質に向き合ってほしい

自分がポケモンというゲームに求めているのは、やっぱトレーナー個人の魅力であるとか、トレーナーとポケモンの協力関係の描写であるとか、ポケモンの生態系の描写であるとか、バトルの戦略性とか、そういう総合的な体験が生み出す「これこれ、これがポケモンだよね」というプレイ体験なんだと思います。そしてそれはやはりグリーンの成長やロケット団の動きをレッドとして見つめてきた体験や、ゴールドとしてグリーンバッジをもらったりシロガネ山の最奥に足を踏み入れた記憶と無縁ではないと思うんですよね。

剣盾のマサルとしての旅路はこうした体験に加えてキャラクタの魅力を十二分に感じるシナリオがあったので、細かいところが気になりつつも昔のポケモンを遥かに上回るプレイ感があったのだと思います(第1〜2世代にはシナリオなんてろくになかった)。ところがSVではこのゲタ部分がなくなっただけではなく、ゲームとしての完成度が各所で低かった結果としてポケモンの捕獲や育成,バトルという基本的な要素すら壊れてしまった。オープンワールドなんて無理にやらんくてよかったのでは?新ポケモンの描写やシナリオにコストを掛けて、システム自体は正統進化で充分だったのでは?とか思ってしまった。イベントレイドやDLCに追加で時間を掛ける努力が惜しいと感じてしまった。

もちろん挑戦のないナンバリングシステムがやがて死に至ることは色々見てきて知っているつもりではあるので、ゲームフリークが今回も挑戦してくれたことはとても良いと思います。できれば次回作はそうした都合や限界はちゃんと隠して、最高のゲーム体験をプレイヤーに届けてほしいです。で、その第一歩はゲームとしての品質を高めるための体制づくりにあるんじゃないかなとか勝手に思ってます。


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