【新譜解説】Oasis - Definitely Maybe 30th Anniversary Edition
こんにちは、Kazuです。今回から好きなアーティストの新譜や記念盤などをレビューを兼ねて発売時の背景などをまとめた解説記事を書いてみようと思います。めんどくさがりなのでやめちゃうかもですが。。
今回は再結成というとんでもない激アツニュースの中発売されたOasisのDefinetly Maybeの30周年記念盤のご紹介。
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本記念盤発売の背景
Definitely Maybeはオアシスの記念すべきファーストアルバム。30年前の1994年に発表され、兄ノエルギャラガーが紡ぐ最強のメロディを弟リアムギャラガーという最強のボーカリストが歌う形で一世を風靡。今回はその30周年記念盤の登場です。
もともと2014年に一度リマスターされ、本編に加えて彼らの特徴でもある質の高いアルバム未収録曲(B面曲)を網羅し、未発表音源も併せて収録した、決定的とも言える20th記念盤も発売されましたが、10年を経て更にリリースを重ねることとなりました。なぜもう一度再リリースされるのか。どこが違うのか。発売までの背景を確認してみましょう。
まず発売から一年前の2023年4月、バンドの音楽的リーダーでもある兄ノエルがインタビューにて、このアルバムを作る過程で使わなかった初期バージョンやアウトテイクがソニーのアーカイブ室から見つかり、それらをリリースする予定が語られました。
また同時期、リアムギャラガーはソロで本アルバムの全ての曲を演奏するツアーを行うことを発表。ノエルはこの誘いを断りました。ライブでは過去を振り返りすぎずに前に進みたいノエル。時に過去を振り返りながら前に進んでいくリアムの意思の違いは再結成をまたもや不可能なものにしました。。。この時点では。
リアムのツアーはイギリス国内にとどまりましたが、当アルバム発表時在籍したメンバーPaul “Bonehead” も参加し、大きな成功を収めます。ここではノエルのボーカル曲 “Half The World Away”をリアムが初披露。さらに後にノエルがソロで仕立て直す “Lock All The Door”の初期バージョンなどのDefinitley Maybe期のレア曲も披露されました。
ノエルとリアム、それぞれのアプローチでこのアルバムの30th祝う中、本記念盤の発売日を4日前に控えました。そこで突如オアシス、ノエル、リアムのSNSで同時に翌8月27日に重大発表がある旨が伝えられました。そして一夜明け。。
2024年8月27日。オアシス再結成。
2025年の7月と8月に二人揃ってイギリスでツアーを行うことを発表。また世界ツアーの計画も進んでいると、、、僕はてっきり30年前のライブ映画やドキュメンタリーだと。また騙される気満々だったんですけども。加工に見えるツーショットも実際に2人で撮られたものでした。そんな最高の状況の中、Definitley Maybe 30th Anniversary Editonの発売を迎えたのです。
解説&レビュー
展開、デザインなど
フィジカルの展開は2枚組のCD、本編のみの2枚組LP(ピンクとホワイトのカラーLP)、ボーナスディスクもLPにした4枚組LPの基本三形態でのリリース。日本盤のリリースもありますが、今回は日本盤オンリーのボートラはなし。新たなジャケットデザインを採用し、インナージャケットにはBrian Cannonが新たに撮影したSawmills Studioの写真を採用。これらのディレクションはノエルも参加。
また限定盤としてBlood Records限定で角度によってメンバーありのオリジナル盤アートワークが出現する限定LPもあり。俺はカッコ良すぎて買いました、、購入はこちら(https://blood-records.co.uk/products/dm)
収録曲
CD1
1. Rock ‘n’ Roll Star (Remastered)
2. Shakermaker (Remastered)
3. Live Forever (Remastered)
4.Up In The Sky (Remastered)
5.Columbia (Remastered)
6.Supersonic (Remastered)
7.Bring It On Down (Remastered)
8.Cigarettes & Alcohol (Remastered)
9.Digsy’s Dinner (Remastered)
10.Slide Away (Remastered)
11.Married With Children (Remastered)
CD2
1.Rock 'n' Roll Star (Monnow Valley Version)
2.Shakermaker (Monnow Valley Version)
3. Live Forever (Monnow Valley Version)
4.Up In The Sky (Monnow Valley Version)
