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【新譜解説】Ginger Root - Shinbangumi

こんにちは、Kazuです。本ブログの「新譜解説」第二弾はGinger RootのShinbanhumiです。少し文章に自信がないのですが、、どうかお手柔らかに、、

前回はOasisのDefinitely Maybe 30thについて書いてます。興味がある方はこちらも!

https://note.com/mjkazumusic/n/n656657b1fd65

新譜発表に至るまで

Ginger Rootはカリフォルニアに拠点を置く、キャメロン・ルーによる音楽プロジェクトです。作詞作曲、全ての演奏に加え、ミキシングマスタリング、全部自分で行うこだわりは、まるでかつてのプリンスの音楽制作のようですよね。加えて彼はミュージックビデオなども自らが主導となって、仲間と共に制作しており、日本文化への解像度の高すぎるミュージックビデオが彼の人気をさらに高めています。

そんなジンジャールート、フルアルバムとしては4年ぶりとなるアルバムをついにリリースしました!本編の紹介をする前に、これまでの道のりをおさらいましょう!

これまでオリジナルアルバムを3枚制作し、徐々に人気を獲得してきたジンジャールートですが、初期3枚と今回のニューアルバムを繋ぐ2枚のEPがあります。この2枚では初期の3枚に比べ、より彼の日本文化趣味を全面に押し出したものとなっており、今回の新譜の方向性を示してきた作品といえます。

1枚目は2021年のCity Slicker。

サウンドはこれまでキャメロンが推し進めてきたシグニチャー的なLo-Fiでシンセサウンドはそのままに、日本のシティポップの影響を導入。EPならではもコンパクトさを活かした作風。ここで彼は初めて1枚の作品を通してコンセプトを設け、全ての楽曲のビデオがそのテーマに関連したものになるようにビデオを制作しています。今回彼は架空の日本のドラマ「街のヤツ」のサウンドトラックとしての想定。”Fly Too”はオープニング、”City Slicker”は本編、そしてGinger Rootの名を世界にさらに知らしめた転機の一曲 “Loretta”は主題歌で、その曲を披露した日本の音楽番組(昭和時代)の再現、と言った具合に、制作したビデオすべてに関連性を持たせました。また特に “Loretta”のあまりにも解像度の高い日本の昭和文化への再現と愛に溢れたビデオとのちに制作された日本語Verは日本でも大いに話題に。

そして2作目のNisemono

ここでキャメロンが行ったものは、音楽面でもビジュアル面でも今後の活動を決定づけるものでした。まず本作でさらにキャッチーな音楽制作に尽力。個人的にこれまでの音楽ももちろん最高ですが、本作は全ての楽曲がパワーを持ってシングルとして振る舞えるクオリティを備えている、と感じました。また2曲目のLonlinessのメロディがサブミナル的にEP収録曲の数曲に忍ばされており、全体が一つのストーリーのような統一感をもたらしています。前作の成功を持ってさらにクオリティの高いビデオ制作も行いました。日本の歌手でもあるアマイワナが架空のアイドルタケグチ・キミコに扮し、そのアイドルにジンジャールートが曲を提供、だけどキミコちゃんが逃げ出しちゃって、、どうする???と言ったストーリー展開を本作の全楽曲のビデオで展開。まるで一つのドラマを見ているかのようなエンターテイメント性をここで確立しました。ビデオのストーリー性は “Loretta”での成功によって、様々なことが一変しインポスター症候群のような気持ちに陥ったキャメロンの経験も影響しているそう。同時期には念願の初来日を果たし、東京公演は即完&追加公演。またビデオの後半は日本で撮影されて、より解像度の高い昭和レトロな世界を再現しました。そして重要なのが、今回のニューアルバムのビデオ群が、このNisemonoのEPの一連のビデオの続編になっているのもポイント。

実際、僕もこれまで映画や音楽で日本の文化を取り入れた作品を見ましたが、どれもステレオタイプな解釈だったり、中国とごちゃ混ぜだったり、少し現実と違うな、と思うことが多かったのですが、Ginger Rootの作り出す日本の世界は、まんま日本なんですよ。本人もインタビューの中でこう語っています。

いつも自分は日本の文化から影響を受けているだけで、その文化の代表者ではないという地点に立って、日本のイメージを捻じ曲げたり、雑に扱ったり、損ねたりすることのないように細心の注意を払って、正確にオマージュを捧げようと努力しています。

特にアメリカという国は日本だけじゃなく、アジア圏の文化を表象として扱う時に非常に不誠実なところがあります。表面的な部分だけだったり、ステレオタイプなイメージだけを、いつまでも利用し続けている。「新幹線」や「芸者」や「お箸」や「忍者」のような日本文化の奥深さを表すには不十分なアイコンをビッグ・アーティストたちが何のリスペクトもなく軽率に使用しているケースは多いです。ーキャメロン・ルー

https://rollingstonejapan.com/articles/detail/41564/2/1/1

(このインタビュー、日本への愛が溢れまくりでかなり良かったのでぜひ合わせてご一読ください。)


