転生したら「女神様」のパシりだった件 その十
一万円の「ビジネス・スターター・キット」は、消耗品がほとんどだ。
だが、三十万円で売ろうとしたキットの商品が、かなり混じっていた。簡単に計算して、三千円のハンドクリームが、千円になっている。
これが、ネットで晒された。
どこかの在庫を割安で仕入れていたのでないか、値段の設定が姫草の気分次第できまっているのでは、という疑問から始まって、イベントに行くと強引な勧誘をされると、噂に尾鰭が付いた。
何より困るのが、消耗品などのメーカーや成分、仕入値が知られてしまった事だ。
それほどの高品質でない物を、ボッタクリな値段で売り付けようとしている、と地味に情報が広がった。
だから出来るMLMの社長は、国内でなく、海外に買い付けに行くのだ。
外では蝉が鳴き始めた頃、姫草は「ミニマリスト」や「スローライフ」に、キャラを変えようとしていた。
養蚕をやると言い出した。
ショップ用に改装した、ロココ屋敷の二階が空いているので、そこで蚕を育てるという。
これは佐伯の他、古参の信者も止めた。
養蚕は難易度が高いという訳ではないが、家事の何もかもを信者にタダでやらせている姫草には出来ない。
しかも、椿寺へのおべっかだと、ありありとして見えているからだ。
二階は商品の在庫の山で、その一角にほんの少しスペースを作り、そこで蚕を育てるという事でようやく納得した。
「桑の葉は最高級の物で!愛を注いで育てるのよ!」
とブログにアップしている。
「最高級の桑の葉」って、何なのだ。
金満家のイメージを払拭しようと、必死で足掻いている中、本格的な爆弾が投下された。
地元掲示板、大型掲示板、SNSに、
「姫草の知ってる人は知ってる過去」
と題したファイルや書き込みが、一斉に投げ込まれた。
これが大火事になる。
続く