5. Columbia (Monnow Valley Version)
6. Bring It On Down (Monnow Valley Version)
7. Cigarettes & Alcohol (Monnow Valley Version)
8. Digsy's Dinner (Monnow Valley Version)
9. Rock 'n' Roll Star (Sawmills Outtakes)
10. Up In The Sky (Sawmills Outtakes)
11. Columbia (Sawmills Outtakes)
12. Bring It On Down (Sawmills Outtakes)
13. Cigarettes & Alcohol (Sawmills Outtakes)
14. Digsy's Dinner (Sawmills Outtakes)
15. Slide Away (Sawmills Outtakes)
16. Sad Song (388 Mauldeth Road West Demo, Nov’ 92)
CDを頼む前に先にサブスクで音源確認しました苦笑
ディスク1
まずディスク1はDefinitelyMaybeの本編のリマスターです。デビュー一曲目にして「俺はロックンロールスターだ」と傲慢(褒め)に歌い上げるRock ‘n’ Roll Star、永遠を歌うグランジへのアンチテーゼ”Live Forever”や”Supersonic”を始めとする有名曲に加え、ライブでは欠かせない”Columbia”など全曲捨て曲なし。元のソングライティングの良さはもちろん、初々しいながらもすでに完成されているリアムの歌声、若さならではの勢いも相まった名盤。
今回は新たにリマスター製作せずに、10年前の20周年盤のIan Cooperによる2014年のリマスターデータが流用されています。
ちなみにIan CooperはDon’t Believe The Truth以降のオアシス作品のマスタリングに加え、ノエルのソロ一作目 “Noel Gallagher’s High Flying Birds”のマスタリングとバンドからの信頼厚い人選です。(2017年あたりにに引退された模様)
なんで同じリマスターなんだ!手抜きなのか!そう思われる方もいるかも知れませんが、実はこれは音質面では英断です。本アルバムはアナログのマスターテープにレコーディングされています。アナログのマスターテープを再び起こして、それをデジタルで音質や音量を調整して、今の時代に合う形に、もしくは音質の向上を目的にアップデートする作業がリマスターなんですが、アナログのテープは徐々に劣化していき、リマスターの度にその音質の劣化をデジタルで修復していく必要が出てきてしまいます。つまり、オリジナルの自然な音は失われ、どんどんデジタル修復に取って代わられてしまうんですね。今回仮に再びオリジナルマスターから起こすとするとしたら30年分の劣化を抱えることとなります。
また20周年時はまだCDが発展途上だった94年のマスターから2014年の音にアップデートする意義がありました。加えて94年盤は発売国によってマスタリングが異なっていたようで、監修のノエルにとっても自分の意図する音質で届けたい思いもあったかもしれません。今回は前回のリマスターから10年しか変わりありません。音質にこだわりのある山下達郎御大曰く、ここ10年程度で再びリマスターしても、音質面の成果はあんま変わらないっぽいんですよね。(山下達郎のSunday Song BookのBIG WAVE特集より)。つまり今の確立した技術では10年程度でリマスターしてもそう変わらない。
少し脱線気味ですが今回20thのリマスターを使い回したのはもちろん、コストの削減という面もあるとは思いますが、音質面でも優位であると考えでもいいでしょう。監修したノエルの思い描く音像であることには間違いありません。
ディスク2
そして目玉のディスク2
マスタリングは同じくノエルのCouncil Skiesから引き続きMatt Coltonが担当。
ここでは前述のノエルのインタビュー通り、本アルバムで採用されなかったセッション音源が初公開。
すでに10年前の20周年記念盤の日本盤ボーナストラックには “Bring It On Down”のMonnow Valley版が公開されていましたが、それはラフミックスと思われるやや質の悪いものでした。しかし、今回マスターテープが発見されたことによりディスク2全て、ノエルギャラガーとカラム・マリーニョにより、ノエルの新しいスタジオ “Lone Star Studio”にて新たにミックスを行い、それがこれらの初期バージョンを高いクオリティで楽しむことを可能にしています。カラム・マリーニョはノエルの現時点の最新ソロアルバム “Council Skies”(超傑作)のミキシングやエンジニアも担当したノエルお抱えの新人材でもあります。
まず最初にMonnow Valley Studioでのセッション音源の登場です。