そんな絶好調なジンジャールートはNisemonoからの最後のビデオ発表後本格的に新作の制作に乗り出します。

2024年の6月には新譜のアナウンスに加え、ニューシングル “No Problems”発表。来年の1月に日本の5都市を回るツアーも発表(東京の追加公演もすでに決定!)。直後日本では東京の居酒屋でゲリラライブを敢行し、店の外まで人がびっしり。さらにはアナウンスから1週間後にツアー予定地のタワーレコードでサイン会を行うことがいきなり発表され、筆者も福岡のサイン会に伺いました。

筆者撮影、限定のトートバッグとシャツ。福岡のタワレコにて。

新譜解説

1.Welcome
2.No Problems
3.Better Than Monday
4.There Was A Time
5.All Night
6.CM
7.Only You
8.Kaze
9.Giddy Up
10.Think Cool
11.Show 10
12.Take Me Back (Owakare No Jikan)
13. Pre-Giddy Up (Demo) *日本盤CDボーナス

フィジカルはCD、カセット、レコード2種の4種展開。日本盤はボーナストラック一曲のありがたいおまけ付き。

前述の通り2作のEPを通して日本への愛をさらに全面に出してきたキャメロン。このアルバム制作中にも、日本には頻繁に訪れ、憧れの細野晴臣、大貫妙子らの日本のレジェンドミュージシャンと、流暢な日本語で対談。ハマ・オカモトをはじめとする日本のアーティストともより親交を深めた。その日本通いもあってか、本アルバムは地元のカリフォルニアと日本のスタジオで録音が行われたそう。 “Show 10”や “Kaze”はそのうちの2曲だそう。(Kazeのドラムは歌詞にも出てくる浅草のバーで実際音を録ったらしい)

“No Problem”〜 “Only You”まで、インタールートを除いてビデオが公開済みで、今後もインタールード以外の全曲のビデオが公開される予定。解像度の高い日本文化への解釈に、クスッとさせるユーモアを混ぜ込んだお馴染みのワールドが展開。またビデオのストーリーが前作EP“Nisemono”からの続編として進んでいくのも楽しいですし、今回新たなレーベルとの契約や前作の更なる成功もあってか、ビデオのクオリティや豪華の向上、そしてチャーミングな新キャラたちもたくさん登場。特に “There Was A Time”のスケバンオマージュな内容で中でも人気が高く、ニューヨークのタイムズ・スクウェアのYoutubeの広告に登場するまでに。

本アルバムでキャメロンは「改めてこれがジンジャー・ルートなんだと堂々と自信を持って宣言するアルバム」というような表現を各所でしていましたが、その通りで、キャメロン・ルーの脳内の音楽見本市!な一枚に。2枚のEPでの成功と葛藤を通して、今、自信をもって自分を表現し、これが自分の音楽なんだと、そういう意志を持って制作された決定版とも言える本作。

前回のEP2作からの路線を引き継ぎながらも、新たな幕開けにふさわしいポップな “No Problems” 、Ginger Root史上最も露骨(大褒め)なシティーポップチューン “Only You”、タイトなグルーヴがたまらない “Giddy Up”や “Show 10”(商店とのダブルミーニングにもなってるそう)などのシンセポップ/ファンクが並ぶ中、インディーでガレージの匂いがする “Better Than Monday”、影響元に素直にアプローチしたポールマッカートニーの“Ram”からの濃い影響を感じる “There Was A Time”とティンパンアレー/細野晴臣への愛が溢れまくる “Kaze”の2曲、ベースをいくつも重ねたと言うグルーヴで彩った “All Night”といった様々な更なるアプローチが登場するのも新しい。

また “CM”はまるで日本のラジオの古いコマーシャルを意識したインタールードで、最初あまりのリアルさ、ツボの押さえ方に、思わず吹き出してしまいました。車で聞いていると、絶妙な音質で本当にラジオから聴いているのかと錯覚。またジンジャールートらしいユーモアもあって、ショウガねぇな。笑 こういうの今後も色々やって欲しいっす😂

ラストの“Take Me Back”の美メロにうっとりしていると、コラージュのように収録曲のフレーズが音色そのままに登場する演出も憎い。。最後の「終わりの時間」を知らせる鐘に、もう終わってしまうのかと、しんみりしちゃいます。

日本盤ボーナストラックはGiddy Upのデモ版でメロディが違う!これは嬉しいですね。もっとこういうのも聞いてみたいですねぇ、デモ集出してもいいんやで⇦

最後にNisemono以降のビデオを一通りまとめたプレイリストを作成してますので、ぜひこの機会にジンジャールートの世界を体験してみてください🙂


最高のアルバムごちそうさまでした!

試聴環境
日本盤CDをリッピングしたAIFFをHiby R6 Pro IIとFinal B3で。

購入/ストリーミング先リンク

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