イノシシを捌いて食べる
皆さんは、猪肉について考えたことがあるだろうか?
そろそろ牛や豚や鶏の肉にも飽きてきたし、猪肉でも食べてみようかな?とか、クレイジージャーニーや野性的な生活というのに憧れて、猪でもハントして食べてみたいなぁとでも考えたことがあるだろうか?
私は島に移住するまで、イノシシについて考えたことも興味も全く無かったが、そんな私が3ヶ月前に、イノシシの解体現場に立ち会わせてもらった心境と猪肉についての個人的な見解をここに書き記そうと思う。
イノシシの解体についての記事を書きたい書きたいと思いながら、上手く言葉にできるタイミングを見計らっていたら、3ヶ月経ってしまったのだが、今なら書けそうな気がしている。
※この先、イノシシの解体写真を掲載しますが、苦手な方もいるかと思われる写真なので、苦手な方はご遠慮願います。
私の移住した瀬戸内の離島では、イノシシがよく捕獲される。海を渡ってやってきたイノシシが繁殖し、畑を荒らす被害も少なくない。
農家の方たちは罠を仕掛けて対策を取っているけれど、繁殖していることを考えると、追いかけっこ状態である。
※罠の仕掛け方を見せてもらったリアルDASH島の写真
罠にかかったり猟銃で撃たれ捕獲されたイノシシは、焼却されるか、有志によって捌かれる(衛生面から、夏よりは冬から春にかけて)。
様々な考え方があるが、島へ移住し自給自足をする人たちにとっては貴重な食糧であるし、現代に問題視されているフードロスや食物連鎖の観点や、こうしてほぼ無償で手に入るのに、お金を払ってスーパーで肉を買い食べることに疑問を持っている人もいる。
私は大それた人間ではないので、「せっかく島に移住したんだから、島らしい経験がしたいな」「タダで肉が手に入るなら欲しいな」という興味本位でやってきた若者の1人といったところであった。
移住してから、イノシシの解体を見てみたいと、移住した際にお世話になったNPOの代表に話していたのだが、これまでなかなか機会がなく、たまたま移住者の先輩が、私がNPOの撮影に協力した後に解体場を覗きに行ったらしく、それで電話がかかってきた。
「今来たら見れるよ!」と。
私はその場所もあやふやだったが、おおまかな場所と黒い車が停まっているからという情報を頼りに車を走らせた。
疑心暗鬼な私が解体場に辿り着いたとき、イノシシの頭は写真のように既になかった。代表と、今年から地域おこし協力隊で来島されていた初対面なお二方が慣れた手つきで手足をばらし、臓器を取り出し、肉の部分をカットしていく。まさにスピード作業といった感じで、目まぐるしくイノシシが猪肉になっていく瞬間を目の当たりにした。
やってみる?と片足とナイフを渡され、手を切りそうになりながらも、合っているのかも分からないまま見様見真似で頑張った。
この話を島っ子Yちゃんにすると、私なら卒倒してる!とのことだが、移住者の先輩方からも、りさちゃんは平然としてそうだと言われていた通り、私は案外平気だった。独特な獣臭さや血の臭いや、解体を目にすることも平然といることができた(好きで今まで何度も見てきたクレイジージャーニーのお陰かもしれない)。
作業が終わると、まだ生温かい猪肉を共に解体した人たちで分ける。
余った肉は外にある冷凍庫に入れて、ご自由にお持ちくださいシステムとなっている。
ここの部位が美味しいとか、ここの部位は固くてあんまりだとかのお三方の会話に、私はへぇーとか、ほうとか相槌を打ちながら1番美味しいという部位と、他にも様々な部位を頂いて帰宅した。
猪肉は臭いと言われるが、新鮮なうちであれば思うほど臭うこともない。
野菜炒めやカレーやシチューなどの煮込み料理、そのままステーキとしても食せて万能である。
食肉を解体する現場(それも自分たちで)なんて、埼玉に住んでいたら、まず経験できない。車で10分足らずで、飛び入り参加的に生と死が間近にある現場に立ち会えるのは島(田舎)ならではかもしれない。
それについて何を思うか、何も思わないかは自由ではあるが、暮らしや食について考えるきっかけとなり、新しい視点を持つきっかけになるのは確かだ。
街に住んでいたらスーパーで買うことが当たり前の肉も、ここでは自分で手に入れることができる。それだけで、暮らしと食がもっと自分の身近なことに感じられる。
今の私にはそれだけでも大きな発見であり、きっかけであり、島暮らしを好きだと思える体験になった。