Dave Batchelorをプロデュースに迎え行ったこのセッションでの結果を彼らの理想の音像にするのはなかなか難しいものだったようで、Monnow Valley Studioで行われた初期のセッションの音源は、アルバムに収録された “Slide Away”を除いて、全て没。
今回、このセッションで没になった全ての初期バージョン8曲が含まれます。彼らはこれをリリースする想定で作業を進めていたため、ギターソロなどのあらかたのオーバーダヴ(追加録音)を済ませて、いったんの完成品として仕上げていたようですね。
聞いてみるとRock ‘n’ Roll Starのサイケなエンディングやもう完成品と言っても過言ではないBring It On Downのテイク、ハモリが入るCigarettes and Alcoholなど聞きどころも満載ながら、多少アレンジがまだ練られてない部分、音が薄い/軽い印象を持つものも一部あります。Digsy’s Dinnerは少しJellyfishのようなパワーポップ感があって個人的に興味深い。ノエルによるとこの時は個別のブースで別々に録音したことや、機材が古かったことなど、さまざまな要因で音がロックし切れてないと考えられたようですね。そこらへんはリミックスによってより聞きやすくなってるのではと思います。
ちなみ公開されたノエルのインタビューではMonnow Valley Studioをなんのインスピレーションもわかない場所、みたいなこと言ってましたね笑
Monnow Valley Studioでの不出来な結果を払拭するために、Mark Coyleをプロデューサーに変更。次のスタジオに彼らは移ります。それがSawmills Studioで、アルバム採用された多くの音源がこのスタジオで再録音されたもの、になるわけです。そこでのアウトテイク/別テイクも7曲収録。ノエルによると、ここでのスタジオの作業では、まずバンドメンバーで同時にベーシック録音を行い、3テイクほど録音。その中から1つを選んで、リフやソロなどのオーバーダヴ(追加録音)をしていく形をとったそうで、ここではその時の採用されなかったテイクの数々が収録されています。(もちろん採用されたものは皆さんが聞き親しんだオリジナルバージョンであるわけです。)そう言った性格上、オーバーダヴのないものとなっており、未完成に感じる部分もある一方、前半のセッションよりは一音一音が厚く、アレンジも練られている印象で、アルバムバージョンとあまり変わりを感じないかも知れませんが、1発録りで録音されたそのものを聴ける生々しさは、当時のスタジオでのセッションを覗いているようです。
特に注目のトラックはアルバムでは前回のMonnow Valley Studio版が採用された “Slide Away”のSawmills版が聴けることです。作曲直後に録音されたMonnow Valley版の即興的なバイブスを越えられない、再録音でしかない、とのノエルの判断で没になったようですが、重厚で慣れた演奏により、ライブVerを想起させるものとなっています。
更に更に、大きな目玉はラストに収録される “Sad Song”でしょう。発表されたバージョンはノエルがボーカルでしたが、ここで発掘されたものはリアムがボーカルを取るものでした。すでに彼らのドキュメンタリー映画 “Supersonic”で一部を聞くことができますが。フル公開は今回が初です。ノエルはこのVerをレコーディングした記憶がないみたいですね。
ノエルがインタビューで語ったアコースティック版は入ってないですよね?もしかして40th記念盤もあり得る、、??
まとめ
今回のボーナスディスクは10年前の20周年記念盤に収録されたB面曲集と比べると、かなりマニアックだと思いますが、このアルバムがどのように作られたか、そのスタジオの魔法の軌跡を体験できるファンにとって最高のプレゼントであることには間違いありません。これからオアシスを聞こうとする方には、本30周年盤より先にまず20周年記念盤の購入やストリーミングをお勧めしますが、そこでハマって彼らを愛するようになれば、30周年記念盤はあなたにとって価値あるものになるでしょう。
さて、Oasisは再結成を持ってさまざまなプロジェクトが発足しそうですよね。個人的にはリマスターしてない2000年代のリマスターやドキュメンタリーなども欲しいですが、何よりニューアルバム。ノエルの当初の計画はまずコロナ禍で書いた3枚分の素材のリリースでした。23年の “Council Skies”リリースはその第一弾。その第二弾のアコースティックのアルバムの制作を開始するも断念し、第三弾の予定だった「スタジアムなロックアルバム」の制作を開始していたはずです。スタジアムなロックアルバムですから、先日のインタビューでノエルが語ったように「リアムの歌声の方がこの曲調には合うな」となってそれがオアシスの新譜になるんじゃないか、というのが今の見立てです。まとめられるといいですねぇ。。あと各々のソロも続けて欲しいというわがままもあります。頑張れギャラガー兄弟。喧嘩しちゃダメですヨ
執筆時の試聴環境
Apple Musicのロスレス 24bit/44.1kHz
プレーヤー Hiby R6 Pro II AB級アンプ
イヤフォン Final B3